銀座のクラブ
学生時代に銀座のクラブでバイトしてた
週に3日だけ19時から22時までの3時間
真面目で夜遊びしたことない私にとって
銀座のクラブは初めての夜遊びだった
お給料は一日1万5千円
ただのヘルプ
売り上げもない
勿論アフターなんて行かない
ホステスになる気なんてない
3時間のバイトでじゅうぶん
本職のお姉さん達は多分とても大変
銀座のクラブで生きていける人ならば
何の仕事してもトップになれると思う
ドレスもディオールやラクロワなど
高級ブランドの中から選べて
それを着れるのが
嬉しくてお店に行ってた
銀座のクラブの中も見たかったし
お姉さんとお客の嘘と愛にまみれた
虚構の世界を見たかった
かっこつけて
一番いい男のふりして
お金ばらまいて
夜の社交の世界を楽しむ
社長や会長しかいない
皆紳士で変な客は一人もいない
席に着くとテーブルの下で指を絡められた
お客さんはそしらぬ顔してお姉さん達と
笑って喋っている
夜の世界は官能に満ちている
それはセックスの官能とは全く違う種類
かけひきと探り合いを楽しんでいる
さぁ誰を狙おうか
私はぐるっと店を見渡す
一番の大物がいいよね
やっぱり
せっかく狙うなら
みんな自分の目当のお姉さんに
指名で来るのに
1人だけ違う人がいた
「一番売れん奴連れてこい」
ニコニコしてる
一番売り上げが少ないお姉さんが席に着くと
「お前一番売れん奴か どうしたら一番売れん奴になれるん?」と言って笑った
「今日はオレが一番にしてやるけん」
店の女の子が12人くらいその席について
高いシャンパンやらフルーツや次から次へと頼んで お会計は800万
その日のトップになった
彼はニコニコ笑っているだけだった
お姉さん達は全員彼を狙っていた
太い客だから
遊び尽くしてる人は
普通の男がすぐ落ちるオンナの色仕掛けが通じない
誘惑しても
笑ってかわされちゃう
ママもチーママも素通りされてた
決めた この人にしよう
それからどうやって彼を
落としたのか覚えていない
多分私のことだから
グイグイは行かない
必ず男から口説いてくるように
仕掛ける
生まれて初めて付き合った男は
23歳年上の
地上げ屋だった
私は21だった