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NHKの教育番組に感動した話 −多様性を繋げるものについて−

この前会社を休んだとき、熱で虚ろになりながらNHKの教育番組を見ていました。そして、それにとても感動してしまって、涙をぽろぽろと流してしまいました。そこで取り上げられていたのは、とある新宿の小学校で、そこの生徒たちの両親は少なくとも片方が外国人である者が70%以上という、人種的にとても多様な学校でした。その番組では小学生たちが、「地域に住む外国人と日本人が交流を深めるためにはどうすればよいのか」というテーマで議論を行っていました。その話し合いの結果、まずは自分たちの親同士が交流を深めるべきだということで意見がまとまり、そういう趣旨の交流会を企画することになりました。ところが、親たちはその交流会になかなか参加しようとしてくれません。そこで子供たちは、皆んなでそれぞれの家に乗り込み、親たちに出席してくれるよう頼みに行くことにしました。

はっきり言って、非常に迷惑な話ですよね。私たち大人ならきっとこう考えます、「きっと出席を見合わせた方々にはそれぞれの事情があるのだろう」と。確かに人々が交流することが素晴らしいのは理解します。しかし、我々はとても忙しいのです。だから、それが何の意味もない、それどころか余計な気をつかうであろう交流会などに参加をしたくないのです。番組では、生徒たちが実際に親を説得している場面も放送されていました。ある中国人の母親は「私は日本語はあまり得意じゃない。よく聞き取れないこともあるし。」という理由で参加を拒んでいました。それは、もっともな話だと思います。私たち大人は普通、長年の経験からそういった事情を察し、社会的、経済的な営みに関係ないものについては、なるべくそこには干渉しないことを良しとしています。

しかし、子供はそのような配慮をしてくれません。人にはそれぞれ固有の事情というものがあるということを、そもそも知らないのです。そして、「交流することは良いことである」という、ただその純粋な信念だけで、突き動き、行動します。彼らは「大人は分かってくれない」と思うかもしれませんが事実は全く逆で、分かり過ぎるから何もできないのです。

子供たちの頑張りが功を奏し、交流会には比較的多くの親たちが出席していました。子供たちは「人種間の交流」をテーマとした歌や踊り、演劇といった出し物を披露していました。そして実際に、様々な人種の親同士の交流も行われていました。少なくとも、テレビ画面に映った親達の表情はとても楽しそうに見えました。私はそれを見て、不覚にも涙したのでした。

その交流会では本来出会う必然性のない人たちが集まり、子供たちの出し物を共に楽しみ、そして交流していました。私にはそれはとても素晴らしいことのように思います。ここで言う必然とは、私たちはそれぞれに固有の前提(住んでいる場所・仕事・性格など)を持っており、行動はそこから演繹的に導かれる範囲の中に限られる、そういう意味のものです。この番組の内容に即して言えば、おそらくこの学校の生徒たちの親たちは何かのビジネスのために日本に滞在しているのでしょう。その必然性に従えば、彼らが出会うことができるのは、それぞれのビジネスに関係のある人々、そして日本にいる同じ人種の人々ぐらいに限られてしまうのではないでしょうか。たとえ同じ新宿に住んでいようとも、その垣根を越えて交流できる機会は少ないのではないかと思います。交流会で生まれた人と人との繋がりが、何かの危機、例えば台風の災害があった場合などに助け合えるような、そういった関係性になればいいなと思います。本当に素晴らしい交流会でした。

その子供たちが引き起こした必然性を超えた出会いをみて、私は、大地の芸術祭の仕掛け人である北川フラムさんが「アート」について語っていたことを連想しました。彼はアートを赤ん坊のようなものだと言っていました。赤ちゃんはワガママそのものです。こちらの言うことなど聞く訳がないし、誰の都合も考えずに、泣いたり、叫んだり、おしっこをしたりする。アートもこれに非常によく似ていて、めんどくさくて、手間がかかって、生産性がないものなのです。でも、だからこそ、アートや赤ちゃんの周りには自然と人が集まり、そこで人と人とが繋がるのです。新宿の小学生たちの振る舞いも、大人たちにとってそのようなものであったに違いありません。「交流会なんてものは、めんどくさいし、時間も取られるし、一文の特にもならない。でもまあ、子供が言うなら仕方ない、出席してやるか」、と。

そこでふと、今の自分の生活にそういう赤ちゃんのような、アートのような、新宿の小学生たちのようなものとの接点があるかどうか気になりました。残念ながらないんですよね。それに近しい結婚というイベントも落ちつていしまったので、次は赤ちゃんを授かるまでないかもしれません。それまではしばらく、必然性の閉じた世界の中で合理的に頑張っていこうと思います。

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