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「幸せには、みんなでなる」(小林鮎奈さん・その5)

りら子の部屋
ゲスト・小林鮎奈さん(その5)「幸せには、みんなでなる」

♬るーるる、るるる、るーるるー♪。りら子の部屋です。
小林鮎奈さんをゲストにお招きしています。
精神科の看護師さんであり、最近、心理師にもなられた。そして、精神疾患を持つ親に育てられた子ども」のお立場から、メディアなどでも発信されています。

前回は、「精神疾患を持つ親に育てられた子ども」が大人になって、どんなことに苦労するのか、体験談をお話しいただいていました。私の要領の悪さから、話題が行ったり来たりしていましたが、ポイントが見えてきたように思います。

前回までの記事は、こちら。
その1・「精神疾患を持つ親と暮らした経験」
その2・「大人になってからが、しんどい」
その3・「話せることが、大切」
その4・「優しい世界へ」
ここまでの小括


「当事者」でない人はいない

― うーん、言葉の切り取りでいうと、「当事者」っていう表現、いけないよね。当事者でない人って、きっといないじゃん。当事者という言葉を使うと、「当事者でない人」が出てきてしまうから。あなたは当事者?って聞かれると、なんか違うってなっちゃうし。

うん、うん、本当そうだと思いますよ。当事者でない人はいないと思う。

― その観点を、どう共有できるのか、だよね。こんな問題、いっぱいあると思うんだ。

すごく難しいですよね。丁寧に考えないと。なかなかそこのところ、余裕ないですよね。やっぱり、自分が重なったな、っていうふうに心が動かないと、そうなんないよな。

― 不幸なことだよね。みなそれぞれの困りごとで困っていて、どうしていいか分からなくて、周りの人も気づかなくて。

すごい不幸なこと。すごい悲しいな。中学校の時のことを思うと、悲しいなって思いますね。みんな頑張っているから誰も悪くないし責められないし、みんな苦しいみたいな。けどそういう中で被害者とか加害者とかっていったりもするし。私もここにこうやっていられるのは、たまたまだけど、一歩間違えてたら人を刺しててもおかしくないなっていうくらいだった。…ちょっとわかんなくなった(笑)


やっぱり「第三者」が大事

― 私も、このnote始めて、世の中にいろんな人がいるんだって気がついたし、一人ひとりがばらばらに戦っていたら、戦いきれないと思ったし。違う境遇の人たちと、いかに「共通項」を見つけて戦えるのかが、すごい大事だな、と思い始めた今日この頃なのだけれど、他人を理解するのは実は難しい。丁寧にやっていくしかないですよね。

直接話すのはすごく難しいことだから。家族って近すぎるんでしょうね。だから第三者が大事なのかな。だから(家族が身近だからこそ)素晴らしいことがいっぱいあるけど。


幸せでもあった、と言いたい

― 少しまとめていこうと思うんですけど、いろいろ経験されてその全てが小林さんになんだけど、伝わりにくい部分をあえて強調するとしたら?

私は私で幸せです、お母さんも幸せです、っていうことと、この親に育てられてよかったっていうことを、あえて言うようにしている。本当はいろんな気持ちがあるんですね、そう思う部分、そう思わない部分もあったり、きれいごとだけじゃまとめられないよっていうようなのが素直な感情なんだろうけど、そうやって言わないと、他人事になっちゃう、うまく伝わらない、気がする。そう思う部分もそうでない部分も、全てが素敵だったりするんですよ。そうじゃない(幸せだと思えない)部分だけ切り取られちゃったりして「大変だった」ってだけの話になると、違うことになっちゃうし。そういう人も結婚して子どもを持つことは、これからも増えていってほしい、そうあってほしいと思うし。きっと私もそうなっていく…それはちょっと違うか…。

― 仮にそうであっても、幸せになる努力を惜しまない、ってことですよね。

うん、うん。何かこう、ネガティブなものはインパクト強いんでしょうね。良かったことがあっても、ここが傷ついた傷ついたって話はインパクトが強い。じゃ子ども持つのやめようと思う人もいるでしょうし、それは良くないってみられることもあるだろうし。そういう話をしたいんじゃないんだ、って(笑)。いいところも嫌なところもあるのはどの親でも一緒で、別にこの人だからいけない、っていうわけではなくて。この親だから苦しかったけど、この親だから出会えた奇跡もあった、と。
…ていうのは、しっかり言わないと伝わらないな、と思う。


困りごとを自分たちだけで抱えない

― そうだね。精神科の病気があるけど、これから子どもをもちたい、っていう方々に、子どもの立場からメッセージなど、ありませんか?

私は子どもがいないし結婚もしてないから、難しいですけど、その前に、誰かとパートナーになるって素敵なことだと思うから、それで子どももいるって、存在自体が素晴らしいものだと思うから、それがいいとかだめとかいう話じゃない。それは素晴らしいことなんだから、そこからどうしていくか、というのが全てなんじゃないかな。それは堂々としていいんだと思う。ただ、困りごととかを自分たちだけじゃなくみんなで話せたらいいよね。
パートナーと対話できることがすごく大事だと思う、一緒に生きていく上で。話したいけど話せないこともあるし、第三者が必要な時もあるけど。そういう時に何が希望になるのかな…

― 自分たちだけで育てなくてもいいんだよ、っていうのはもう絶対必要。だから、周りの人が、話を聞こうよ、って。

(聞いてくれる人が)きっといると思うし、そこにいなくても違うところにいると思うし。諦めちゃっていても、絶対いると思うから。パートナーとか子どもとか、そういう尊いものと一緒に生きていくためには、諦めないで出会いたいなと思いますね。なんだから、子ども持つなとかって「論外だぜ」っていう気持ち、ふふ(笑)。

― そういうふうに言う人はおそらく、「親切心」で言うんだよ。でもそれは「親切ではない」んだぞ、って。だから…幸せになるしかないよね。「ほら、幸せです」って見せる(笑)。どんな境遇でもそうなれる、と。

うんうん、幸せになるしかないですね。なれるんです。それには、オープンで話せるっていうのは大事になると思うから、それがもっと当たり前にできればいいですよね。

― その通りです。(笑)


それでも、悲しさを抱えて生きている

難しいなあ(笑)この間、「子ども白書」(注・日本子どもを守る会の刊行物)の原稿を書いてたんですけど、悲しい話になっちゃう、悲しい気持ちが残ってるんだろうな、ずっと。

― 私(りらの中のひと)が思う「悲しさ」と、そういう経験をした小林さんが感じる悲しさは、「違う」んだろうね。

そうかな…でも悲しい気持ちはずっとあるんでしょうね。そう思いますね。精神科で働き始めて自分のことに向き合うのに、縛りがあったりとか問題が出てきたりとかして。トラウマの勉強もして治療も受けて、結構生きやすくなったし楽になったし、世界が輝いたし、幸せも感じられるようになったけど、悲しい気持ちはずっとあるんだなって、この間ふと思ったかな。それがふとしたきっかけで大きくなったりして、また出てくるんだと思ったら、「抱えて生きるってこういうことか」みたいな。

― そういう気持ちがあるんだねえ。

はい。いっぱいしゃべっちゃった(笑)。

何度も言います。他人事と思わない「共感」。そして、自分が切り取った世界が全てだと思わず、まだ知らない世界に気持ちを寄せる「探索的態度」。やはり、これらが大切なんです。うーん、珍しく心理師らしいコメントだ(笑)。続編をお楽しみに。

(つづく)

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