感想文 チ。―地球の運動について―
1, 2巻を読んだ感想でございます。
めちゃくちゃいい、めちゃくちゃいいよ!
痛そうな描写があるので苦手な人は注意ですが、俺の屍を超えていけというか、人間の知性は勇気は止められやしない!
そういう熱いマンガですね。
試し読みもできると思うので読んでみてください。
ただボイラーに火が入ったなと気がつくのは、試し読みの範囲の後ですね。実際はもっと前から火は入ってるんだけど、でっかい鉄板は熱くなるにも時間がかかる。気になった人は1巻まるごと買っても損はないと思います。
「知性」をヒョロガリとみなす風潮あるけど、
本来「知性」は真っ直ぐで泥臭くて激アツでアンストッパブルなのよ、という話なんだよ。待ってたよこういう表現!!
一応背景は知ってたほうがいいと思う
おせっかいで背景の補足をします。させてくれ。
“E pur si muove”(それでも地球は回っている)
本書を手にとるような人は、この有名なセリフは知っていると思います。ガリレオが地動説を唱えて、異端として教会から有罪判決をうけたときに、つぶやいたとされるセリフです。
地動説とキリスト教(作中ではC教)の関係と、科学における暗黒時代について述べます。教会の力が大きくなった時代、教義に反する別の宗教や土着の信仰は異端とされたわけです。
教義では、神の力で大地は安定し、太陽は昇り星々は回る
のだから、地動説はまずいわけです。
チのテーマ
科学が衰退した時代に真実を追い求める姿勢は命がけだった。
地が動こうが日常は変わらないのだから教会の教義を受け入れればいいだけなのに、真実を前に知は嘘をつけない。守り抜く、というよりは止められないもので、血が流れ、命が失われようとも、それは受け継がれていく、そういうテーマなんですよ。
知性って気取りや奸計のもやしっこみたいに描かれがちで、図太い描かれ方をあまりしないんですけど、この作品みたいに、知性の持つカッコよさって、捻じ曲げられない、泥臭いしぶとい「熱」だったりすんのよ。
本来激アツなんだよ。知性と知性の向かう先は。
よく描いてくれたッ!
ごめんちょっと水を差す
ただね、史実は作中ほどの異端審問で科学弾圧は行ってないらしい、という水は差しておきます。これは安易に宗教って盲目だ、ひどいんだっていう結論に持っていって欲しくないからです。宗教には宗教の強さも役割もある。
とはいえ、そんな水差したかて作品の熱は冷まされやしないけど。
おまけ
地動説について調べてたら、カッコいいのがありました。
中世イスラムの天文学者も、迫害を恐れて黙ってたけど地動説気づいていたのでは?という証拠とされる四行詩だそうです。
廻るこの世にわれらまどいて
思えらく そは廻転提灯の如しと
太陽は灯にして世界は提灯の骨
われらその内に影絵の如く右往左往す
場所も時代を問わず、知性がついえることはないんだねえ。タフだねえ。