ザック・ブッシュ医学博士インタビュー 【コロナウイルスをめぐる新しい科学的パラダイム、ゲノミクスと環境理論(病原環境説)】
インタビュアー:パトリック・ゲンテンポ博士
*このインタビューは2020年に https://vrevealed.com/ において行われたものです。今日のコロナ状況下において、とても大切な情報が含まれていると感じています。多くの人に届くことを願いつつ、以下、翻訳しました。
*****
今日、世界で最も輝く精神の持ち主の一人が、私の友人のザック・ブッシュ博士です。彼は、人類にとって何が可能かというビジョンを描いていて、世界中の何百万人もの人々がそれを支持しています。彼は課題が何であるかを明確に見抜くことができ、その課題を乗り越えて、どうすればより高次の理解と実践に到達できるか、思考と言葉を織り上げて語ってくれます。さて私たちにどのような素晴らしいビジョンが用意されているのでしょうか。今日私たちが直面していることが困難ではないと言っているわけではありません。それはやはり難解ですが、その課題を理解し、超越するビジョンを持つことこそが私たちにとって最善の希望であり、ザック・ブッシュ博士はまさにそれを語ってくれています。今回は、ブッシュ博士との2部構成のインタビューの第1部をご紹介します。ザック、このインタビューを受けてくれてどうもありがとう。この対話が実現して興奮しています。
またここに来られて光栄です。
前もってはっきりさせておきましょう。あなたはご自身をワクチンの専門家と名乗ることもなく、いわゆる反ワクチン運動に加わっておられるわけでもないと思いますが、あなたは微生物叢、免疫、また微生物との共生について多くの視点を持っておられます。まず、全体像からお聞きするのがいいかと思います。あなたが何を見ているか、教えてください。
広い視野で見ると、歴史上、科学者であることがこれほどエキサイティングな時代はかつてなかったと思います。今、科学の世界からは多くの革命的な視点が生まれています。それは顕微鏡を通して見るような細部にフォーカスする従来の遺伝子研究ではなく、より包括的な研究であるゲノミクスによって、初めて明らかになってきました。
ゲノミクスとは?
ゲノミクスとは、生命がそれ自体をテンプレート化(鋳型化)する方法および、そしておそらくより重要なのは、生命が適応する方法を見ていくことです。ゲノミクスや遺伝学とは、生命の設計図がどのようにして生まれ、他の生命体に適応して、より高い機能を持った状態を作り出すのかを研究する学問です。そして、私たちは、古細菌(アーキア)あるいはウイルスそのものという生命の源初の段階からそれを見てきました。いずれの場合も、遺伝子伝達の促進がその存在目的です。多くの意味で、ゲノミクスは遺伝子伝達言語の研究であると言え、それは生命の言語なのです。
興味深いことに、過去150年の間に私たちがどのような状況にあったのかを見てみると、私たちはマイクロバイオーム(微生物叢)(叢そう=群がり、くさむら)を敵視してきました。 私たちは感染症と戦い、ウイルスや、細菌、真菌などを撃退しようとしてきました。無菌で神聖なこの人間という存在を守るために。それが、ゲノミクスの研究によって、完全に崩壊してしまいました。そしてそれは大変興味深いことです。なぜならこれまで私たちは生命の成り立ちについての深い洞察を得るために顕微鏡による細部の観察に頼ってきていたからです。
私たちは生物学を超えて量子物理学へと進みました。原子同士を衝突させることで生命の構造を見つけようとしました。ゲノミクスの研究から見えてきたのは、遺伝に関わる物事は流動的、あるいは柔軟であるということです。
生命は構造ではなく、コミュニティーであり、生物多様性を通してのみ、私たちが地球上で理解しているような生命の出現を見ることができます。そしてその生物多様性の言語がゲノミクスです。そしてその最上部において、ゲノミクスはバイオーム(微生物叢)とヴァイローム(ウイルス叢)を通して表現されています。
ヴァイロームとは何ですか?
ヴァイロームとは、空気中を漂う状態で世界中を移動し、生物システムに吸収される遺伝情報のプールを表す重要な表現です。ヴァイロームはマイクロバイオームと別物であるということが非常に重要な点です。あまりにも長い間、科学者や医師一般の人々まで、ウイルスは細菌や真菌と並んで感染源の一種であると混同してきました。そして、私たちはヴァイロームをマイクロバイオームの一部として捉えていました。ウイルスは細菌、真菌、酵母、寄生虫などの類だと捉えていたのです。ところが、micro(ミクロ)とbiome(バイオーム)という言葉の定義からして、ウイルスを含むことはできないということがわかります。なぜなら、最初の単語は小さいという意味で、2番目の単語は生物を意味します。ウイルスは私たちの生物の定義に従うと、生きていないことがわかったのです。ウイルスは自分だけでは増殖できず、エネルギーを生産することもできませんし、燃料を消費することもできません。すなわち、ウイルスは種内の遺伝的変化を強化する、もしくは他種生命体へ情報を受け渡す、単なる遺伝情報の集合体なのです。私たちの遺伝子情報、ゲノムメッセージがスマートターゲットにパッケージされ、タンパク質で包まれます。そのタンパク質は私たち以外の特定の生物の、特定の受容体および組織に結合します。
ここ数ヶ月の間で、ヴァイロームに前代未聞の世界的な注目が集まることになりました。私たちはヴァイロームが人類を攻撃するパンデミックという物語を作り出しました。それは人類の歴史の中で最も驚異的な経済的変化をもたらし何兆ドルもの富が短期間のうちに動くことになりました。すべては遺伝子情報であるごく小さな小さなウイルスによって引き起こされていますが、実際にはそれ自体には人類の歴史の流れを変えるほどの能力はありません。このウイルスが例えば地球上の人口増加率を変えるなんてことはありえません。西欧諸国の15~20%の人口に匹敵する人々の命を奪ったペストのようにはならないのです。今年(2020年)このウイルスは、その発端から人類に挑戦をかけようとしていましたが、その遺伝情報が生物のごく特定の部分を対象としているため、社会の構造を脅かすようなことは決してありません。
ヴァイロームがこの情報伝達の経路として非常に特異的であることを知るとワクワクします。ストレスによって産生された分泌物がすべてを攻撃するというようなものではないのです。ヴァイロームは非常に特異的な経路で吸収されなければなりません。新型コロナウイルスの場合は、肺、血管樹などの場所に発現するACE2受容体を通してです。このゲノミクスの澱みない情報の流れがあり、それはごく特定の部分でアップデートされます。ちょうどコンピュータのソフトウェアのアップデートのようなものです。それは、あなたというハードドライブのあらゆる場所に行ってコードを入力するといったようなことではありません。特定の場所に行って、そこに入力するのです。そのコードの周りには、プログラマーが適切な場所に配置するためのターゲティングデバイス(特定の的に届ける装置)が組み込まれています。つまり、生物は適切な更新プログラムを受けることができ、そしてウイルスはまさにそのような働きをもたらすように設計されているように見えます。これらは知的に設計されていて、生物の特定の部分を更新するために精緻に設計されています。
興味深いのですが、私はヴァイロームのことを地球上の生物をアップデートするためのWi-Fiのようだとイメージしてきました。しかしながら、私たちはヴァイロームに対して非常に敵対的な見方をとってきています。言い換えれば、コロナウイルスやポリオなどのウイルスを根絶しなければならないという見方です。私たちはウイルスに宣戦布告しているのです。そして、それに対して私たちは文字通り軍事的な言葉を使います。あなたのお話に基づいて考えると、これはすっかり間違ったパラダイムなのでしょうか?私たちはもっと別の見方をするべきではないのでしょうか?
これが今、科学者であることがとてもエキサイティングな理由の一つです。歴史を私の科学的視点で振り返ってみて、今と同様に劇的な視点の変化を見ることができるのは、2000年前の古代ギリシャにおけるピタゴラスです。ピタゴラスは突然、惑星が平らであるという幾何学が機能していないことに気付きました。そしてこの惑星は丸いのではないかと気付きました。私たちが望遠鏡の発見とともに、実際に惑星は丸いという仕組みと可能性を理解し始める1600年前のことでした。そして、科学者達は望遠鏡で宇宙を見渡していて突然自分たちが宇宙の中心ではないと気づいてしまうのです。私たちは、地球が宇宙の中心ではなく、全てが自分たちの周りを回っているのではない事を発見してから、たった400年後に居ます。
今、私達は地球上における人間という生物を理解するのに、これと似た様な瞬間にいると思っています。自分たちが広大な生物多様性という宇宙の中心ではなく、広大な太陽系、さらには銀河系の中にある、小さな小さな惑星の一つのようなものに過ぎないことに急速に気づき始めています。私たちは小さなピクセルのような生命体であり、それはヴァイロームを研究することによりかつてないほど明白になっています。そしてヴァイロームはその瞬間瞬間の地球上の膨大なゲノム情報のほんのわずかな一部を表出しているのです。
現在の推定では31桁個ほどのウイルスが 私たちの周りの空気中に存在しています。
31桁?それはちょっと理解できない数です。 31個のゼロ・・・。文脈で言ってくれませんか?
ええ、その数字を把握できるよう例えるとしたら、31個のゼロが連なる数というのは宇宙中の恒星の1000万倍の数です。
知られている宇宙全体のですね?
そう、既知の宇宙のです。どの銀河にも数十億個の恒星があるわけですね。それに何十億もの銀河を全て掛け合わせていくと、膨大な数の感覚を得ることができます。そしてさらに、それを1000万倍しなければなりません。そうして初めて空気中のウイルス数に到達できます。
うわぁ
そして驚くべきことに、海水中にも31桁個のウイルスと 足元の土の中にも30桁個のウイルスが存在することを受け入れざるを得ないことがわかりました。
うわぁ
私たちは私達の生命活動と相互作用しているゲノム情報の煮込み鍋の中にいる様なもので、実は私たちの生物としての存在はそのゲノム情報によって設計されたものなのです。これは私達を大変謙虚にさせてくれます。繰り返しになりますが、このような洞察を与えてくれているのは顕微鏡ではありません。それはゲノミクスにおいて、生命のパターンやそれが地球という環境でどのように発生したかを見ていくことにより明らかになってきたのです。
今日、ヒトゲノム解析では、少なくとも50%のヒト遺伝子が未編集のウイルス由来遺伝子であると分類されていて、少なくとも10%のヒトゲノムがHIVなどのレトロウイルス由来であると考えられています。この発見は私達が、地球上に人類の命を作り上げてきたものそのものを悪者扱いしてきてしまったことを気づかせてくれ始めています。そしてもし私たちが、私達の生命を築いてきたものそのものを敵視するような姿勢を科学の分野で取り続ければ、私たち自身の破滅をもたらすことになるでしょう。パンデミックへの対応、感染症への対応、ICUでの対応において、今日、私たちが行なっていることがまさにそうです。私たちの周りのすべてのものを殺す必要があるという戦時のようなメンタリティーです。このようなメンタリティーがもたらすリスクは、私たちが孤立してしまうということです。
そして大きくは銀河のレベル、そして細胞レベル、小さくは原子のレベルでも証明されていますが、科学の中で最も面白い法則の一つでもある「熱力学の第二法則」というものがあります。「熱力学の第二法則」では、規模の大小にかかわらずシステムを分離させ孤立させると、そのエントロピーが増大する、つまりカオスの状態が増大することを教えてくれています。
私たちが今人類としてやっていることは、自分たちが生まれた環境から自分自身を隔離することです。自分たちが育まれてきた自然環境から自分たちをここまで隔離(滅菌)することで、孤立したシステムになり、その中で極めて混沌とした状態になってしまっています。そして、私たちは多くの機能不全や病気、例えば自己免疫疾患、癌、深刻な鬱、ニキビなど発症しています。みなさんがどう考えられても構いません。私達は今日、生態系は地球上の生命の連続体であると理解しましたが、これらの症状は全て私達がその生態系から隔離されていることから現れる症状なのです。
ちょっとおさらいさせてください。私たちは身の回りのものを全て除菌しようとしていますよね?どこに行っても手の除菌剤ですよね?マスクをつけて周りを殺菌し、それを自分を守るためとしています。
しかし、今のお話からすると、"ちょっと待った。私達の周りには驚くほどのたくさんの微生物や他の小さなものが存在し、このように身辺を殺菌することを習慣にしたり、また特定の微生物を攻撃しようとすると、自分自身を周囲の環境との調和を壊してしまうことになる、ということでしょうか?
そうです。興味深いことに、この無菌のバブルは、私たちがそのバブルを生み出すに連れ、セルフ・アイデンティティー(自己同一性)の崩壊につながります。それは信じがたいことかもしれません。なぜなら、それはある種の戦争のようであり、堅い国境と侵入者や移民に対する壁のようなので、あたかも強いセルフ・アイデンティティーとして感じられるからです。しかし、例えば生物学のレベルでは、腸からマイクロバイオームを取り除いてしまうと、腸間膜の境界を失ってしまうことがわかっています。殺菌すればするほど、マイクロバイオームすなわち多様な生態系が織りなすワイヤレスネットワークのようなものを失います。生物多様性の中でのコミュニケーションなくしては、私達は細胞レベルで何が起こっているのか、どのような反応をして良いかわからなくなります。腸は肉体と空間を区別するマジックテープのような境界線であるタンパク質を作るのを、突然止めてしまうことがあります。その代わりに、私たちが私たち自身から微生物を剥ぎ取っていくにつれ、生物学的なレベルで人間としてのアイデンティティが侵食されていくことが分かります。
私たちが生物としての潜在能力を最大限に発揮できるのは、地球上の生物多様性に富んだ生態系への参加あってこそだと、人間という種として気づく非凡な機会を得たと思います。そしてこれは、過去150年、実際には200年にわたって支持されてきた、有害な微生物を全て退治しなければならないとする細菌理論に挑戦し覆すものです。私たちは、微生物が私たちを攻撃していると考えてきました。
さらにゲノミクスは、有機土壌のように存在するマイクロバイオームという存在が、腸内に限られたことではない、という思いがけない発見をしました。今では、健康な状態において、肝臓、腎臓、膀胱、前立腺、乳房、人間の脳でさえも重要な役割を担うマイクロバイオームが存在することが明らかになりました。生物的ストレス状態に陥った時に修復と再生に向けて働く最初の反応システム、それはおそらく最もインテリジェントな反応システムでもありますが、それは実は人間の中に存在する微生物そのものなのです。健康な免疫システムは体内の生物を殺すことを想定していないという事実に気づくことは、並大抵ではない新しいチャレンジです。私たちの体内および周囲の生物多様性との中で、バランスのとれた状態や恒常性を理解し、実現することが免疫システムの仕事なのです。それは何かを攻撃することはありません。バランスを確立するためだけに存在しているのです。
ワクチンについて見ていきましょう。これまで歴史的に多くのウイルス性の疫病があったことがわかっています。パンデミックが発生して、何人かの人が命を落とし、その後に去っていきましたが、ワクチンはありませんでした。大きな視点で見るとそれは自然のサイクルの一部のようにも思えます。時には、環境の変化、人々が田舎から密集地に移り住んだ、と言ったような事と関連しているかもしれません。こう言ったことはあなたの物事の見方に影響を与えますか?
二つの事柄に関与すると思います。
一つは、生きとし生けるものはすべて生物多様性の連続体であると新たに理解され始めていることです。
もう一つはウイルスを病気の原因であると悪者扱いしてきたことです。このようなパンデミックであれ、季節性のインフルエンザであれ、発熱や粘液分泌を伴う上気道症状のある人の血中にウイルスを見つけ測定できるため、そこに科学的な相関関係を見出し、ウイルスこそが発病の原因であると見なしてきました。しかし、一歩下がって人類の歴史を振り返ってみると、このようなウイルス感染とみなされる症状を発症している場合、それは私たち人間を取りまく環境中にある私たち自身が作り出してきた毒性によって引き起こされていることが明らかになってきました。したがって、ウイルスは環境中の毒性を明らかにしてくれているのです。
そして、この新型コロナウイルスほどそれが真実であることを明白に示してくれたものはありません。新型コロナウイルスは世界中を移動し、どの地域が最も環境中の毒性が高いかということを私たちに示してきました。新型コロナウイルスの存在が最初に明らかにされたのは中国の湖北省です。もともと湖北省から来たものなのかどうかを解明するには時間がかかりますが、自信を持って言えることは、湖北省は土壌、水、空気システム、どれをとっても地球上に人間が作り出した環境の中で最も毒性の強い場所であるということです。土壌、水、空気のレベルで生物的ストレスが発生した時、大規模な絶滅現象が余儀なく始まります。生物的に高いストレスを与えられ、絶滅の危機にさらされた時、微生物であれ何であれ、種は適応現象を求めてウイルス情報を放出し始めます。湖北省では中国のどの省よりも多くのラウンドアップ(除草剤)が散布され、豚肉産業では世界のどこよりも凄まじい量の抗生物質が使用されています。この微生物に対する大規模な除菌戦争により微生物は大きなストレスを受けています。そして適応の可能性を模索して環境中にウイルスゲノムが放出されます。
このパンデミックを追いかけているうちに、世界各地で、理にかなわない場所にパンデミックが伝搬しているのを目の当たりにする機会がありました。なぜ湖北省から北イタリアに伝わり、数ヶ月後にはドイツや他の場所でも発生したのか。土壌や水、空気システムの毒性を見るまでは、この地理的な広がりの様子は理にかないません。メンフィス、ルイジアナ、ニューヨーク、イタリア北部は、数週間以内に次々にパンデミックが発生した地域ですが、抗生物質を含む除草剤や殺虫剤の散布が最も多い地域であり、PM2.5と呼ばれる大気中の粒子状物質汚染が最も激しい地域なのです。私たちは環境を汚染し微生物に大きな負担をかけることにより、ウイルス産生を強要してしまったのです。そしてウイルスはPM2.5と不自然な塊として結合し、自然がデザインしたものとは別物になります。そしてそれに暴露した私たちには、過剰なゲノムのアップデートや反応が起こることになります。そして、それは新型コロナウイルスを介して受容体にタグ付けされ、肺に送られます。このように私達がウイルスのスマート爆弾を作ってしまっているのですが、実はもともとこのウイルスはごく良性のアップデートだったのです。
ご存知の通り元々コロナウイルスは風邪を引き起こします。そして8年〜10年周期でより毒性の高い型で巡っています。2002年のSARS、2012年のMERS、そして今回2020年の新型コロナがその例です。こういうコロナウイルスの発生パターンは世界中で起きており、知り得るもので最も古いものは740年前まで遡ることができます。このように、コロナウイルスは非常に長い間、人類と共にあり、ゲノムのアップデートを現すその方法において実に知的であるように見えます。
したがって、地球上で生物に対する毒性やストレスが最も高い場所に、このように高濃度の遺伝子更新のための化合物が見られることは当然とも言えます。毒性は、適応と再生の必要性を生み出します。ウイルスは私たちがそれを行うためのメカニズムです。よって、ウイルスが発生した時には、ウイルスを非難するのではなく、ウイルスは友好的に危険信号を出してくれていると、私たちの視点を変える必要があります。ここに問題がある、高い濃度の毒性がある、この地域環境を整え、この環境を変えなさい、ということを教えてくれているのです。これはまさに今回のパンデミックにおいて私たちが湖北省に見てきたことです。湖北省では世界で最も高いPM2.5の大気汚染が発生しているのです。この地域でロックダウンが起こるとすぐに、車が走らなくなり、エネルギー生産が減少し、環境汚染度が下がり始めました。1立方メートルあたりの炭素パティキュレットポイント(粒子状物質)が40を下回るとすぐに、その地域ではコロナウイルスによる死者が出なくなるということを観察しました。また、人間の行動が変化し環境が清浄化されていくと、ウイルスが収束したかのように、あるいは人々がウイルスに対する集団免疫を獲得したかのように見えます。
実はウイルスは、細菌や真菌とは異なる種類の免疫反応を私たちの体内で引き起こします。人間がウイルスとの戦争に勝利するのを待つなどという考えは見当違いです。ウイルスは常に私たちの環境に存在し続けるのです。コロナウイルスを根絶することはできません。コロナウイルスは永遠に存在し続けて、不断に変異し続けるでしょう。新型コロナウイルスもすでに変異株が発生しており、米国内だけでも、はじめの数週間で複数のゲノム変異が確認されています。すでに3種類の異なるゲノム配列の変異型が確認されています。
したがって新型コロナウイルスという一つのものが私たちを攻撃していると見なすのは非常に不正確です。そうではなく、私たち自身が作り出したストレス要因があり、それが病気という形で発現しているのです。ウィルスは罪のない傍観者で、たまたまそのできの良い配達システムによって私たちの血流に汚染物質を運んでしまっているだけなのです。大気中の汚染物質を血流に運び込んでしまっている事実を知ることもなく、または対処や修正することもできずに。PM2.5はウイルス、またシアン化物やその他のエネルギー産業で排出される一般的な毒物にも結合します。したがって、私たちは汚染された大気中の有害物質を、よくできたウイルスの働きを通して、私たちの血流に直接取り込んでしまっているのです。これは、PM2.5やシアン化合物汚染の高い地域において、重要な内臓器官がおびやかされた状況下での生物的な適応です。そういった汚染地域では、血管樹や、酸素を運ぶヘモグロビンが最もその適応を必要とする場所です。
ところで、新型コロナウイルスに暴露された人々の半数以上には症状が出ないというのはすごいことです。そういう人たちは抗体を作り、それに対するバランスを見つけたということです。その人たちの体内でゲノミクスの働きが起こり、肺で、血管系で、赤血球で、ヘモグロビンでのゲノムのアップデートが起きたのです。つまり適応イベントが起きたのです。10年後、今回の新型ウイルスに暴露された人々が、無症状感染であろうとなかろうと、人類のよくない行いや、肺がんやCOPD(慢性閉塞性肺疾患)、慢性気管支炎、自己免疫疾患に対して抵抗力を獲得していたことがわかったとしても私は驚かないでしょう。なぜなら、その人たちは今後私たちの体の中で最も機能不全が起こることが予想される体内組織においてゲノムの更新に成功したからです。
これまでの視点を180度転換してくれるとても魅力的なお話ですね。あなたがおっしゃっているのは、ウイルスは文字通り生物的アップグレードをもたらしてくれる、そして環境への適応がそのアップグレードに反映されるケースがあるということですね。ウイルスはそもそもそのような機能を果たすようにデザインされている。私たちに危害を加えるという意図はなく、生物的な適応をもたらすように設計されていると。それではどのようにして新たな細菌理論を構築して行けばよいのでしょうか。これまでのように微生物との戦争状態を想定し、微生物を敵視し、攻撃しなければならない、そしてワクチンを開発することこそがその戦いの勝利であるというような従来の細菌理論ではなく、新たな細菌理論(この名称がふさわしいかわかりませんが)は生まれ始めているのでしょうか。ワクチンは私たちの免疫をサポートする代わりに圧倒し害を及ぼすことがありますが、人間が作り出した環境が新型コロナウイルスパンデミックの発生を可能にしたというような脆さの中で、ウイルスの仕組みについての新しい理解をもとに、どのように行動して行けばいいかというような新たなモデルは生まれ始めていますか?
そうですね、私たちは、生体病理であれ疾病であれ機能不全の根底には、まず微生物多様性の異常が見られるいう事実を認めなければなりません。したがって、私たちが調和を欠いたりダメージを受けた生態系を作ってしまうと、人間の生体内で機能不全が起こることが予想できます。そしてこれは腸内細菌叢のゲノム研究から解明され始めたのですが、私たちが腸内細菌のゲノム配列を解読し始めた2005〜2010年頃から、特定の細菌が欠如していると乳がんになるとか、大腸や結腸がんになるとか、肺がんになるだとか、細菌と人の病気の相関関係が唱えられるようになりました。腸内フローラ、これらの細菌は一見肺ガンとは関係なさそうに見え、特定の細菌の欠如で肺がんの発症を予測できるというような発見はまさしく驚くべきものです。
私が化学療法の開発に携わっていた当時、これらのことは私たちの癌モデルにまったく反していて、私たちは文字通り研究室の会議に座って、UCSD(カリフォルニア大学サンディエゴ校)とUCSF(カリフォルニア大学サンフランシスコ校)から発表される論文やジャーナル記事をヒッピーだと笑っていたのです。私はバージニア大学の現実離れした象牙の塔にいて、アイビーリーグ(米国エリート8大学のこと)のような環境にいたつもりでした。バクテリア説を馬鹿にしており、ガンは人間の細胞内の遺伝子の損傷の蓄積であると信じ込んでいたのです。ガンとは何かについての人間中心の思い込みがあり、バクテリアは単にそこに馴染まなかったのです。だから私たちは笑いに笑い飛ばしていましたが、時を置かず、ゲノミクスから出てくるデータが尋常ではない量になり、とうとう笑い飛ばすことはできなくなるほど明白になりました。
健康なヒトの乳房内の細菌叢にはスフィンゴモナス属細菌が優勢的に存在していますが、慢性的な精神的、環境的、栄養的なストレスなどがかかり体内組織環境が酸性に傾くと、乳房内のスフィンゴモナス属細菌は健全に成長できなくなるという研究が、2014年頃までに発表され始めました。スフィンゴモナス属細菌が乳房の細菌叢から居なくなってしまい、マイコバクテリア属放射線耐性菌が優勢になります。このようにして、この特定の細菌が乳がんの原因になっているのではないかという短期的な推測もされました。
乳がんの発症と並行して、そこに特定の細菌が存在するから、それこそが乳がんの原因であると誤解されたということですか?
研究対象となった乳がんケースの全てにこの細菌の存在が確認されたので(それ以外の細菌もありましたが)、私たちはピロリ菌が胃潰瘍を誘発しているのと同様なことかもしれないと興奮しました。興味深いことに、病気の乳房と健康な乳房両方に生態系が存在したのですが、ある女性の左右の乳房で、乳がんを発症した方としてない方とでは、それぞれ異なる有機物質、異なる細菌叢を持ち、様相の異なる庭園のようになっていました。その発見に従って、メチロバクテリウム属細菌こそがガンを発症させているのだと発表しようと目論みました。より多くのメチロバクテリウム属細菌のゲノムDNA配列が確認されればされるほど、癌が進行すると示したかったのです。ですが、実際には正反対の結果が出たのです。(メチロバクテリウム属細菌を含め)腫瘍から菌がいなくなればいなくなるほど、その女性は転移性の癌で亡くなるのが早かったのです。
なんと!
このようにして、マイクロバイオームの変化はダメージコントロールの第一歩であるという事実を知ったのです。それはまさに驚くべきものでした。マイクロバイオームが変化することで、乳房内の資源をより有効活用できるように適応していたのです。スフィンゴモナス属細菌は好気性細菌であるため、酸素が足りなくなった乳房内では生存が難しくなります。一方でメチロバクテリウム属細菌は嫌気性細菌で酸素不足にも適応でき、エネルギーを生産することもできます。つまり、エネルギー修復と再生メカニズムの能力を失い始めた組織においてはメチルバクテリウム属細菌が活発になるのです。
もし私たちが抗生物質や化学療法などでその細菌を叩きのめし、根絶してしまうと、癌の転移や死というリスクを招くことになります。
それと同様に、私たちの体内のマイクロバイオームは私たち人間の生体機能そのものよりも賢いという事実を受け入れなければならないところに来ています。バクテリアは人間の細胞の損傷に適応する方法を、人間の細胞よりもよく知っているかもしれません。人間の細胞は、必要とされる腸内微生物叢と組織内微生物叢の再生なしには回復できないのです。そして、これとウイルスは別の話だと言うことできません。細菌はそういうことをしてくれるけれど、ウィルスは全て悪ものだと結論づけることはできないのです。この、ウイルスは全て悪者だという態度は科学者の間では確かに見受けられます。ウイルスはトロイの木馬のようなもので、私たちの遺伝子装置を乗っ取って、他の細胞を攻撃するために大量のウイルスを作り出す、といった類いの態度です。それは、RNAとDNAの転写が細胞内でどれほど精緻に制御されているかにおいてだけを例に取って見ても、過去40年間の遺伝子データを無視していると言えます。どのRNA鎖がある種のタンパク質を作るべきか、いつ、どのDNAが特定のRNAを作るべきかを決定するなどは、人の体内で最も統制された働きです。これらは、制御されていない有害な形で決して起こらないように、何千ものフィードバックループと通信システムを伴った、非常に高度に制御されたステップで成り立っています。ウィルスがシステム全体を乗っ取ってしまうと言うようなことは出来ません。それは不可能です。システムにはたくさんのチェック&バランスがあるからです。ウイルスが入ってきたら、ゲノム配列決定とタンパク質の生産系に歓迎されなければなりません。
また、免疫システムの産生する抗体が、ウイルスや何もかもを攻撃するのだという理解はもう一つの誤解です。私たちはウイルス自体に対しては抗体を産生しません。RNAがそのウイルスを複製し、そのゲノム情報を体内のより大きな循環の中に入れると決定して初めて抗体を産生するのです。一つの細胞がRNAを複製し始め、タンパク質を作ります。この新しく産生されたタンパク質が血流に送り込まれ、体内の他の細胞に伝達され、そうやって体内のさるべき全ての部分でゲノムアップデートが起こるのです。覚えておいてください、この新型コロナウイルスは体の全ての組織に作用するわけではなく、AC2受容体と必要な場所だけに影響します。細胞はタンパク質を作っている間に、その表面に小さなタンパク質の断片を排出して、免疫システムの監視係が、「これは必要なものかどうか」判断できるようにします。免疫システムが、この細胞が作っている新しいタンパク質が私たちの体内システムには不要なものだと判断した場合、キラーT細胞とマクロファージを呼び寄せ、その細胞をきれいにすることで、タンパク質やそれに続くウイルスの産生を止めるようにします。
しかし、抗体が関与するのは全くその流れの末端であり、(質問に遮られる)。
なぜそれが重要なのか説明していただけますか。 なぜ、抗体が関与するのは後になってからなのですか? なぜならば、ウイルスに対する抗体の有効性こそが、ワクチンを開発する者たちがそもそも拠り所としていることのはずです。それは、全体像を見失っているのでしょうか?
残念ながら、私たちは抗体によってウイルスと調和のとれた状態に達するのではありません。もちろんそれは幸運なことでもあるのですが。なぜなら抗体に依存していたら私たちは死んでしまうからです。それはなぜかというと、抗体は感染が起こることを防げないからです。ゲノムのアップデートが行われて初めて、抗体は人の体をウイルスと調和のとれた状態にするのに一役買うことができるのです。そして実際には抗体はウイルスそのものを排除することはできません。抗体は何時でもそのウイルス情報を表出している細胞の量をコントロールできるだけです。
そして、先ほど言ったように、ヒトのゲノムの50%はウイルス由来です。もし、そのウイルス由来の遺伝子情報をすべて駆逐しようとするなら、哺乳類が誕生することはなかったでしょう。そしてその中には人間の生命にとって非常な重要な遺伝子が含まれるのです。女性の子宮内での胎盤形成は、数百万年前に遺伝情報をアップデートしたRNAウイルスに依拠するものだと言うことがわかっています。RNA配列が生物に組み込まれていなければ、そもそも哺乳類の誕生はなかったのです。
哺乳類が存在できるようになったのはウイルスのおかげと言うわけですか?
全くその通りです。ウイルスがなければ最初の哺乳類の誕生はありえませんでした。さらに言えば、私たちは私たち自身を修復することもできなかったでしょう。どういうことかと言うと、幹細胞の働きを可能にしているのもあるウイルス由来のRNA配列が存在しているからで、それなくしては、私たちはものの1年も生き伸びることができません。幹細胞はその多能的修復メカニズムによって体内のどの細胞にも取って代わることができます。もし損傷を受けて複製出来なくなった場合、幹細胞の持つ非常に特殊なRNA遺伝子により、バリヤーを越えてヒトDNA全体の遺伝子配列上を移動することができます。遺伝子の間には通常このような硬いバリヤーがあり、この細胞が肝臓細胞になり、この細胞が肺細胞になると言ったようなことが確実にできるように区別をしているのです。幹細胞にこれらを実行させるには、HIVのようなレトロウイルスからの新しいRNA配列が哺乳類のゲノムに組み込まれ、幹細胞の発現が起こることが必要だったのです。このような人間の生命にとって極めて重要なメカニズムを見ていくと、免疫機能の目的はウイルスのもたらすゲノムの更新を根絶することでは決してないということが分かります。その目的はいつも、私たちをウイルスの遺伝子と調和のとれた状態に導くことなのです。
それでは、それが抗体によって起こらないのであれば、どのようにして起こるのでしょうか?それは主にHIVとC型肝炎の研究を通じて発見されました。これらの体内で起こる慢性疾患症状が過去数十年研究されてきた結果、人がHIVとのバランス(調和)やホメオスタシス(恒常性)を達成するのは、人の細胞の細胞質内で作られる小さなハサミ状のものの働きによることがわかりました。それは非常に特異的な酵素で、ウイルスのRNAやDNAを標的にして、それらが複製を始める状態になる前にそのDNAを切り刻んでしまいます。これらの酵素は実に多忙です。私たちを取り囲む空気中には31桁個ものウイルスが存在します。この1時間あまりの短い会話の間にも、私の体内で(そのハサミ状の酵素が)おそらく何兆というDNA配列を、つまりそれを包含する細胞を切り刻んでいると断言できます。私たちは常に環境から非常に多くのものを取り入れ続けているのです。したがって、私の体はこの絶え間なく編集し続けるというミッションを遂行しているのです。ゲノム情報が生産される段階に入る前にすでに編集しているのです。
だから、共に暮らす家族の誰かがコロナウイルスを持ち込んだとしても、大多数の人は、実際に全く感染しないのです。そして、感染した人の半分は無症状か軽度の症状です。なぜなら言及したように常に体内で編集が行われているからです。ウイルスを根絶するために、数週間後に産生される抗体を指をくわえて待っているわけではありません。こういった酵素の働きによって、恒常性維持機能(ホメオスタシス)のバランスを保つことができるのです。
ザック・ブッシュ博士は素晴らしい魂の持ち主ではありませんか?このことを皆さんと共有できて喜ばしく思います。このメッセージを受け取ったら他の人と共有してくれることを願っています。Vaccine Revealed のことを人々に知らせてください。ここにお招きする輝く精神の持ち主達を見せてあげてください。ご視聴ありがとうございました。引き続き第2部でもザック・ブッシュ博士のインタビューをお届けしますのでそちらもご覧ください。
*****
ザック・ブッシュ医学博士は、内科、内分泌学、ホスピス/緩和ケアを専門とする、米国内でも数少ないトリプルボード認定の医師の1人です。
マイクロバイオームと健康、疾病、フードシステムとの関連性についての教育者、思想家として国際的に知られています。ザック博士は、人間と生態系の健康に関する根本的な解決策を見い出そうと、*Seraphic Group と非営利団体Farmer's Footprintを設立しました。ザック博士は幅広い分野での教育に対する深い情熱を持ち、それはヒトのゲノム、免疫、腸と脳の健康における土壌と水の生態系の役割などに及んでいます。そして彼の教育は、化学的な農業や製薬からの抜本的な脱却の必要性に焦点を当てています。ザック博士の継続的な取り組みは、消費者、農家、巨大産業が人と地球の健康な未来のために協力する道を指し示してくれています。
*****
出典:
このインタビューは2020年に https://vrevealed.com/ において行われたものです。
インタビュー動画はYoutubeに転載されたものです。
*****
翻訳:矢澤 実穂、 河村 公子
協力:トム・コクレン、リー・ボックス
*この翻訳文の引用、転載をご希望される場合は、このnoteのリンクを貼り、出典の明記をお願いします。
#ゲノミクス #細菌理論 #環境理論 #ヴァイローム #コロナ #ウイルス #免疫 #ザックブッシュ #細菌 #病原体説 #病原環境説 #細菌説 #環境説 #ザックブッシュ
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?