![見出し画像](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/159191600/rectangle_large_type_2_90e274c727039ae550f88e9632f93f66.png?width=1200)
【11万PV】大日本帝国、アラスカを購入して無双する【試し読み】
カクヨムにて、歴史ジャンルの週間ランキング3位、11万PVを記録した作品の第一話です。ちなみに「アラスカ購入」と史実のワードで調べると、Googleなどで10位前後に表示されます。
本編↓
第一話 アラスカを購入しますか
〜〜〜〜
「アラスカが欲しい」
15才の明治天皇の言葉だった。その顔は少年らしく、無邪気そのものだった。
「アラスカってあのアラスカですか? ロシア帝国が買い手を求めているという?」
「それ以外ないでしょう?」
大日本帝国の首相である伊藤博文は困惑した。アラスカが欲しい!? 聞き間違いではないようだ。そして、明治天皇の喋り方はまるで「このおもちゃが欲しい」という子どもの願望のようだった。おもちゃよりも遥かに高額で、大きな買い物だ。財布は国のものである。
確かに、ロシア帝国はクリミア戦争(ロシア帝国対オスマン帝国、イギリス、フランス)で敗戦し、アラスカの購入国を探していると聞いている。財政難を乗り込めるために。まずはアメリカに打診したらしいが、南北戦争の影響で保留になっているとのことだった。
「天皇陛下、ひとまず大蔵省の大久保利通に相談いたします」
伊藤博文はそう言うと、部屋を後にした。早いうちに鎖国をやめて近代化が進んでいるとはいえ、アラスカ購入をした後、他国からの侵略を防衛できるかどうか。問題は山積みだ。アラスカの近くにはアメリカという大国がある。あれをどうにかしなければ、アラスカ防衛は成り立たない。
「大久保、天皇陛下がアラスカをご所望だ。そこで大蔵省(現在の財務省)トップのお前に聞きたい。アラスカを購入するだけの財産はあるか?」
伊藤博文は願った。大久保利通が「そんな余裕はないですよ」と言うことを。買えないのなら、明治天皇も諦めてくれるだろう。
「なるほど。大日本帝国は他の国に劣らないほどの蓄えがあります。しかし、アラスカを購入すると財政が厳しくなるのは事実です。もしも、アラスカを足がかりにアメリカへ進出できたら別ですが……」大久保利通も困った様子だった。
「アメリカへの進出か……。なかなかハードルが高そうだ。分かった、ひとまず陸軍大将の西郷隆盛と海軍大将の勝海舟に相談してみるよ」
伊藤博文は西郷隆盛と勝海舟を呼びつけると、手短に事情を説明した。
「天皇陛下のご指示だ。購入すべきだろう。勝海舟、お前さんはどう思う?」と西郷隆盛。
「もし、アラスカを購入したら、まずは物資の補給が必要だろう。そこは海軍直轄の『海援隊』がなんとかしよう。問題は購入代を上回る戦果を挙げられるかどうかにかかっている。果たして、アメリカを攻略できるかどうか……。正直、自信はない」
勝海舟は弱気だった。普段豪快なことを考えると、かなり珍しい。それだけ慎重にならざるをえないのだ。
「二人とも、貴重な意見をありがとう。もう下がっても大丈夫だ」
伊藤博文は考えた。アラスカ購入は天皇陛下のご希望である。大久保利通によると財政は厳しくなるというし、陸海軍の大将二人も判断が分かれている。
さて、どうしたものか。アメリカに勝てる勝算はあるのか? 残念ながら伊藤博文は軍事には疎い。迷ったらひとまずやってみる、それが伊藤博文の信条だった。まずは、ロシア帝国に電報をしよう。「アラスカを買いたい」と。
ロシア帝国からの返事は「まだ、買い手が見つからないので、ぜひお願いしたい」という内容だった。返事はとても早かった。それだけ、ロシア帝国もとっとと手放したいのだろう。あの不毛な地を。
買ってしまった以上、アラスカ購入の代金を上回る成果を出すのが首相である伊藤博文の任務だ。ひとまず頑張ろう。伊藤博文は腹をくくった。