詩集vol.1:僕の街のコーヒー店
「いとしのあなたへ」
どうしてこんなにも愛しているのに
距離は離れていくばかりで
いとしい気持ちは募るのに
日常でしかいられなくて
行動の一つ一つに意味を持ち始めるその時に
あなたへのささやかな口づけを
この冬のあたたかなこぼれ日に
風に吹かれる木々のささやきに
送りましょう
せめてどうかあなたの幸せを
そしてあなたに胸いっぱいの感謝を
どうか届きますようにと。
2024/2/1
「偉鑒門」
どうしてそんなに怖がっているの?
君の純粋さと向き合うのを
自分が傷つくのが怖くて
その扉の前で立ち止まっているの?
あまりにも愛しすぎたその扉は
古くなってちょっとやそっとでは動かない
扉が開きかかって
そこから溢れ出てくるものでさえ。
だから君は大切に大切に
その扉の前に佇んで。
2024/2/1
「継ぎぬ喜び」
ステンドグラスから光がさす
光はそれだけで
ただ静かなその場所に
疲れ果てた御婦人が一人椅子にもたれかかる
午後のなんというひとときか
外には果物売やら野菜売があって
子供のはしゃぐ声がこぼれてくる
御婦人は眠気に襲われ
やがて言う
あゝ主よこれです
私の限りある命が尽きる喜びです。
この溢れる光に
か細い線が反射して光って
緩やかにほどけていくのです。
2024/1/31
J.S.バッハ 「G線上のアリア」
演奏 村治佳織 を聞いて
「追葬」
それは古いオルガン
埃の被った
それは誰も弾くもののいなくなった
かつては勇敢にその音を鳴らした名器は
今は影も形もない。
行方知れずの音を一つ一つ探していたら
いつの間にかここにたどり着いた
鍵盤を押しても音がなることはない
だからその傍らでどうか僕とこのまま
でもたしかにここにある音と共に
2024/1/31
「主よ、人の望みの喜びよ」
演奏 村治佳織
を聞いて
「追憶」
冬のあたたかな日の午後の木陰
犬を連れたおばあさんを遠目で見て
やがて葉の散りきった木陰に
古い記憶が緩やかな風に乗って通り過ぎる
それは僕にほろほろと
それはまるであたたかな冬の日の午後の木陰
2024/1/31
「恋」
序奏は悲しくも美しいピアノ
そこにやがてヴィオラが支えるように下を奏でる
そのうちヴァイオリンが主題を歌うようになり
優しいオーケストラへと移っていく
恋の移りゆくさまは
やがてその曲の終わりはもう一度ピアノに戻り
それは壮大な物語。
2024/1/30
「カビ」
湿度の高いこの部屋
電気はつけない
こもってる部屋は
まるで私のよう
脱ぎ捨てた服
チューハイの缶
そのうちカビが生えて
どうにかしなきゃいけなくなる
体が火照って熱でも出そうな勢い
暗いベッドの上でひっくり返る
天井を見て
熱のこもった息を吐く
それが部屋に充満してそのうちカビが生えるから
2024/1/31
「歩こう」
歩こう
前を向いて歩こう
おてんとさまが空に登っている
その下を
てくてく歩こう
ちゃっかり歩こう
今までの旅の思い出でできたマントを着て
今までの出会いと別れをリュックに詰めて
すれ違うものに軽く挨拶をしながら
僕を歩こう
2024/1/28
「おじさんよ」
おじさんは佇む
昼下がりの埃っぽい部屋の隅で
君が来れば
はにかんで
どこか物悲しく
どこか切ない
その背中は語る
優しさは悲しみ
故に言葉は多く語らず
おじさんよ
おじさんよ
2024/1/30
「青空」
男っぽいところがある私
言い寄ってくる男は沢山いるけれど
興味ないの。
この短く切った髪
バックの可愛いキーホルダー
靴下の下にこっそりしてるペディキュア
全部私の好きなもの。
そして、この平凡な日常と
後ろに尾を引かれた私の自我
それが私。
唯一屋上で感じるこの風と
頭の上に広がるこの青空が
私の感情を少し動かす。
2024/1/30
「キラーチューン」東京事変
ラプラス・ダークネスcover
を聞いて
「ウェントゥス」
ここは雲の上
カラッとした風が今日も降りていく
雲を通り抜け
カラフルで華やかな町並みを
石畳の上を
踊る女のドレスをめくり上げ
はだけた足が男どもを熱狂させ
ぶどう酒を飲む夫婦に昼下がりの心地よさを与え
オリーブ園で働く男たちに一時の癒やしを与え
若者が弾くギターの乾いた音色を運び
満足した風は
やがて海へ出る
そしてまた雲の上へと帰っていく
2024/1/30
「平日の図書館」
そこは波一つ立たない湖面
それは聖堂
そこに教えはない
集う人はどこか静かで
その湖面に一粒の雫が落ちて波紋が広がるように
けれどその雫に音はない
そこは聖堂
静かな聖堂
2024/1/30
「湿度」
雨が降る暗い橋の下で。
雨はやまない
この湿度の高い火照った体は私の生きている証
濡れた髪は空の暗い色と混じって憂いを癒やす
このまま今しばらく誰も来ないで
この落書きが
この埃っぽい空気が
この暗い空が
今の私の全部
だからこのまま誰も来ないで
2024/1/29
「キラーチューン」東京事変
ラプラス・ダークネスcover
を聞いて
「私の朝」
朝にね
コップ1杯分のお湯を沸かして
ドリッパーにろ紙を敷いて
いつもの豆をいれる
そこにそっとお湯を注ぐと
ふわっと膨らむ
そこにいるのよ、私の幸せが
3024/1/30
「キラーチューン」
豪華なシャンデリアの下には
破れたフェンス
その中にはゴミだめが
破れかぶれのガラクタたちは
シャンデリアに照らされて
望郷の念に駆られる
そして思わず動き出す
羨望をはらんで踊り出す
あゝ僕らを見て
この惨めな僕らを
上から下がるシャンデリアだけが彼らを祝福する
2024/1/29
東京事変「キラーチューン」を聞いて
「栞」
君が横を通り過ぎると
柔軟剤の匂い
それが僕の胸をぎゅっと締め付けて
美しさと悲しさとがこみ上げてきて
古い栞をまた挟んでなかなか読み進まない本を閉じる
そして僕の思いはまた行き場を失って
また本をひらく。
戸惑いとやるせなさがどうして僕をこう困らせるのか
それは古い本への憂愁に似た
やがてペンを取り紙に書くのに似た
2024/1/28
「朝の女子高生」
冬なのに足出して
最近のトレンドは靴下が短いらしい。
唇の色は真っ白で
椅子に座るなり目をつぶって寝る
きっとそうすれば一瞬さ。
駅と駅の間
その中のささやかな光景。
駅から降りればふらついた足取りで。
目をこすりながら。
昔の懐かしい記憶が蘇って
レモンの香りがした。
2024/1/20 電車の中
「独り」
独りって時折美しい
青いガラスが僕の周りを包んで
それに薄ぼんやりしたライトが反射して
キラキラ輝く
そんな感じ
さみしくて、あたたかくて、愛おしくて、おしとやかで
それらが青いガラスに反射するとたちまちキラキラ輝き出す
ガラスの外も内もただただ静かで
上からゆっくり雪のようで、けどあったかいそんなものが降りてくる
そんな感じ
2025/1/27
「何でもない日」
買い物袋をぶら下げて御婦人は
スーパーに
買い物袋は娘が幼稚園で作ったもの
髪は午前中に美容室で整えたもの
靴はお気に入りの赤い靴で
服はちょっとお洒落したいときに着るワンピース
買い物が終わったら
娘を迎えに行って
ご飯を作って
そう今日は何でもない日。
私の好きな何でもない日。
2024/1/25
「午後のひととき」
壁に湖面に反射した光がぼやけてゆらぐ
ご婦人たちが小さな小舟の上で楽しそうに語らうのを見て
白樺の木々や鳥々
パンにオレンジのジャムを塗って
この午後の緩やかなひとときになんと名をつけたらよいだろうか
「舞踏会にて」作曲 野平一郎
演奏 藤田真央
を聞いて
2024/1/26
「舞踏会にて」作曲 野平一郎 演奏 藤田真央
あの人はいつも美しくて
今夜も来ていて
さり気なくそちらを見てはため息を漏らす
近寄って話しかけたいけど
会場のシャンデリアが眩しく輝いて
照らされる光に参ってしまいそうで
あの人に照らされて参ってしまいそうで
このささやかな今を
やはりほんの少しやはりほんの少し楽しむことが精一杯で
今夜も恋は叶わぬのだろうか
2024/1/26
「ライフイズビューティフル」
ああ、どうして僕の愛が
どうして僕の愛が
時と場合を選ばぬよう
時と場合もまた僕を許さないのか
この陽気な僕に一つ理由があるのだとしたら
このこのため
死んでも守り抜くと決めた
このこのため
この残酷な世界に君だけが君だけがいてくれれば僕はそれでいい
故にどこまでも
君に約束した戦車は届いたかい?
ぼくの愛する君たちに
2024/1/17
「ときめき」
僕を見上げる君の目が
優しさで溢れていたように
僕は君に何を返そう
未来への期待感が僕のこころに宿るのは
君との未来が明るいものだと思っているから
12月の寒さが僕の心を研ぎ澄ます
クリスマスの静けさに君に感じる希望を乗せて
ささやかな時を過ごす楽しみをここに歌おう
2023/12/10
「君ってね」
君ってね
君のお父さんとお母さんの半分半分じゃないんだよ
2つが混ざり合って全く別の新しいものになるんだ
いくつもの奇跡が君を作ってる
かけがえのないものなんだ
その化学反応を思いっきり楽しむといい
今そこに立っている君はオリジナル
父にも母にもない君だけのものってなんだろう?
2023/12/12
「冬の朝日」
なんて心地よいのでしょう
照らされるすべてが
陽の愛しさに包まれて
なんて優しいのでしょう
それは喜びに満ちて
なんで愛しいのでしょう
2024/1/15
「ポツンとベンチ」
いつも誰かを待っている
いつかその日が来るかもと
いつでも君を待っている
雪が吹雪いて、雨に打たれて
いつでも必ずそこにある。
今日も陽の光を浴びて
おはよう。みなさん。
ポツンとベンチ
2024/1/15
「冬の枯れ草」
細く白くなったその草は
風にたなびく
それは僕を置き去りにして
ゆらゆら揺れる
このどうしょうもない寂しさの
冬の枯れ草
2024/1/15
お姫様。ようこそ。明け方の空へ。
冬は寒い。厚着をして。こちらへ来るのです。
地平線に隠れている音楽隊が朝日とともに音楽を奏でます。
時は永遠。そして一瞬。
ほら。
朱色とともに。
まだ星々も帰る時間にはまだある。
さあ、音楽よ。
なれ。
故に私は天地創造さえもこの一瞬のためにあると思うのです。
2024/1/14 朝 地平線が朱色みがかったとき
秘密の扉をこっそり開けて
なかから素敵なものがたくさん溢れてきて
夜空はまるでおもちゃ箱
僕はそこから星を一つ手にとって
あなたに捧げる。
ねぇこっちを見て。
どんな上等なものよりも
きっと君を満足させてみせるから。
あなたは言う。
私はもうもらっているわ
この夜空の星々にかなうものがあるものか
この星は僕のものだ。
いいえ違うの違うのよ
どんな星々よりも
この手がこの手がほしいのよ
二人は夜空を登ってく
これからは私達でこの宇宙を作るのよ
君がそう望むなら
2024/1/14 朝 まだ暗い時間
2週間
「図書館のおじさん」
上等な服を着て
部屋の中で帽子をかぶり
白髪が綺麗に混じったその男
左には妻が持たせたであろう弁当が
読んでいる本はわからぬが
休日に図書館へ着て学ぶその姿勢は
足りているようで足りていない
その狭間でバランスを取っているようだ
そしてその体は緩やかな終わりをまるで楽しんでいるようだ
2024/1/13
「平和の歌」
オリーブの葉が揺れている
光が葉からこぼれて
白い1羽のはとが
この地球(ほし)を飛んでいく
私達をつつんでく
2024/1/13
2024/1/13 朝4時30分 満天の星
眠れる森の美女
あちこちから鳥の鳴き声が聞こえる。
深い森のその中で日差しが差し込むその中で。
そこには一人のプリンセスがいて
僕にこう語りかける。
朝の夜に不思議な森に迷い込んだ。
そこで踊りましょう。
あなたと私の。
二人だけの時間。
手を引かれそれは優雅でただただ優雅で
僕はそのプリンセスに言葉を失い見つめるだけ
あゝ終わってしまう
なぜこんなに美しいのに
こんなにも満たされた時間はないのに
せめて最後は盛大に
観客は宇宙ににはためく星々
僕らはただ軽やかにワルツのステップを踏んで。
2024/1/13 朝4時7分 満天の星
くるみ割り人形
朝早く目が覚めてしまって外をぶらつくときは決まってこの曲をかける
くるみ割り人形の空気は甘いスイーツのような味がして
誰もいない道や車のない道路はどこか僕を特別な気持ちにさせてくれる。
いつもの道はやはり変わらなくて僕はまた今日もいつもの道を歩く。
朝4時の運動公園にもやはり人がいて特別で、いつもと変わらない朝を皆静かに過ごしている。
僕にかけられる言葉は音楽以外なく空にきらめく星々に照らされて落ち着かない朝をどうにかやり過ごそうとする。
恋をするといつもそうだ。
何にも手がつかなくなり、落ち着かなくなり、どこかどこでもいいどこかへと歩きたくなる。
恋と言うにはまだ若いそれはそれは果たして希望か。僕の心に問いかけても歩きたくなる衝動が返ってくるだけ。
僕のこれからの道がいつもの平凡な道が何やら動き始めるその時に
僕はただひたすら歩く
まだ夜とも朝とも言えないその時に
僕はただひたすら歩く
「卒業式」
別れか始まりか。
それぞれの道に君たちは旅立つ
いくつもの道がそこから広がっているのが見えるかい
それが束となって
歌となって今きみたちをほめたたえる。
おめでとう。
「仏像」
頭は丸く
お手々をあわせて祈ってる
古きほのかな木の香り
ほこりがかぶったその姿
あゝ祖父の思い出よ
2024/1/11
「私の恋」
くるおしいほどの恋をして
忘れたつもりでいたけれど
久しぶりに
開いてみれば
心はまだあの人のものだった。
外見は成長しているけれど
時間は長く経ったけど
縛られし我が心
とまどう私が愚かに見えて
自分の価値が下がるようで
今夜もそっと目を閉じる
2024/1/11
「そんな人にワタシハナリタイ」
背伸びしすぎず
かと言って卑下もせず
格好もつけず
たまに甘えて
可愛がられる
そんな人にワタシハナリタイ
2024/1/11
「たがえゆきし人よ」
見ず知らずの
人がまた一人また一人と
すれ違う
なんの興味も抱かず歩きます
通り過ぎゆく人の中
人がまた一人また一人と
すれ違う
「創造せしもの」
ある日神が気まぐれで
ある日物を作ったとさ
すると人はそれを見て
あーだこーだと語ります。
理屈をつけて話します。
でてくるでてくるいろんな解釈
神はそれを見てこう言った、
あゝ楽しや人の世よ
「戦争」
ある日銃を持った兵隊が言ったとさ
「僕はいっぱい殺してきた。だから何も感じない」
兵の前に立つ子供
「僕の母さんうたないで」
兵隊は銃を持ち
母と子をうちました。
「僕は何も感じない」
2024/1/11
「街の珈琲屋さん」
カウンターには常連のおじいさんたちが
政治の話や世間話で盛り上がり
テーブルにはおばさんたちの会話が
とめどなく流れる
ふと僕が入ってみれば
もうそこはまごうことなき珈琲店
カレーのおいしい僕の街の珈琲店
2024/1/11
「おじいさん」
歩くのがおぼつかないおじいさん
今日も道路を渡ります
自動車の切れ目を見て
よちよちと
よちよちと
それは道路の反対側にある一本の花に水をあげるため
反対側に渡ると大切になで
水をあげるおじいさん
だからね
だからね
私は生きてるのよ。
元気いっぱい花を咲かせて恩返ししてるのよ。
帰りもおじいさん。
よちよちとよちよちと
自動車の切れ目を見て歩きます
私の一番のファン。
私のおじいさん。
2024/2/20
「金色時」
夕暮れになる前の空
金色時
空が黄金輝くとき
家々と雲を遠目で捉え
枯れ草と金色と朱色の混じった光を浴びて
ノスタルジックに駆られる
心地よいハーモニー
近代的なビル街もこの時はホット一息
なんか嬉しい。
なんか生きてる。
そんな感じ。
のほほんとしたこの時間。
2024/2/20
「歌唄い」
あ〜と声を震わす
私が歌います
この言葉をあげる
貴方にあげる
そこでこれを見てるお前。
お前だよ。
受け取れコノヤロー!
「頑張れ」
と私は唄う。
2024/2/20
「僕は透明人間」
僕は透明人間。
はじめは色々悪いこともしたけど
もうあきた。
今は。
今は。
だから僕は本当の透明人間。
この感情を持つから
本当の透明人間。
2024/2/20
「機械のダンサー」
腰をフリフリ
踊るのよ
夢と夢をつなぎ合わせて
ほどけちゃいけないわ
悲しくっても
辛くっても
だって私はダンサー
機械だらけの不思議な世界で踊り続ける
私はダンサー
ほら謳歌する音が聞こえる
機械が崩れる音が聞こえる
私はダンサー
2024/2/20
「僕賛歌」
僕の背中に街が溶ける
坦々と時が流れる音がする
一人の悲しさも今なら少し紛れる気がする
なぜなら時間が僕に寄り添ってくれるから
この蒼く気だるげな空気もまた。
これは芸術
僕と時間がつくる芸術。
僕の世界とこの時間が
悲しい音楽が
今だけのものなのだから。
2024/2/20
「Lazy Sunday Morning」
日曜の朝のリネンのシーツ
白い光がベッドルームに満ちて
眠たげな目をこする
なにもない日曜の朝
ずっとねていられるこの幸せ
この白い世界に包まれていく
ぜった〜い離さないんだから
そう言ってこの時間を抱きしめる
2024/2/20
「梅」
まばらに
上品に
梅が咲きました。
昔話のような
祖母のような。
梅が咲けば
御殿様とお姫様がお見えになります。
2024/2/20
「赤」
踏切の音がなっている
雨が僕を打つ
周りの車は僕の気も知らずに通り過ぎる
車の信号、電車の信号
全部が赤
僕の信号も赤になって
2024/2/20
「川の流ほとりにて」
僕のあらゆるところから
湧き出る黄金の泉より流れる水を
両手で大事に大事に受け取って
僕と世界の狭間で
受け取ったものを
丁寧に丁寧に書き写していく
描き写していく
それはやがて君の川の流れに乗って
辿り着く場所にたどり着く。
それはやがてその一雫が色を変え
この地の上を流
そんな嬉しいことはない。
2024/2/14
「駅の人間模様」
高校生が帰宅の途につき始める
トットッと
太ったおじさんが仕事の帰りに
ドッテドッテと
おばあさんが病院の帰りに
テットテット
入り交じる人の中
色んな人が歩きます
行ったり来たり
駅の改札を抜けて
この人間模様。
2024/2/13
「コーヒーミルク」
甘くて温かいコーヒーミルク
淡く湯気のたつコーヒーミルク
向こうの景色がぼやけて見える
ほらできましたよ
冷めないうちにお上がりなさいな
2024/2/13
駅のホーム
老夫婦は旅先の話を
若者は髪をいじりこれからどこへ向かうのか
おばあちゃんはニコニコしながらホームの椅子で
陽の光をぼんやり浴びて
皆電車を待っている
ほらほら。来ましたよ。
僕らの電車が来ましたよ。
駅のホームに電車が来る。
2024/2/13
「スケッチ」
青空
おなじみの家々
体育館
このイヤホンから流れる音楽
使い古されたシューズ
誰かが私を描写する
そのほつれた糸のその先まで
自転車を押して
私の視線の先に
青春の雲
2024/2/12
「フロントメモリー」
私の首筋を風が吹き抜ける
足が弾む
景色が新しい
いつもの通学路の道端の旗が揺れてる
あ、アイスが食べたい
競争ね
あそこのコンビニまで
負けたほうが奢り!
足が弾む
空気が新しい
2024/2/12
「綿あめ」
綿あめを
指先ほどに
ちぎってちぎって
青空に
それは山々を
大地の雄大さを
空気の穏やかを
私の心の。
空にプカプカ浮いている
私の綿あめ
2024/2/11
「工場の煙」
青い空に白い煙
清々しかな
この空の
流れる雲の
香る山々の
あゝ白い煙
2024/2/9
「暖かな昼下がりに」
空気がポロポロと落ちていく
悲しみをおびて泣いている
この暖かな昼下がり
どうしてそんなに悲しいの?
ぼんやりとした午後の昼下がり
空気がポロポロ泣いている
2024/2/10
「松ぼっくり」
松ぼっくりが
コロコロと歩きます
すべすべもちもち
テッコテッコ
コッテンと転んでまた起き上がる
おじいさんとおばあさんは
ポッカポッカ
おちおちしてられません
陽の光に包まれて
3人揃ってテッコテッコ
2024/2/10
「河川敷で」
この気持ち
つらくて
抑えきれなくて
嬉しくて
切なくて
張り裂けそうで
今すぐ抱きつきたくて
この気持ち
思わず笑ってキミを見る
それが精一杯で
思わず涙が溢れて
それでもは君は笑顔で
河川敷で。
2024/2/5
「恋は雨上がりのように」映画
小松菜奈のラストの演技に感動と感謝と敬意をもって
「瓦礫の中で」
瓶に写った空を眺めて
この惨めな瓦礫の中で僕の心は澄んでいる
この指の間に光る太陽
今日も寒空の下母と肩を寄せ合って暖を取る
でも惨めじゃないよ
空の神様にお願いしたんだ
2024/2/5
ファイナルファンタジーXIV アバラシア雲海にて
「テイルフェザーにて」
立ちはだかる岩山
一人の旅人はぽつりぽつりと話し始める
それは今夜の霧のように深く
それは今夜の闇のように暗い
一度迷い込めばそこは出ることはできない
だから旅人は向かう
そうと分かっていながら突き進む
己のうちに光を宿すその人を探して
2024/2/5
FAINALFANTASY14 テイルフェザー(フィールドの一つ)を散歩して
「埋め合わせ」
雨粒が見える
澄んだ冷たい空気
灰色の空
しみしみと落ちる雨粒
空虚さがこの世界と混ざり合って
少しマシになる
思わず自分が溶けてしまいそうになって
いっそ溶けてしまえたらと
しみしみと雨が降る
2024/2/5
「日立哀歌」
木枯らしが吹く
遠くの景色に霧がかかって
閉じた街の映画館
そこで買ってもらったメダルに
今亡き祖父を思う
閉じた小さな古本屋
そこで買ってもらった故人の日記に
今亡き祖父を思う
あゝ大煙突の寂しいことよ
オオシマザクラの寂しいことよ
2024/2/5
野口雨情を聞きながら
今は亡き祖父にむけて
「野焼き」
遠くの山々がぼやけて見える
かつての記憶を遡っているから
今日は野焼きもあって
焼ける匂いが心地よくて
畑道を遡るとそこは故郷
我が故郷
2024/2/5
「虹の彼方」
いつもの町並み
通りすがりの人
綿菓子のような雲
こんもりとした丘
四角く整えられた植木
「不法投棄ダメ絶対!」
穏やかな川のせせらぎ
ひび割れたコンクリート
ほら、
2024/2/4
「日常の彼方へ」
白いカーテンが揺れる
ポットにお湯が入って
テーブルの上に醤油が置いてある
ティッシュはさり気なく佇んで
テレビのリモコンはそこにあって
ストーブのあたたかな風が足に当たる
日常の彼方へ
僕を。
白いカーテンが揺れる
2024/2/4
「灰色記念日」
のほほんとした
灰色の世界
ため池の水にチョロチョロと水が流れて
立ち並ぶ木々もホットミルクをすすっている
時間が遅れて流れる
聞こえるのは水が流れる音と木々の息吹だけ
ため池にいた金魚はもういなくなっていた。
遠くに見える山々もただしんとして
不揃いな飛び石をちょんと飛ぶ
2024/2/4
「風車の上で」
風車の上に立つ
そこで風に吹かれる
そして僕は思う
世界の広さを
そして僕は思う
この風の美しさを
そして僕は思う
町並みの愛おしさを
そして僕は思う
故に僕ありと
2024/2/3
「迷い森に」
今迷い森にいる君に
冬の寒空の下雪が降るのにずっとこらえている君に
あたたかな毛布を
ひざ掛けをかけて
温めてあげたい
この手がどうか届きますように
時を時代を超えて
僕の手が
僕は君を思ってる
どうかどうか
故に曇りなき空が見えたら
それはきっと
それはきっと
2024/2/2
「君へ」
僕は知る
すべてを知る
たからといって何がどうなろうか
この僕の愛おしさを
この僕の温かさを
だから君に教えたい
君は君でいて
それでいて美しい
何を知っても
故に君にも教えたい
君がそう君が
それでいて美しい
2024/2/2
「やがておしまいに」
柔らかな汗が滴る
図書館のその本のような眺めは
いちづの希望さえ抱かせる
柔らかに滴る汗
ほがらに
ただほがらかに
ただ刹那に
そして刹那に
僕を乗せて。
2024/2/2
「走って走って立ち止まって」
走る
足早に
会いたい
その一心で
迫る思い
したたたる汗
やがて一匹のひな鳥を見て
僕の指先に
そうして言う
行方知れずの君
それは君
だからひとしきり泣いて
良く見たら独りで
2024/2/2
「冬の酔い」
すべての愛で包み込めたらと思ってるんだ
だから君に言えることはないもないよ
僕が落としたたくさんのものを拾って
拾い尽くしたら
こう言うだろう
好きだよ
そうしてこう言うだろう
ありがとう
故に一人でどこまでも
全盲の人がラジオを聞くように
そこにささやかな明かりが灯る頃
僕は調べを歌う
ここに歌う。
2024/2/2
「修論記念日」
僕の過去のすべてが愛おしくて
狂おしくって
やがてくるおしまいのときに
みんなに感謝できる
そんな日を夢に見て
やはりここで良かった
そう思える日を
お祝いしよう
今日の君に
なんでもない君に
ささやかな今日を
夢は夢で愛して
君は君のままで
だから今日もこのまま
缶チューハイでも開けて
だからここに記そう
君が君を愛した日を
2024/2/2
「かつての僕へ」
君がまだ若かった頃
まだ自分の扱い方もわからなかった頃
そのすべてに花束を送ります
そのすべてを抱擁します
チューして撫で回して
大好きです
大丈夫だよ。
2024/2/2
「陽だまり中で」
ギターをつま弾いて
僕の書斎においてある本たちに
君に
そして僕に
もたらしてくれたものを今思う
光に宙に舞うホコリがきれいに輝いて
でも僕はただギターを鳴らすことしかできなくて
それしかできなくて。
2024/2/2
「恋は雨上がりのように」サウンドトラックを聞いて
「雨あがり」
あまりにも切なすぎる思い出は
でも、二人で過ごした日々は確かで
また、二人で過ごした日々も確かで
だたそれだけで。
「恋は雨上がりのように」を見て
「恋は雨上がりのように」
僕らに。
2024/2/2
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?