短編小説:誰も知らない秘密の女王
煉瓦のおうちを出て、パン屋さんにお買い物。
美しいお花を摘んで包んでカバンに入れる。
家に飾るの。
足はステップを踏んで、香るオレンジ。
夜になったら瞬く星。
みんな私の飾りに使うのよ。
ハイヒールに星降る夜。
そんな夜は何度も見たわ。
贅沢なんてお金がなくってもできるのよ。
それにはね、美しい心と少しばかり神様から受け取れるだけの感受性かしら。
神様は言葉を持たなくて夢で話すっていうけれど、
私は違うと思うわ。
この世にありふれてるの。
それを見つけられるのは私次第。
不思議な感覚
あなたも味わってみる?
それでは目をとじて。
深く深く呼吸をして。
深く深く、頭から思考が消えていくまで。
ろうそくの火はまだ揺れてるかしら。
ほらみえる?
オレンジの煉瓦の家
石畳の街並み
緑の香り
星降る夜の奇跡までも
あなたって愛されてるのよ。
どこかの誰かが夢を語っているのを聞いたわ
夢を見れないほど打ちひしがれている人にはとてもきついかもね
夢を見る段階にない人へ。
春の心地よい風を浴びなさい。
あなたは言葉をなくすでしょう。
あなたにそれがあるのなら。
どうして夢など見れようか?
そんな今を感じて頂戴。
それがおなか一杯みたされたら、
その余った力をすこしだけ先に広げるの
それが夢よ。
あさましいものと勘違いしないで頂戴。
息をするようなものなの。
そういうものなの。
石鹸で体を洗って
湯船につかって
石鹸のにおいの体を
ろうそくの火を眺めながら地球を眺めるの
時間が話しかけてきて少しばかりお話しするわ。
ジャーナリングで書きつづった私の思いがきれいにこぼれていく。
それらは整列して私の腹の底に収まっていく
門兵さんたちがこういうの
「皆さん安心してください、これから先は女王の庇護下です。
安心して暮らせるだけの食料と住む場所を与えましょう」
どこかの難民も貧しい人もみんな大丈夫よ。
ろうそくの灯が小さくなる。
そろそろね。
それではみなさん。
おやすみなさい。
この星の女王はいうまでもないあなたよ。
石鹸とろうそくと緑の香り、煉瓦の家と星々の加護があらんことを。
ほんとうに、おやすみなさい。