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はじめての最後#19

勢いとノリがいいのが私の長所だったのに。
言えないよ。
たったひとこと、おでん食べる?の言葉が。
自分に自信が無いから?
彼の気持ちに自信が無いから?
断られるのが怖いから?
おでんが美味しいかわからないから?
おでん、好きなのか?
違う。
いや違わない。
全部そう。けどさ
どうせ、どうにもならない。
どんなに好きでも、どうにもできない相手だから。
これ以上思い出を作るのは、自分で自分の首を絞めることだから。
理由なんかなんでも良くて、ただ、会いたいだけで。
ただ会いたいだけくらい好きで仕方ないのに。

怖くて仕方ない。
彼が遠くへ行ってしまって、物理的に完全に会うことが難しくなって、それから忘れる努力を始めることと、今のうちに少しずつフェードアウトしていくように忘れていく準備をすることと。
どっちが楽なんだろう。
どっちも恐怖。
これからもしまだ会えるとして、
その時に、これからどうするのか…そんな話題になったら自制が効かなくなりそうで。
今までずっと、期間限定の枠を超えないような会話に留めていたのに。

どんなに好きでも、叶わないことってあるんだね。
今まで結婚を2度したけれど、失うことが怖いことはなかったからできた。
心奪われたら、ケジメをつけて次へ向かった。
不倫とか二重生活って、出来なかった。
その度に人生をグルングルンぶん回したとしても、自分の気持ちに正直に生きたかった。
でも
今の私は、許されない。
本当に自分が望んでいるのかさえわからないのだから。
1回ごとに覚悟を決めて、激動の波に自ら飛び込んできたりすると、次にまた乗りたくなる大波が見えて来た時には
「あんなに覚悟を決めてここへ来たのに?」
「また?」
と、回数を重ねる毎に重くのしかかる。
そもそも、自分で言うのもお恥ずかしいが
いい加減すぎやしないか?お前の覚悟は。
一途と対極に生きるのもいい加減にしろと言いたい。

今だけ魔法にかかったみたいに、
恋に恋しているだけだと思う。
ごはんが喉を通らなくなって、呼吸が浅くなって
胸が締め付けられても。
私だけが勝手にしていること。
彼は私なんかどうでもいいはず。
ひとりよがりな片思いなのだよ。
男は、いつでもどんな男でも、心と身体は別物なのでしょう?
彼がキスをするのは、彼にとっての刺激なだけ。
私が彼を思うようには、思っていないはず。
ココにそう書いて言い聞かせる。
もう、へこたれてきた。
ひと月経って、あとひと月経つと、消える。
次の生理が来た時には、もう彼はここに居ないんだ。
一生の思い出に、大切に仕舞わないと。
おひな飾りを、日が過ぎたらすぐに仕舞う時の焦りがわかるだろうか。
行き遅れるとかいう迷信に怯えて。
あの時みたいに、彼が居なくなったら急いでこの気持ちを畳んで仕舞うことが出来るのかな。
忘れられなくなったらツラいと怯えて。

それにしてもおばあちゃん、
毎度大慌てでおひな様を仕舞ってくれたのは有難いけれど、行き遅れるどころか、何度もどこかへ飛び立つ女の子になってしまいましたぞ。
いや、決しておばあちゃんのせいにしたい訳ではないのだけれど。
尻軽なのは私の責任です。
ただ、クズなりに自己主張するとしたら
「いつも本気」
で生きています。

「あたしのことどう思ってる?」
とか
聞けたら楽になんのかな。
例えばそれで彼が、嘘でも嬉しい言葉を言ってくれたとして、私はそんな言葉が欲しいのか?
嬉しい言葉なら、何を言われても信じられないだろうし、悲しい言葉なら納得してドン底まで悲しむ。
なんてこった。

あぁ、記憶喪失になりたい。
都合の悪いことだけすっぽり忘れてしまいたい。

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