はじめての最後#17
昨日彼と久しぶりに2人で会えた。
あんなに盛大に大泣きして、振られた終わったとドン底の悲劇のヒロインを振りかざしていたというのに。
我ながら呆れる。
そしてまた彼に会える私は、天にも登る気持ちで順調に狂っていく。
たまたまハロウィンだったから🦖の着ぐるみで待ち合わせに向かうと決めたが。
急遽、駅ではなく彼の会社に迎えに行くことになってしまった。
被り物はどうしようかと迷ったけど、もうよる9時を過ぎているし、人にも会わないだろうとタカをくくって決行することにした。
意外にもパラパラ現れる通行人と道行く車に注目を浴びたり、写真を撮らせてくださいと撮影会したりしながら彼がいつ現れるかドキドキしながら待っていた。
「会社でるよー」
のメッセージ
しばらくしたら
「どこ?」
え??前の場所って言ったじゃん。
電話が鳴る。
「前の場所からこうきてこうきて〜」と説明する彼。
「今歩いてるんだ」と私。
↑当然🦖の中で。
「歩いてきたの!?」驚く彼。
「車あるんだけど〜」ゴニョつく私。
「そっち向かえばいい?」と困惑&イラつく彼。
とうとう、🦖は彼を見つけた。
すれ違いざまに
「おかえり!!」ってでっかい声で言いながら飛びついた。
「えええええ!え!なにしてんの!!!」
今思い出しても笑える。
ざまあみろ!
よくも私に10年振りの嫉妬をさせたな。
と心の片隅で思いながら。
彼は一般人が聞いたらまず間違いなく驚かれるような経歴でエリートで。恥をかくことに不慣れだ。
真顔の彼を初めて見た。
オコだなぁ。と思った。
そこへさらに、
「きゃーーーー」転ぶ私。
🦖のしっぽを自分で踏んでバタンと倒れた。
茫然自失の彼。
「手!」と言って初めて彼は我に返り
差し伸べた手を握って起き上がらせてくれた。
爆笑する私に、「なーにしてんのよぉぉぉ」と
ひっ迫する彼の心臓。
だんだんと可哀想になったので
「一旦、脱ぐ?」と聞いたら
「う、うん、脱いで!」だって。
道端で🦖から人間に「ばぁ!」と変身した。
はい、笑えない彼。
笑えて仕方ない私。
記憶に残ったか?秀才よ。
刻め刻め、私のことを、その優秀な頭脳にしっかりと刻むがいい。
「どうすんのぉ、明日会社で🦖いたって話しになっちゃったら〜」不安で青ざめながら真顔で言う彼が愛おしい。
「ごめんね!大丈夫、お行儀よくしてたから」
という私の言葉は届いていない様子だったが。
そんなこんなで、私の愛車がまだ入院中のため、息子の車に乗りこみ、お店に向かったのだった。
しばらく走らせると、ようやく彼も落ち着きを取り戻して「お腹空いた」と疲れた顔を見せた。
この時少しだけ反省した。
いつか思い出した時はきっと笑えるよ、少年!と
思いながら。(反省してない)
聞けば彼は昨日も今日も、朝なんと5時起きで夜は23:00頃まで激務に追われていたらしい。
なんと。
もしかして….
今日のこの時間を作るために?
しかもこんな遅い時間に会うのに社食も食べず。
いや、期待は出来ないが、
でもだけど、他にも理由はあるのだろうが、きっとこの時間も作るのが大変だったはず。
この時ばかりは猛省した。
と同時に…
なんてこと。嬉しくて泣きそう。
頑張ってくれてたんだ。
「駅だったらもうちょっとちゃんと反応できたかもしれない。ごめんね。」
「ホントはあなたとデートなんだからもっとオシャレしたかったけど、コレ🦖のためにスキニー&半袖でスニーカーにしたのよ!あたしすっごい達成感」
って。
今思えば、ごめんだなんて言わせてしまった上に
自己満足を思う存分ドヤる私は、やっぱりダメ女。
そして彼は、結局ちゃんと優しかった。
だいすきが止まらない。
彼の会社で🦖の妙な噂が広まっていませんように。
つづく
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