はじめての最後#7

愛してる男のこと。
来週に面会に行こうと思う。
檻の中での生活は未経験の私には計り知れないものだけれど、男の話しや私調べによると、当たり前だが慣れるまでは大変なものらしい。
下界と離れる時間が増えていけば、その世界でも順応してはいく様子はうかがえる。
男は身内が当てにならない系の人。親兄弟は私の許容範囲外の人であり、これを機に絶縁してもらわない限り私たちの将来はないものと思っている。
面会の回数は、等級のようなもので決まりがある。
その限られた面会回数を、ほぼ私ひとりで使っているが、思いついたかのようにごく稀に家族が使うので、計画が狂う時もあった。
今月は多分3回全て使えるだろう。
男は面会は大変だろうから来なくていいよと言う。これは単なる強がり発言だ。
外から自分を励ましに来てくれることは、絶対的に支えになるから。
前回の面会は、先週だった。
間隔が2週間以上過ぎると、明らかに寂しかったという雰囲気と、愚痴が多くなる。
他の男に恋をしていながら、他の男に抱かれた上で、面会に行っている自分が汚くて言葉にできない気持ちだった。
自分はどうしてこんなに汚い人間なのだろう。
実家の仏壇に手を合わせて、祖父母にいつもありがとうと心で唱えた時、何もかも見透かされている気がして恥ずかしくも涙が出た。
「おじいちゃんおばあちゃんこんな孫でごめん」
運のない愚かな男を愛してしまったと思う。
親に恵まれず、幼い頃からの境遇に打ち勝てたところと言えば優しさと誠実さを手にしたくらいの男。
愛するに値するのは、男の愛あってこそだと思う。
本当に大切にしてくれた。
不器用で典型的なＢ型で豪快に憧れた貧弱で。
寂しがり屋のくせに、干渉されるのは嫌で、
私を他の男から奪った男だけど、その過去がゆえ、
「お前は奪おうとしたら奪われる女」と言い
とても疑り深く、嫉妬深い男。
確かに。
今頃になって男が言っていたように、心変わりしやすい浮気性な女なのだと自分でも思う。
8つ年下という事も手伝ってか、結構メンドクサイ男の要求は、ほとんどを受け入れることができた。
その男と7年間過ごす中で、外に出ずにいた反動は大きいと思う。
男とのセックスは、極上だった。
多分今までした中でいちばん相性がいい。
中でいき全身が痙攣する経験をしたのも男が初めてだった。
ただ、後で聞いたところによると、2番目の夫が黒人だった私に対してのプレッシャーが重かったらしく、付き合い始めはしばらくマカを常用したり怪しげなサプリをインターネットで取り寄せたりと、苦労をしたらしい。
そんなに黒人とセックスしていた女はプレッシャーありますか？
まぁ元夫が黒人だと知ると、男女問わず大体がサイズの件を話題にしたがるのでわからなくもないが。
どちらかと言うと、サイズよりも日本人男性には
キスやハグや声のかけ方などに興味を持って、学んで欲しいと思う。
毎朝「goodmorning beautiful」などと常にあなたは美しいあなたは僕の太陽だという言葉を浴びせられていた私は有頂天だったもの。
ただ、さだまさしの関白宣言のように、
お前がお前はお前お前、と呼ばれて阿吽の呼吸で男の世話をしたがるタイプの女子も、大変多い。
どちらがいい、ではなくて自分がどちら側なのかを知って、合う人と過ごせば幸せなのだろう。

急に彼の話しになるけど
「少しだけでもいいんだけど、会えない？」
と送ってみた。
反応が怖い。

男のことを考えながらこれを書いていたのに
やっぱり彼に会いたいままだ。

送信取消をして
「会いたい！」にした。
しょうもない！自分！

返事は
「今日は無理」
会いたいなんて、言わなきゃよかった。