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#13 賃貸借契約書を取り戻せ!

【前回までのあらすじ】
入居者が家賃滞納をしたため明け渡し裁判をする事になったメルカリ大家イリームだが、未熟な不動産屋で賃貸借契約を結んだ結果、入居者が賃貸借契約書の原本を持っており取り戻す必要があった!


さてどうやって賃貸借契約書を取り戻すか。

私は2年に一度更新料として1万円を貰う契約になっていた為、この1万円を無しにするという口実でアプローチする事にした。

早速入居者のフィリピン人女性に電話をかける。

「ハイ。」と入居者が電話に出る。

「こんにちは。大家のイリームです。ご契約の事でお話がありまして。」と言うと、

「チョット待ってクダサイ。娘に代わりマス。」と言って電話口が娘(日本人)に代わった。

「色々と大変だろうと思いまして、更新料の1万円を無しにしようと思うのですが、賃貸借契約書をお預かりしても宜しいですか?」と聞く。

「分かりました。実はお母さん交通事故に遭って今働けていません。今日はリハビリに病院へ来ています。」と答えた。

「そうだったんですね。10日はご都合いかがですか?」と聞くと、

「大丈夫です。今借りている家ではなくて、もう一つの家の方に来て下さい。」と言う。

何とウチの物件はセカンドハウスとして借りているのである。

「分かりました。」と電話を切り、家賃保証会社のフォーシーズに連絡をする。

「10日に賃貸借契約書を取り返せそうです。」と言うと、

「分かりました。では10日にオーナー様のお宅へ伺わせて頂きます。」と返事があった。


だが前日の9日になって娘から連絡があり、「明日はお母さんリハビリに行かないといけなくなったので、13日の午前10時に変更して貰えませんか?」と言われた。

仕方がないので「分かりました。では13日の朝10時にお邪魔します。」と言って電話を切った。

フォーシーズには10日の朝一に電話をかけ「今日は賃貸借契約書を受け取れなくなりました。13日に来られますか?」と聞くと、

「そうなんですね。あまり時間がありません。13日の午後3時までに私の手元にないと保証が切れてしまいます。また、13日はお伺い出来ません。」と言われてしまった。

何としても13日の朝10時に賃貸借契約書を取り戻し、午後3時までにフォーシーズの名古屋支店に持って行かなければならない。

こんな時だけ私は神様、仏様に祈りを捧げて13日を待った。

当日の朝10時に、入居者が住んでいる家へ行く。私が貸している家のすぐ裏手にある一軒家だ。

フィリピン人の母親と、日本人の娘(高校生)が迎えてくれた。

2階の一室に案内された。

「オオヤサン、コレミテ。ワタシ、ストレス。」と母親が足のレントゲン写真を見せてくる。どうやら、左足の指を骨折してしまったようだ。

「ワタシ、車に轢かれた。犯人は刑務所イル。お金は治療終るまで貰えナイ。今は警察とリハビリ行ってル。」と伝えてくる。

「そうなんですね。この家だけでも住めるようですし、家は一度退去してはいかがですか?また働けるようになったら、契約すればいいじゃないですか。」と言う。

すると「今は働けないケド、ワタシ一年したら働けるよ。そうしたらちゃんと家賃払ウ。時々、あっちの家に行っテ寝てるヨ。」と反論してくる。

「時々使うだけだったら、岩倉駅前のビジネスホテルに泊まればいいじゃないですか。素泊まり3000円ですよ。」と伝えるが、

「ワタシ、ニホンゴワカラナイ。」と言う。

絶対この家だけでも生活出来るのに、なぜ私の家も借り続ける必要があるのか全くわからないのだが、家を退去するように促すとニホンゴワカラナイとなってしまう。

「ダカラ、オオヤサン、1年間ダケ4.5万でオネガイシマス。」

だ か ら 何でいつも私が4.5万であの家を貸せばいいという流れになるんだよーーー!!!何の罰ゲームですかーーー!!?と心の中で絶叫しつつ、

「(気持ちは)分かりました。では賃貸借契約書を預からせて貰いますね。」と言って賃貸借契約書の原本を持ってその家を後にした。

そこから岩倉駅まで10分ほど歩き、電車に乗って名古屋駅へ向かう。

電車に揺られながら、なぜ私はいつもギリギリになってしまうんだろうとか、不動産投資って不労所得じゃなかったっけ?なんかずっと苦労してる気がするんだけど。などと思考を巡らせている内に名古屋駅へ着いた。

そこからフォーシーズの名古屋支店まで歩き、担当者に賃貸借契約書の原本を手渡した。

「ありがとうございます。すぐに明け渡し訴訟をさせて頂きます。」と受け取って貰った。

ミッション・コンプリート…

私は真っ白な灰になった。


危うくフォーシーズの家賃保証が切れて、家賃は払えないのに絶対に借り続けたいという強い意志だけはあるフィリピン人と直契約になる所だった。考えただけでも恐ろしい。

まさに九死に一生の出来事だった。

これよりも酷い例は、神風特攻隊の十死0生ぐらいしか思い付かない。


安心したら急にお腹が減って、フォーシーズ名古屋支店の近くにあるミスドに入ってカフェオレとドーナツを食べた。


近くの席では保険のセールスレディがサラリーマン風の男に保険商品の説明をしている。そんな光景すら微笑ましく思える。


原本は大事だよと心の中で噛み締めながら、ドーナツを噛み締めた。



次回、強制執行と謎の解明

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