Spirit by STEINBERGER XT-2 4弦ベースを改造した記録~始動編~
※この作業記録記事は続編(Spirit by STEINBERGER XT-2 4弦ベースを改造した記録~完結編~|aki426 (note.com))で完結します。
やったので記録を残しておく。
まずは偉大な先達に感謝。この2つの記事が無ければ今回こう上手くコトは運ばなかっただろう。
今回の目的
さて。「なぜ改造したか」という背景などは興味無い人の方が多いと思うので、まず今回の改造の目的。次の2点。
純正ピックアップをEMG製ピックアップに交換する
ピックアップを+18Vで駆動する
結論から言うとどちらも可能だった。
本体部品の調達
まずピックアップはサウンドハウスかEMG公式から通販することで調達できる。
ピックアップの機種は木工工作をすれば基本なんでも取り付けられるんだろうと思うが、もともとの取り付け穴とエスカッションを流用するなら「HB」という機種がポン付け可能だ。サウンドハウスにもEMG公式にも、XT-2に取り付けられたというコメントが寄せられているし、偉大な先達もHBを使用している。
今回下記の画像のようなカラーリングをやりたかったのでブラックモデルをサウンドハウスで、ホワイトモデルをEMG公式から通販することにした。EMG公式の場合アメリカからの送料が60ドルほどかかる。
本体改造のポイント
EMG HBのパッケージには、配線図と取り付け方法の書かれた説明書と、ピックアップ、ピックアップとエスカッションをつなぐネジとスプリング、ボリュームとトーンのコントロールポットと取り付け用のワッシャとナット、ステレオジャック、配線一式が付属する。
これをスタインバーガーに元々ついていた純正パーツと交換していくわけだが、次のような内訳となった。
ピックアップ:EMGのものへ交換。
エスカッションとエスカッションを本体に取り付けるビス:純正のものを流用。
サウンドハウスでEMG製のエスカッションも購入したのだが惜しいことにエスカッションを本体に取り付けるための穴位置が2ミリほどズレていてポン付けができなかった。もしEMG製エスカッションを使いたいなら、エスカッションの穴位置を修正するのが良いと思う(本体の穴をズラすのは難易度が高そう)。
エスカッションとピックアップをつなぐネジ:EMGのものへ交換。
エスカッションとピックアップの間に入れるスプリング:純正のものを流用。EMGのものを使っても問題なかっただろうけど、スタインバーガー純正スプリングの径の方がエスカッションにフィットしていたので……。
配線~ボリュームとトーンのコントロールポット:EMGのものへ交換。これはEMGがはんだ付け不要のシステムを採用しているからで、ピックアップ~本体ジャックの中間に位置するパーツは総取り換えとなる。
ノブ:スタインバーガーに元々ついていたボリュームとトーンのノブは、EMG製のコントロールポットには付かない。よって、別途購入する必要がある。
ダイレクトジャック:純正のものを流用。製造年度によって違うのかわからないが、自分が購入したものはステレオのダイレクトジャックが付いていたのでこれをそのまま使った。
今回ボディに追加の穴あけやザグリ加工をしたくなかったので、基本的に本体側は無加工で全部取り付けたが問題なかった。
なお、ピックアップとその配線、コントロールポットをすべて取り外した後、黒いGND線が1本残る。これは自分の個体ではどこにも接続されていなかった。
テスターを当てて調べたらどうやらこれはブリッジの電位をGNDに落とすためのものらしかった(所有していたFERNANDESのベースギターにテスターを当てたら、シールドケーブルのGND(Sleeve)とブリッジの電位が一致したので、一般的にブリッジおよび弦はGNDに落とすのだろう)。
改造前はなんだか音がよろしくなかったり、ステレオケーブルをつないだとき変なノイズが常時聞こえてきりしたのだが、これはブリッジおよび弦の電位がおかしかったためだったのかもしれない。純正状態でブリッジGND線を正しく接続した状態で鳴らしていないので真相は不明だが……。
もちろん、EMGピックアップへ換装した際にはブリッジのGND線はSleeve(GND)にはんだ付けした。
外部電源ボックス
なお、今回EMG HBへの換装にあたって、9V、18V、または27V電源を用意する必要がある(XT-2純正のピックアップはパッシブだが、EMGのピックアップはアクティブ)。前述の通りXT-2のボディに電池ボックスを取り付けることも考えたが、ザグリ加工をするのが面倒だったのと回復不能なダメージを与える危険を冒したくなかったので外部電源装置を自作することにした。
(ちなみにEMG公式がそのような装置を販売しているのだがとても高い……。EMG ( イーエムジー ) ES-918 EMGピックアップ用パワーサプライ 送料無料 | サウンドハウス (soundhouse.co.jp))
前述の偉大な先達がACアダプタから9Vを供給するボックスを制作していたが、今回はEMGピックアップが18Vに対応しているので18V、またノイズ排除のため9V角形電池2つから電源供給するボックスを制作することにした。
使用したパーツは以下の通り。
ケース:タカチ電機工業 MB型アルミケース MB10-5-7(931円)
電池ボックス:GOTOH バッテリーボックス BB-04W(3078円)
ジャック:SWITCHCRAFT 12B x 2個(940円)
内部配線:1Mあたり70円くらいの導線
電池ボックスはサウンドハウスだともう少し安いが納期が1か月くらいかかるらしく、割高だがAmazonマーケットプレースで購入した。
アルミケースは10cm x 5cm x 7cmだとジャックと電池ボックスを収めて丁度大きすぎず小さすぎずぴったりのサイズ感でオススメである。
外部電源ボックスと本体接続のためにしたこと
外部電源ボックスから本体のピックアップに18Vを供給するためには、本体とボックスをステレオケーブルで接続し、TRSの3つの線のうちRingの線に18Vを印可するのがスマートである。
当然、外部電源ボックス側と本体側とでそのように配線する必要がある。本体内部の配線は基本はEMGの説明書通りで良いのだが、9V電池は使用せず、BATTERY BUSSと本体ダイレクトジャックのRingを直結する。電源ボックスは、本体と接続する側のジャックのRingに18V電源の+を、Sleeveにーを接続し、Tipは出力側のジャックのTipと直結する。
これにより、本体にはRingを通して18Vをピックアップへ供給し、弦振動信号はTipを流れて電源ボックス出力側に接続されたモノラルケーブル経由でアンプなどに入力されるようになる。
なお、先ほど「無加工で取り付けられる」「EMGの取説通り」と書いたが、実際は本体ダイレクトジャックの配線だけははんだ付けが必要だった。EMGのソルダーレスシステムは純正のダイレクトジャックのピンに付くことは付くのだが、本体側のスペースの問題でギボシ端子はとっぱらってはんだ付けしてやらないと収まらない。
結局、ダイレクトジャックの配線は次のようになった。
Tip:トーン用ポッドから伸びてきた信号線をはんだ付け
Ring:BATTERY BUSSから9V電源用端子をバイパスしてきた導線をはんだ付け
Sleeve:トーン用ポッドから伸びてきたGND線と、ブリッジから伸びてきたGND線をはんだ付け(※あとで気づいたがアクティブ化した場合ブリッジのGND線は不要)
結果
で、完成したのがこちら。
実はまだブリッジ側のピックアップがEMG本国で製造中らしく発送通知すら来ていない。ので、ネック側シングルピックアップ仕様。しかもノブが流用できなかったのでノブ無し。
でも段違いで良い音で鳴るようになった。これはベース始めて1か月の耳でもわかる。妙にこもった感じがしなくなり、代わりに音がはっきりくっきり空間に広がっていくように聞こえるようになった。やっぱり自分が出した音が気持ち良いと思えるのは良いことだと思う。改造して良かった。
補足
ちなみに、改造ついでにダブルボール弦ではない通常の弦も張れるアタッチメントを購入し、ダダリオのEXL170に張り替えてみたら弦の感触が劇的に良くなった。購入時に張られていたのはスタインバーガー純正のダブルボール弦だと思うが、特に4弦のタッチがとても良くなって弾きやすくなった。
どうもFERNANDES RJB-380と比べて手が疲れやすく右手の弦移動がしづらい印象だったのだが、弦の問題だったのかもしれない。ダブルボール弦は高いのでアタッチメントというイニシャルコストを払ってランニングコストを抑える、しかもタッチが良くなる、というのは良いことづくめかもしれない。
(なおダブルボール弦を販売しているのはスタインバーガーとダダリオくらいのようなので、てっきりスタインバーガーの弦はダダリオのOEMかと思ったのだが、おそらく違うのだろう……)
あと、ボディ裏側に付いているストラップピンにストラップをかけて立ってベースを構えるとバランスが悪く指版が下を向いてしまう。とても扱いづらいので、外してボディの肩部分に移植するとベースの向きが安定してとても良い。今回の改造の本筋とは外れるが、オススメしたいので追記しておく。
今後の課題
まずノブが無いので適当なノブを買ってきて取り付ける。
ブリッジ側ピックアップが届いたら取り付ける。
エスカッションは白いEMG製エスカッションを購入したのだが前述のとおり穴位置がズレているので、エスカッション側の穴位置修正を試す。無理だったら純正エスカッションを塗装して白くする。
立って弾いたときに位置が悪いと感じるようだったら、ストラップピンアダプタを自作して12フレット~15フレットくらいの位置からストラップで吊れるようにする。
余談
せっかくなので改造に至った背景、動機、個人的なログを残しておく。
2024年4月13日:ギターを弾く友人から『ぼっち・ざ・ろっく』を勧められて漫画全巻購入する。
5月ごろ:ようやくぼざろを読み始める。ハマる。特に廣井きくりにハマる。扉絵がいろいろなバンドのMVをオマージュしていると知りYouTubeで原曲にあたりだす。八十八ヶ所巡礼に衝撃を受ける。廣井きくりのモデルがマーガレット廣井だと知り余計ハマる。というかマーガレット廣井と八十八ヶ所巡礼にハマる。ベースをやりたいと思い始める。
6月15日:近所の楽器屋でFERNANDES RJB-380と入門セット一式を購入する。気合で独学を始める。YouTubeでMutsumiさんの練習動画にお世話になる。なんか練習も続いてるしこのまま行くところまで行けそうな気がしてくる。マーガレット廣井の使用楽器を調べてスタインバーガーを知る。XT-2なら手が届くし別に買ってもいいんじゃないかという気がしてくる。
7月15日:Amazonで購入したXT-2が届く。一通り弾いてみたけどなんかヘン。体が慣れていない以上にRJB-380と比べて音が悪いと感じる。それなら改造してもいいんじゃないかという気がしてくる。
7月18日:外部電源ボックスのパーツがそろったので仮組みする。
7月19日:本体改造用のパーツがそろったので一気に片付ける。
もともと自作キーボードを趣味にしていたこともあって電子工作はそれなりに出来る方だったのだが、ベース始めて1か月でここまで来るとは我ながら恐ろしい。楽器も沼だとベース買った後に気づいたが、沼というよりフタの開いていたマンホールに落ちて垂直落下中という感じがする。
このまま地球の裏側まで落ちてみるのも悪くない気がしている。
生来、ニッチなもの、性能を追求した結果変わった形になってしまったものに目が無く、スタインバーガーはまさに大好物な造形をしていた。いわゆる変形ベースという部類に入るのかもしれないが、自分にはまるでスペースシャトルのように見える。スタンドに立てかけたところなどまるで打ち上げ前のそれである。EMGピックアップに換装することで意図した性能に近づいたかもしれないことが非常にうれしい。
というわけでXT-2のEMGピックアップ換装ビルドログでした。まだ途中ではあるのでそのうち続きを書こうと思います。そのうち……。