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寄稿:MUSICSHELF プレイリスト(2006年夏)

眠れないが、もう空は明るい。
夏の夜明けに聴きたい10曲。

僕のような音楽を仕事にしているミュージシャン(いわゆる)は特に朝決まった時間に出社しなければならないなんてことはないので、いつ寝ていつ起きてもいいというのが前提だ。そして、気がつくと夏の夜明けは早い。もう明るい。しかし自分はまだ眠くない。周りは誰も起きてないであろう。静かだ。夜の静けさとは違う、自分と太陽だけの僅かな時間に僅かながらの贅沢を感じながら、酒に酔うでもなく、音に酔いしれたい。そしてこのまま静かに眠りたい。

Steely Dan「aja」
いわゆる20世紀の名盤。特にこの曲はハードルが高い。演奏をするにおいても聴くにおいても。8分近くあるのでコレ聴いてる間に眠ってしまうかもしれない。しかし後半のスティーヴガッドのプレイで覚醒してしまうだろう。そして最後まで聴けば必ずやサウンドドリームの中へ誘ってくれる。

アイ・アバンティとそのグループ「アイム・ショックド」
作曲家・宇野誠一郎は「ひょっこりひょうたん島」に代表される子供向け番組の作品などが有名だが、根底には実験精神とユーモアに溢れており、この曲は大人向けというのさえ超越してあらゆる人類に対して投げかける音の塊である。興奮して眠るのを諦めてみるのも一つの手だろう。

Janis Ian「Will You Dance?」
70年代「岸辺のアルバム」という名作ドラマにおいて日本でこの曲は有名になった。その発見されたシンガーソングライターは実に誠実な方だと想像する。背筋を伸ばさないと歌えない潔さを保ちながら、人は時に悪いこともする、しかしそれも赦すという豊かさが広がっている。安らかに。

Midnight Cowboy (Original Motion Picture Soundtrack)「Fun City」
「真夜中のカウボーイ」のサントラはやはり真夜中に聴きたいわけですが、中でもこの曲は明け方、つまり今回のテーマのテーマ曲のようなもので、優雅なストリングス、どこまでも転がっていくピアノ、そして後半から出てくるトランペットがベタながらもたまらない展開であります。

Michael Jackson「Lady in My Life」
寝る前に世界で一番売れたアルバムは?などとクダラナイことを思いついて眠れなくなったら、これを聴けばいい。そしてこのアルバムの最後の曲を聴きながらマイケルの人生に本当にレディーは必要なのかと、これまたクダラナイことを考えながら眠ればいい。

松田聖子「Misty」
このアルバムが発売されたのは83年の12月で夏の夜明けではないのだが、20年以上経った今はそんなことよりも、このアルバムの世界を季節関係なく味わうべきだろう。そして夜明けに聴くべき曲はデビュー4年目の不倫の歌。松本隆の詞、井上鑑のサウンドが素晴らしい。

坂本龍一&カクトウギ・セッション「ニューロニアン・ネットワーク」
まさに夏真っ盛りなアルバムなわけだが、夜明けに合うのはラストのこの曲。細野晴臣のお蔵入りの曲を坂本龍一がカヴァーした珍しいケース。シンセ、エレピ、ピアノが溶け合う坂本ワールドはまさに楽園そのもの。涼しいです。

Prefab Sprout「Nightingales」
POPSで全曲好きで何年も聴いてる数少ないアルバムの一つ。看護婦のことを指してる曲ではないのは何となく想像出来ますが、難解な英詞なんであって意味はわかりません。しかし非常にいい曲なので、歓びとやらに浸れてくる音楽の力を感じながら眠ることにします。

RATN「あともう一回だけ」
朝陽が降り注ぐ中で鳴り響くというイメージにピッタリであろうこの曲は、朝が来た、今日という日を迎えられたという小さくて大きな喜び、幸せ、自然との対話、他者への意識、つまり「あともう一回だけ」何をしてほしいかは、あなたの気持ちにゆだねられている。

Riow Arai「I Dine At Daybreak」
夜明けに食事すること、いわゆる食事ではないかもしれないし、そこは想像にお任せするとして。兎に角、日本の茶の間でTVを観ながらザワついたところで食事するのではなく、静かな夜明けにテーブルと椅子だけの空間でひっそりと食事するというイメージを朝方まで曲を作ってる難儀な自分が妄想していたわけです。


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