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読み切りファンタジー小説「天使界の涙」

 私の頬を大粒の涙が伝っていく。涙の結晶が固まって天青石セレスタイトになって落ちていく。
 私はとても泣き虫だから、すぐに泣いちゃうの。


「あはは、これマジでウケる~!ひー、ひー」
 私はソファーで横になりながら、テレビを見ている。
 ここは、今、私が居候いそうろうしている光の人間の家。

「ヤバいって、涙止まんね〜、ギャハハ」
 大粒の涙が流れ落ちる。それは、天青石になって床に落ちる。

「あのさ」
 この家の主人が私を呼びかけた。

「あんたの涙、石になるから、ちゃんと掃除してくんない?」
 この小さな賃貸の家の主は、ほうきとちりとりを持って、私を睨んでいる。

 人間は、小さなことにこだわる。だから、争いが絶えないんだね。
 私はまだまだ人間のことを知らない。まだ半人前の天使だから、仕方ない。
 ま、別に、人間のこと知らなくてもいい。

「仕方ないでしょ。私は天使なんだから。私の涙は貴重なのよ、知らんけど」
 ソファーに横になりながら、私はポテトチップスを袋を持って口に流し込む。

「あんた、いつまでここに居る気なの?」
 この家の主人は、床に散らばった私の涙の結晶を、ほうきで掃きながら聞いてきた。

「さあ?チビハゲの長老が、もういいって言うまでじゃない?」
 答える為に、わざわざソファーから身を起こすことに躊躇ためらいを感じて、私はそのままの姿勢で答えた。
「もう!なんで、私が光の人間なの?別に悪魔と戦いたいわけじゃないし、仕事忙しいからそんなことしてる暇無いし、彼氏欲しいし」

 家の主人は、残念ながら、真面目な子なんだ。休日は、眼鏡をかけて推しのYouTubeライブを見ることだけが幸せ。そんな子が、光の人間だなんて。私は全く信じられない。
 でも、きっちり掃除•洗濯•料理は、文句を言いながらもやっているので、私はとても同情してしまう。

「悪魔に勝つ為に、あんたが選ばれたんだから、泣き言なんて言わないの。やるしかないんだから。あんたの働き一つで、この世界が光に包まれるか、それとも闇に包まれるか決まる。今、決めなくちゃ。不安な自分の心と向き合って、暗闇を光に変えなくちゃ」
 私は久しぶりに長いセリフを言ってあげた。

 でも、家の主人は全く聞いていなかった。推しのライブが始まったようだった。

 仕方がないので、私はソファーに深く座り直して、お笑い番組の続きを見ることにした。

 私の天青石セレスタイトは、誰にも知られることなく、私の胸のうちへ。

 天使と悪魔の世界を二分する大決戦まで、残り僅か。
 人を見て、私はそっと涙を流す。

 それは、この世の未来を案じているのか。それとも…

 私はテレビの前で、腹がよじれるほど笑う。
平和な日を守るために、私たち天使は今日も戦うんだ。


おしまい。

◀︎前回のお話


 大橋ちよさんに、天使界の任務のイラストを描いて頂きました🎉

 ちよさんには、前もイラストを描いてくださって、作品のイメージを分かりやすくしてくださいました。

 今回も、天使とはこんな子だったんだと私が感心してイラストを眺めていました。

 早く書いてイラストを使わせて頂きたかったのですが、遅くなりました。

 大橋ちよさん、イラストを描いてくださって、誠にありがとうございました✨

いつきさんの元気印

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