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クリスマスに働くディズニーキャストがゲストにマウントを取られた話

シンデレラ城ミステリーツアーを知っているだろうか?
若い方はご存知ないかもしれないが、20年ほど前のシンデレラ城はウォークスルー型のホラー系アトラクションだった。
分かる人は分かる、メダルが貰えるアレ、剣で倒すアレだ。

20年ほど前、私はそのシンデレラ城ミステリーツアーのガイドをしていた。
ディズニーランドが好きだったし、「ディズニーランドのお姉さん」というステータスがとても気に入っていた。

今はどうか知らないが、当時のアトラクションキャストは狭き門の花形だった。
中でもミステリーツアーはキャストのスピール(台詞)量が膨大で、自身の力量が試されるやり甲斐のある職場だった。

20年前の事だ、セリフさえほとんど忘れてしまったのに、毎年この時期になると思い出すワンシーンがある。

シンデレラ城を回るツアーは確か定員20名弱だったように思う。地下一階を探検した後にエレベーターに逃げ込んで、そこから2階に上がるながれなのだが、事件はクリスマス当日のエレベーターで起きた。

「お姉さんだけ、1人ですね」

扉が閉まって動き出したエレベーターの中で、そう言われた。

お姉さんだけ1人?とは?
薄明かりの下で改めてツアー客を見渡す。
カップルカップルカップルカップルカップル
カップルカップルカップルカップル、私

あ、私だけ【独り】ってことですか!?

咄嗟に何と返したのかまでは覚えていない。
多分、そうですね!とか、クリスマスですね!とか、面白みのない返しをしたんだと思う。

悲しかったとか寂しかったとか悔しかったとか、そういうわけではない。
クリスマスにディズニーで働くことを誇りに思っていたし、たくさんの人の楽しいクリスマスに貢献できれば嬉しいという気持ちで働いていたし、何より仕事中だから1人なだけで普通に彼氏はいたし。

ただ、忘れられないのだ。クリスマスのシンデレラ城の密室で発生した、謎のマウント事件が。
あの日、あの女性はそれを私に言うことで何がしたかったんだろう?
クリスマスのディズニーデートで心が満たされているはずなのに、キャストに意地悪を言いたくなってしまったその心とはなんなのか?

20年経っても答えは出ないままだし、きっとまた来年も思い出すのだろう。

今年のクリスマスも終わろうとしている。
クリスマスに働いたディズニーキャストの方々には心からお疲れ様を言いたい。

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