短編小説🍸映画BARローマの休日(10)
彼女と男のやりとりをまとめると、こうだ。
女優マニアの彼女は、映画BARに来るたびにキャラ設定を変えていて今は「内田有紀」なんだそうだ。
そしてダースベイダーだった男と知り合ったときは「吉永小百合」だったらしい。ほとほと、突飛なことを思いつくものだ。彼女らしいといえば彼女らしいが。
つまり僕は奉還町の吉永小百合と2晩もともにしたことになるのか…。光栄である。などと一人ごちでいると、元ダースベイダーが彼女に向き直った。
「では、今日は、さゆりさん、とお呼びしますね。」
「いえ、先ほども言った通り、今日は“ゆき”なんです。」
と彼女は譲らない。酔っている僕は(どっちでもいいじゃないか)と内心思いながら、紅の豚に口をつけた。ほのかに酸味のある味わいで、つい
「うまい」
と声に出してしまった。
「ザクロの実を入れてあるんです。」
とマスターのとっきーが教えてくれる。ウォッカベースになっているようで、アルコール度数は高めだ。ほんのり身体が熱くなってくるのを感じる。
今夜も何か起こりそうだ。僕は引き続き、元ダースベイダーとゆきの話に耳を傾けた。
(11)へつづく
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