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ボールがラケットにくっついちゃう人 ウィンブルドン#2
前回の記事「ウィンブルドン#1」の最後に、この人について書きたいが、4回戦の結果を見て決めようと言いました。それからついでに今大会、錦織くんを2回戦で破ったオーストラリア人についても少し触れます。
二日がかりのフルセットマッチ
最後の瞬間、私はウィンブルドン公式アプリの実況ラジオを聴きながら、ライブスコアを凝視していました。そしてポーランドの24歳、フーベルト・フルカッチュの名前の右横に「✔」のマークがつくと、思わず拳を握りしめ「よし!」と小躍りしていました。
ロシアのダニール・メドヴェーデフ(👇写真:世界ランク2位)にフルカッチュ(通称フービー:世界ランク18位)が勝ったのです。
この試合は第4セットの途中で雨により中断され翌日に持ち越されました。そして翌日試合が再開されるとフービーは第4セットと第5セットを連取し勝利しました。ところでスタッツ(STATS)といって試合のデータを示すものがあるのですが、その内容を見てみると…
左の数字がフービー、右がメドヴェです。詳しい説明はおそらく退屈なので省きますが、要するにこれだけ見ると右のメドヴェが勝ったように見えるのです。どういうことかというと、本当に重要なポイント、つまり勝敗を分けるポイントをフービーは獲ったのだということです。だって総獲得ポイント(一番下の行)ではメドヴェが6ポイント上回っています。しかし勝ったのはフービー。ここがテニスの面白いところです。
負けるとつれないあの人
以前、全仏オープンの記事の中でこのメドヴェーデフがいかに自由な人かということを書きましたが、今回のインタビューにもそれが表れていました。この人勝った時はめっちゃしゃべるんですが、この日はあきらかにつれない。キッと前方を睨みつけるような表情で、最低限の言葉でしか返答しません。それでもなんとか話を引き出そうとする記者に対してもやっぱり短い言葉で返し「はい、次!」みたいな雰囲気でなかなか隙を見せません。そして記者の質問が途切れて司会者が「ではそろそろ終わりましょうか」と言いうやいなやサッサと席を立ち引き上げていきました。負けたのですから当然かも知れませんが、これ程はっきりした人も珍しいと思います。メドヴェらしい会見でした。
2018年の京都で…
毎年冬に京都で行われる「島津全日本室内選手権」という大会があります。(注:上の写真は京都ではありません)男女のシングルス・ダブルスがあるのですが、男子に関しては2018年まではATPチャレンジャーツアー(下部ツアー)を兼ねており、優勝に絡む選手のランキングが大体100位前後という大会で、私は2012年から毎年足を運んでいます。そして2018年にこのフービーを初めて見たのです。
見た目はひょろっと背が高く、少し内またでぺたぺた歩いて、なんかアルパカみたいな選手だなと思いました。(そう、あの高地に住む動物です)しかしプレイを見て驚きました。まずサーブがすごい。そして、サーブが速いだけの選手はいくらでもいるのですが、ストロークが他の選手とは違いました。何というか…
ボールがラケットにくっついてる!
この感覚はわかる人には分かると思うのですが、テニスはラケットでボールをはじき返すスポーツですから、もちろん実際にボールとラケットの接触時間はほんの一瞬です。しかし我々素人とプロの決定的な違い(技術的な)はここだと私は思っています。(もちろん他にも違いはいっぱい、挙げればきりがないけれど)そのプロが集まる大会の中でもこの人はラケットとボールの接触時間が特別長いと感じました。これを「ボールを長く持てる」と表現することもあります。
そしてもう一つは「スケール感」です。これも説明が難しいのですが、「スケールがでかい」などとよく言いますが、その点でもこの人は特別でした。過去にこの大会で見かけて「スケール」を感じた選手がもう一人、日比野菜緒さんです。確か2012年頃だったと思います。
実はその大会で彼は優勝しませんでした。準々決勝で、優勝したジョン・ミルマン(オーストラリア)にフルセットで負けています。そのミルマンに決勝で敗れたのが同じオーストラリアのジョーダン・トンプソンです。
錦織くんを破ったオージーって?
現在27歳のトンプソン。実はミルマンやこのトンプソンらオージー勢は京都チャレンジャーの常連で私にとってはめちゃ馴染みのある選手たちです。ミルマンは確か2回優勝しています。ただ正直あまり印象に残る選手ではありません。ミルマンは粘りが身上、トンプソンはネットプレーが好きなんだな、という感じでした。それでもミルマンが2018年のUSオープンでフェデラーを破った時は飛び上がって喜びました。なんせ彼らは「うちの子」みたいなものですから(笑)。
話が少し逸れましたが、今回ウィンブルドンで錦織くんはこの世界ランク78位のトンプソンに負けました。トンプソンは1回戦で第12シードのキャスパー・ルード(ノルウェイ)を番狂わせで倒した勢いがあったのでしょう。しかし3回戦であっさり負けています。
始まりました!
この記事を書いている今、ちょうどフービー対フェデラーのQF(準々決勝)が始まりました。互いにサービスをキープして1-1。今大会のこれまでで一番ドキドキする試合です。ここまで読んでいただきありがとうございました。