最後に何を食べたいですか?
「明日で地球が終わるって言われたら、何が食べたい?」という話を今まで結構してきているのですが、単に「何が一番好きな食べ物?」の言い換えにだったんだなと思いました。**
青山ゆみこ『人生最後のご馳走』(幻冬舎、2015)
この本は淀川キリスト教病院ホスピス・こどもホスピス病院の「リクエスト食」という取り組みについての取材をもとに構成されています。
週に一度、管理栄養士の方が患者さんの食べたいものや量などを聴いて、その要望や体調に合わせた食事を出してくれるという。掲載されている写真を見ると、器も料理に合わせてあって、病院食という感じは全くせず、小料理屋さんかレストランかという感じです。合わせてお酒も出してもらえるのかなーと、思わず考えてしまうくらいです。
義父が昨年末に倒れて、病状は回復しましたが、いわゆる寝たきり状態で、療養型の病院に入院中です。今は、普通食に戻してもらいましたが、最初は流動食、つぎに刻み食という状態でした。この緑色のものはブロッコリー?、ベージュ色のものはお魚??といった感じで、仕方がないとはいえ、食べる喜びは皆無だなぁと衝撃を受けました。
また、何年か前にくらやみ食堂というイベントで、目隠しをされたまま、コース料理を食べるという体験をしたことを思い出しました。これが驚くほど、何を食べているかわからない!
飲み物でさえ、基本的にワインであることは分かっているのに、周囲の人たちと「赤ですよね?」と確認し合う始末。嗅覚ではなく、予想以上に視覚で美味しさを認識していたんだなと分かりました。
この本のホスピスに来て、食べられるようになって、病状が回復して、老人介護施設に移った事例も紹介されていて、やっぱり「食べる」ことは、単に栄養を摂る以上の意味があるのだなと感じます。
このホスピスでは、「リクエスト食」の時だけでなく、通常でもいくつかの中から選べるようですが、このような病院に入れる可能性は現状では、かなり低いことを考えるとモヤモヤするというのが正直なところです。
当時、寮住まいの弟が、帰省の最終日に決まって“白いご飯、アジの開き、具沢山のお味噌汁”を食べさせてもらっていて、それを「また地球最後の食事を食べてる!」と笑っていたのですが、彼は最期にも、その食事をリクエストするのかな…。
いろいろと考えさせられる一冊です。