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トイレは私を王様にしてくれる場所

いつ聞いたのか。誰から聞いたのか。全く覚えていないのに、行動だけが染み付いてしまったことがある。

3個並んだトイレの個室がすべて空いていたら、あなたはどこに入りますか?



「真ん中のトイレに入る人は、王様になる人なんだよ」

その発言を間に受けた子ども時代、真ん中の個室に入ることが習慣となっていた。

幼い私は、王様になりたかったのだろうか。真ん中のトイレに入れば、王様の器になれると信じていたのだろうか。

大人になった現在、ちょうど3つ空いているトイレの個室に出会った。やはり今でも、自然と真ん中を選んでしまう。

そのトイレには縁があって何度も立ち寄るのだが、大体3つとも空いている。だから、毎回真ん中に入る。

ふと先日、たまには右側に入ってみようと王様の道から逸れる行動をした。するとどうだろう、真ん中のトイレには無い暖房便座が付けられていた。

寒い冬にヒヤリと冷える便座。全ての個室がウォシュレット付きではないと思っていたのに、設置されていないのは真ん中の個室だけだった。

王様になるためには、お尻の冷えを我慢しなくてはならない。

果たして、私は今でも王様になりたいのだろうか。

王様には別になりたくない。でも、なぜか今でも冷たい真ん中の個室に入ってしまう自分がいる。


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