「ミッドサマー」
私には映画好きの弟がいる。
彼はアリ・アスター監督の
「ヘレディタリー 継承」を繰り返し見ていたので
「ミッドサマー」も見ただろうなと思い、
感想を聞いてみた。
すると、
「みんな不幸になるだけ」
「精神が不安定になるからやめとけ」
と意外にも強く止められたのだった。
止められると見たくなるのが人間の性である。
しかし、私が「ミッドサマー」に抱いたのは、
全く逆の感想だった。
⚠️以下、ちょっとネタバレあるかも⚠️
これって、ハッピーエンドじゃん?
主人公・ダニーには精神疾患を持つ妹がいる。
そして妹のことでしょっちゅう彼氏に頼ってしまうことを悩んでいた。
一応彼氏の方はそれを負担に感じ、
もう長い間ダニーと別れることを考えているが
なかなか踏み切れずにいる。
彼氏と仲間たちはダニーのことを
裏では「めんどくさい女」扱いしている。
そんな中、ダニーの家族が
一家心中を起こしてしまう。
ダニーは身も体もボロボロで、
頼れるのは彼氏ただひとりという状況。
しかし気晴らしにパーティーにいってみると、
彼氏と仲間がスウェーデン旅行に行く話で盛り上がっているではないか!
は?そんなの聞いてないんだけど?
ていうか今彼女を置いて海外行くか!?!?
「じゃあ……来る?」
そんな感じでダニーはスウェーデン旅行に同行することになった。
彼氏と仲間たちにとって
ダニーは無理やりついてきた邪魔者。
ダニーもなんとなく感じ取っているのか、
「あっ……私はいいよ」と遠慮ばかりしている。
ああ、この感じ、私も知っている。
新学期のクラス替えで友達が誰もいなかったときのいたたまれない気持ち。
人数が余ったからとグループを組まされた相手の不本意そうな態度。
わかる、わかるよ、ダニー。
祝祭の村では、
ただ村の倫理に身をゆだねればよい。
人は生きていく中で
物事を選び取っていかなければならないが、
それに疲れてしまうことがある。
そんな時「必要なものがすべて用意されている」というのは何と甘い響きを持つことだろうか。
そういうところが、カルトだったり特定の思想に傾倒するときの入り口なのだろうなと思った。
ダニーは祝祭を通じて
自分の痛みを分かち合ってくれる仲間に出会う。
そして自分を大切にしない裏切り者には死を――
あれ?これ、ハッピーエンドじゃない?
でも怖いのはここからで、
映画の中で描かれる祝祭はほんの一部。
これからダニーに何が起こるのかは、
誰も知らない。
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