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1万時間。部活で流した汗は無駄なのか?

co-stepの林です。僕は陸上競技のアスリートとして部活を10年間本気で努力した。1万時間の法則はアスリートは関係ないのか?その時間は無駄だったのか?スポーツとは無関係の広告・マーケティング業界で働いて10年間。現在co-stepという会社を経営していて感じる「スポーツ/部活」と「仕事/ビジネス」の関係性について考えてみた。

中高生の約70%は運動部に所属している

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※参照:ベネッセ「放課後の生活時間調査」https://berd.benesse.jp/berd/center/open/report/houkago/2009/soku/soku_14.html

中高生の約70%が運動部に所属し、毎日約2-3時間をその競技スキルのアップのために時間を費やしている。これを大学まで続ければ10年間で1万時間を超える。僕もそのうちの一人だ。小学5年生から始めた陸上競技を大学2年まで約10年間続けた。僕の学生生活の中心は陸上競技だった。アスリートとして結果を出すためには何でもやった。毎日8時間睡眠、栄養バランスを考えた食事、恋愛は少々、グレることなく、模範的な学生だった。

陸上競技を10年間。1万時間の汗を流した学生時代。

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そんなスポーツ中心の学生生活を送っていた僕は、中学時代は3種競技Bという種目で岡山県1位、中国地方1位だった。高校は岡山一宮高校に進学しマイルリレーで岡山県3位、高校2年時に父の最後の出世競争のため東京へ転勤となり、東京高校に転校した。東京高校ではチームとしてマイルリレーで全国7位、全日本選手権に出場したが、個人では8種競技で東京都2位、南関東6位という何とも中途半端な成績しか残せなかった。

僕が陸上競技を通して学んだことは「結果を出すためにはステップがあり努力しないと叶わない」ということだ。当たり前だけど、意外とできない大人も多い、とても大切な姿勢を学ぶことができた。「楽」をして出た結果に意味はなく、達成感もない。辛いけどそれを乗り越えたときの達成感や感動を味わった瞬間に「楽しい」と感じる。「楽」という同じ漢字でも僕は「辛いけど楽しいと思える道を追求したい」ということを学ぶことができた。

マイナースポーツでは食べていけないという事実。

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そんな陸上競技を僕は、大学進学後も続けることになった。スポーツ推薦も取れず一般入試で青山学院大学に進学し、何も考えることなく自然と陸上部に入部した。しかし「これから先どれだけトレーニングを積んでも日本一はおろか、全国大会にも出場できない」と心のどこかで絶望していた。小学校から高校までの8年間、生活のすべてを陸上競技に捧げ、誰よりも真剣に練習に打ち込んだ自負があったにも関わらず、その結果が東京都2位・南関東6位という三流アスリートだったからだ。

そんなことを思いながら陸上を続けていた大学2年の夏。2つ上の兄が就活をしていた影響も受け、将来のキャリアについて本気で考えた。「自分はどんな職業に就き、どのような家庭・生活をして人生を歩むのか」と。すぐにイメージできたのは「陸上選手としての人生は歩んでいない」ということだった。というより周囲に陸上選手として生計を立てている大人がいなかった。

リオオリンピックでメダルを獲った友人でさえ、メダルを獲る直前まで年収1,500万だった。野球やサッカーがゴロゴロと1億円プレーヤーがいるなかで同じスポーツで倍以上の格差がある。

アスリートが競技で収入を得られるのは長く見積もっても10年間。野球やサッカーの年収があれば、競技生活中に数十億以上を貯蓄・投資ができ将来に備えることは可能ですが、陸上競技を通して、マイホームを建て、子どものいる家庭を持つといったちょっと裕福な生活を送るためには、オリンピックでメダルを獲るレベルでも難しいという事実があったのだ。

大学2年の夏。就活を見据えアスリートを引退。

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なぜだろう?やはり本気で部活に打ち込む人からすると「辞める=負け犬」なのだ。多くの批判を受けながら約10年間のアスリート人生に終止符を打ち、陸上競技コミュニティから足を洗った。全く別の世界に挑戦することはとても勇気のいる決断だった。

大学生活のゴールを陸上競技ではなく「就職活動で自分が希望する仕事に就くこと」に置き、「会社で働く」ことをまずは知ろうと思い、ITベンチャーの門を叩いた。これまでとは180度違うビジネスの世界へと一歩を踏み出した。当時は人差し指タイピングをするくらい、ビジネスやITには疎かったため、苦労したがとても楽しかった。

「結果を出すためにはステップがあり努力しないと叶わない」という陸上競技で学んだ姿勢がうまくビジネスの世界でもかみ合った。日中はITベンチャーで働き、夜間は大学で勉強をするという生活を根気強く続けた。

就職氷河期で打ちのめされたアスリートたち

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僕は2011年卒だ。そう、リーマンショックによる戦後最大の就活氷河期を経験した世代だ。「内定切り・就職浪人」という言葉が生まれた当事者だった。僕は幸い、大学2年から事前準備をしていたため、4年4月には複数社から内定をいただき、就活を終えた。

しかし周囲のアスリート友だちは本当に苦労していた。ただでさえ内定が出ない氷河期に、ろくに勉強もせず、キャリアについても考えず、大学生の本分を先送りにしてきたアスリートたちは、みな就職浪人をしていた。

そもそも、アスリートとして社会人を送るという選択をする人はごく稀だった。事実、僕が所属していた青学陸上部を例に挙げると、全日本学生チャンピオンを含む日本トップクラスのアスリートがゴロゴロといたが、競技を続けるか?生活を優先するか?で悩み、約95%は10年間のアスリートとしての努力を精算し、サラリーマンになっていった。

スポーツのスキルは社会では評価されない

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指導者の道に就かない限り「スポーツは規律やチームワーク、努力するプロセスを学ぶものであり、そのプロセスを会社での仕事にうまく生かすもの」というのが常識である。そりゃそうだ「スポーツ自体は仕事にならないよね」ということは、誰も疑いを持たず、当たり前のようにそう思っている。会社のランチで「実は私、学生時代に部活で全日本1位だったんです」と言われたところで「へぇー!すごいね!」以上、終わりだ。

しかし、ビジネスマンとして10年間生きてきて感じることは、10年間の努力は報われるということだ。誰よりも早く朝は出社し、誰よりも遅く夜は残り、休日返上で働きまくり、キャリアアップ、自己成長に集中したこの10年間の努力はしっかり年収に還元されている。それはデザイナーやエンジニア、営業、経理という職種でも同じことが言えると思う。

10年間スポーツに打ち込んだ努力は無駄なのか?

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中・高・大、ひとつの競技で部活に打ち込むとそのトレーニング時間は1万時間を超える。三流アスリートの僕でさえ1万時間を超えている。お笑い芸人の西野亮廣さん、元杉並区立和田中学校校長の藤原和博さんも1万時間の法則を提唱していて、1万時間の努力は、100人に1人という希少性を持ちどの分野でも食べていける確率があがるのだという。

もちろん、ただ1万時間ぼーっと、言われたことを言われた通りに何かを続けるレベルでは意味がないし、社会にはない超ニッチなものを一生懸命努力してもある一定は社会のニーズがあるものでなければ価値は生まれない。

■スポーツの経済価値は巨大である

スポーツの市場規模は2015年時は5.5兆円で2025年には15兆円規模へと成長すると言われている。広告が6.5兆円、コンビニが11兆円と言われているのでスポーツが持つ経済価値がいかに高いかがわかるだろう。

■アスリートの思考回路はビジネスマンと同じ

学生時代の10年間、ひとつの競技を続けてきたアスリートは大抵、どのような練習すればいいかを自ら考え企画し、それを練習で実行し、ビデオで動きをチェックし、改善策を次に繋げるアクションをする。ビジネスの基本PDCAサイクルを高速で回しまくっている。少なくとも自分がいた環境はそうだった。

■それでもスポーツスキルは無価値

スポーツ(部活)は、コミュニケーション・上下関係・努力のプロセスには確実に価値がある。だから引退後は、企業でサラリーマンとして(営業職として)スポーツの経験を仕事に活かしなさい。と言われるのが今の常識だ。冷静に考えて、これは本当に正しいのだろうか。10年間磨き続けたそのスキル自体に本当に価値はないのだろうか?僕はきっと価値があると信じている。

スポーツスキルがお金に換わる市場を作りたい

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ビジネスを10年間やってきて、誰よりも努力して磨いた10年間のスキルが無駄になるとは思えない。だからアスリートのスキルにもきっと価値があると信じている。

例えば「友だちにテニスに誘われたから事前にちょっとだけやりたい」と思ったとき、あなたならどうするだろうか?

Google先生で「テニス 体験 都内」で検索してみると、月1万円以上する会員制のテニススクールがたくさんヒットする。そのときあなたは「家や職場の近くにあるのはどれ?」「1回だけかじる程度でいいんだけど・・・」「スクールの先生に教えてもらうほどでもないんだけど・・・」こう思うだろう。スポーツをちょっとかじりたい程度の人にスポーツは解放されていないし、Amazonのようにスマホでサクッと「テニス体験」をカートに入れることもできない。

この課題を解決すればスポーツのスキルもしっかりお金に換わる市場になると思っている。

■スポーツをオンラインに繋げ、教えられる人と教わりたい人を直接繋ぐ

スポーツはとにかくICT化が遅れている。特に僕は「スポーツを体験する」をオンライン化することに挑戦している。「クラスの開設」「クラスの予約」「受講料のオンライン決済」「評判/評価」などをオンライン化することで、”スポーツする”という敷居をとにかく下げたい。スポーツを教えられる人が気軽にクラスを開設でき、スポーツを教わりたい人がスマホでサクッと予約する。そんなCtoCプラットフォームがあれば”スポーツする”の敷居が下がり、映画館に行くように気軽にスポーツを体験できる環境を作りたいと思っている。

■スポーツで努力したすべての人がそのスキルを活かせる社会へ

レッスンに通うほどのガチでやりたいわけではなくて「サクッとかじる程度に1回だけ習いたい」と思う人にも、スポーツを解放したいと思っている。スポーツを学べる環境をオンラインに繋げ、スポーツを教える人と教わる人を繋ぐことでインストラクターだけではなく、学生時代に部活を頑張ったすべての人が気軽に講師として登録し、教えられるようにしたいと思っている。

スポーツ体験のCtoCプラットフォーム「spoit」

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これらを僕は「spoit」というCtoCプラットフォームを作ることで実現させたいと思い、2015年から開発を進めている。会社を存続させるためにマーケティング/クリエイティブ事業という、いわゆる受託をしながら少しずつspoitを開発している。β版は9割できているのだが、リリース後の運用保守をする体制ができていないことが原因でリリースを控えている。現在spoitではリードエンジニアとリードデザイナーを募集している。この想いに少しでも共感する人がいたらぜひ連絡ください!

co-stepとは
スポーツ・将棋の聖地、千駄ヶ谷に本社を構えるスタートアップ。創業以来、融資ゼロ・出資ゼロ・黒字経営を続けることで自らの会社をキャリア教育の実験室と置く。「感動への一歩目を共につくりつづける会社」として、マーケティング/クリエイティブ事業、スポーツ事業を通して「進路を共に一歩踏み出すキッカケを」の実現を目指す。
 ■マーケティング/クリエイティブ事業
全職種の60%をひとりのディレクターが担当することであるべきメディア設計を描いたマーケティング戦略と、媒体に固執しないユーザーに最も最適なクリエイティブを行うディレクター集団。
■スポーツ事業
初心者女子向けスポーツメディア「spoit」&スポーツレッスンのCtoCサービス「spoit-match」を開発中。

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林 諒‪|‬フィットネスDX
co-stepで働くスタッフでマガジンも更新しています♪ぜひ見てみてください^^