「願立剣術物語」を読んでみた。
原文
玉のきよくという事。
像玉の如し。
少しも留まることなし。
下り坂を走らしむに似たり。
坂急なれば玉の走るにあらず。
玉のこけ落ちるなり。
心の通いこの如く急ぐときは、玉の滑るを走るに似たり。
彼これと移り一物できて玉に角立つは、その角、敵の的に成るほどに弓上手の定めるにその角をひしと射落とすべく一つもなく玉の走る事、いずれを的とし目付と定る敵討つべきかな。
解釈
純粋な玉の働きということ。
技の像は玉のようであれ。
少しも留まることはない。
玉が下り坂を転がるのに似ている。
かといって急な坂では転がるのではなく、すべり落ちてしまう。
心が急いでしまえば、玉は転がり落ちるのではなく、すべり落ちるのである。
このような動きでは、動きに角ができる。
弓の上手な人ならば、その角を見定めて射る。
角がなく転がり続けているものを射るには、敵はどこに目をつければいいのだろうか。
コメント
心が急くままにあわてて動き出し、急に止まる。
敵には動く時も止まるときも、はっきりと見えてしまう。
そこを狙われれば、こちらの負けは目に見えている。
その動きがいつ始まったかもわからない。
いつのまにか動き出していた。
いつ止まるかわからない。
いつのまにか止まっていた。
これなら、敵は対処しようがない。
対処しようがないから、いつのまにか負けていた。
これが武術の技。
玉の動きである。