私の歴史~~武術に憑りつかれた男34
ようやくN師範のストレッチが終わり、私たちを見てくれることになった。
「えっと、どこまで行ったんすかね?」
「あのここまでです。」
「あ、じゃ、そこから次、やっていきましょう。」
N師範は先生とは違い理論派だ。
非常に細かく、要点もきっちりと、しかも何度でも教えてくれた。
しばらく、教えてもらって14勢まではなんとか憶えた。
そこへ先生が戻ってきた。
「どうかね?N君、この二人は憶えがいいかね?」
「はい、14勢までしっかりとできるようになりました。」
「お、そうか、そうか、じゃ、やって見せて。」
吉野さんと私は覚えたての14勢を先生の前でやってみた。
「いやいやいや、これはいいね。ここまですぐ憶えちゃうと、先生の立場がねえねっか。」
まったくN師範のおかげだ。
「よし、そしたら、あのね、太極拳なんて体操みたいだなんて、おじいちゃんの、年寄りの体操だなんてみんな馬鹿にしてっけどもさ、ちゃんと一つ一つに意味があるんだよね。たとえばこの最初の動き、うん、突いて来てごらん。」
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