これはペンです
と言えばペンだし、違うと言えば違うのだろう。
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◎「アルジャーノンに花束を」を読んだ
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これは、これこれこーゆうはなしです。
と説明してしまえばそれまでなのかもしれないが、
私はそうしたくないし、できれば手にとってほしいと思っている。
この話は一度読んだことがあったはずだった――しかし――あの頃以上に胸がつぶれるようだ。
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愛犬の話をしようと思う。
うちには2匹犬がいる。そのうちの大きいほうは、ゴールデンと柴犬とおそらくコリーとかコーギーあたりが入った雑種なのだが、もう15歳になる。といってもわりあいはっきりしているし、ご飯も食べるし、散歩にもいくのだけど少しずつ前とは違っていることが増えてきた。
いち、目が少し見えづらくなってきた。
に、片後ろ足の筋力が極端に落ちている。
さん、鼻が弱って、ごはんに気がつきづらいし食べ始めづらい。
よん、夜鳴きをするようになった。
彼女の目は薄く白く濁ってきていて暗闇になるとほとんど見えない、玄関の段差を踏み外すことが増えたので白いマットを貼り付けたら少しましになったようだ。
先日オレンジ色のふわふわのベッドを買ってあげた、興味は示すし入ろうと何度も挑戦するのだけど足が弱っているのでふわふわの場所でうまく体を支えて丸くなる動きをすることができない。床は硬いから、なんとかベッドで寝てほしい。置く位置や方向なんかを調整して試しているところだ。
暗闇で方向がわからなくなると、白い壁の方に鼻をつけてきゅうきゅう鳴く。そちらが明るく見えるからだ。電気をつけてあげるとあれ、という顔をしてこちらを見る。
私は極度の近眼で、最薄のレンズを選んでも分厚いメガネをかけて生きている。私はメガネをかけて生きることができる。夜道をひとりで歩けるし、段差を踏み外すこともない。
メガネが高温で壊れるのが怖くて、初めて行く銭湯とか温泉で、頑なにメガネをかけて入るのを拒否していた時期がある。大抵一緒に入る家族や友達がいるので、段差を教えてもらい時に手を貸してもらう。水に濡れたタイルや石は想像以上にでこぼこしていて、足は踏ん張りがきかない。滑って打ち所が悪ければしぬのだろう。
今ではもうどうでもよくなってメガネをかけて入る。
お金があることを知っているから、最悪メガネも買えるからだ。
彼女にはメガネをかけてあげられない。
きっとメガネがあったらわけもわからない恐怖に日々さいなまれることもないのに。もっと走って散歩で知らないところを歩けるかもしれないのに。
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私たちはただ、自分に適したコロニーにたまたま生まれてその恩恵を享受しているだけなのである。
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ハリー・ポッターでホグワーツに初めて行く列車の中、ロンがハリーに唱えて見せたおひさま、ひな菊、とろけたバター。という言葉の羅列が好きなので(これ自体は嘘呪文だったのだけど)、その調子でいくつか思い浮かんだ言葉をここに書いて置いておこうと思います。
あたたかい陽射し、たんぽぽの綿毛、つやとひろげられた伏し睫毛。
そっとまとめられ、丁寧に置かれる野の花の束。