見出し画像

天体観測−たった1分で読める1分小説−

「明日の夜さ、二人で天体観測に行かないか?」
「はい。行きます」
 光輝の誘いに、香織が勢いこんでうなずく。
 光輝は香織の先輩で、二人の共通の趣味が天体観測だとわかった。

 香織は親友の弥生に、その一件を話した。
「香織よかったじゃん。先輩のことずっと好きだったもんね」
「告白されたらどうしよう!」
 二人でキャアキャアと盛り上がった。

 翌日の午前二時、香織は天体望遠鏡を担いで待っていた。好きな曲の歌詞に合わせてみた。
「お待たせ」
 光輝がやってきて、香織は一瞬間が空いた。
「どうしたの?」
 光輝がきょとんとし、香織が首を振った。
「ううん、なんでもないです」

 丘の上に到着して望遠鏡を設置する。木星なので、倍率は百四十倍ぐらいだ。
 香織が望遠鏡を覗いて、嬉しそうに声を上げた。
「あっ、木星の縞が見える」
「ほんとだね。四つの衛星もよく見えるよ。綺麗だね」

「……」
 香織は光輝を見て黙り込んだが、光輝は気づかない。
 天体観測を終えると、光輝が勇気をふりしぼって告白した。
「俺、香織のことが好きなんだ。よかったら付き合ってくれないか」

 その翌日、香織と弥生は二人で話していた。弥生が疑問を投げる。
「なんで先輩ふったの? 香織、好きだったんじゃなかったの?」
 弥生の疑問に、香織が不気味そうに答えた。
「先輩さ、天体望遠鏡なしで、裸眼ではっきりと木星が見えてたの。

 視力よすぎてキモくない?」


いいなと思ったら応援しよう!

浜口倫太郎 作家
よろしければサポートお願いします。コーヒー代に使わせていただき、コーヒーを呑みながら記事を書かせてもらいます。