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自動運転−1分で読める1分小説−

 カフェでタクミが、友達のユウジと話していた。
「なんだ、ずいぶん疲れてるな」
 タクミが、自分で肩をもんだ。

「会社と家の距離がとにかく遠くてさ、もう長時間運転にはうんざりだよ」
「だったらうちで開発している、自動運転車のモニターになるか。安全に会社まで送ってくれるぞ」
「いいのか」
「ただし自動運転はまだ法律的には許可されてないからな、秘密厳守で頼むぞ」

 AI搭載で運転も話すこともできる。
 男性や女性、いろんなキャラクターのモードがあった。
 運転中、タクミはいろんなモードで会話を楽しんだ。
「こりゃ快適だ」

 その時、ドンと衝撃が起きた。なんと別の車に追突したのだ。
 あわててタクミが車から降りようとしたが、扉が開かない。そして勝手に走り出した。
「おい、止まれ!」
 タクミが制止するが、車は走り続けた。

 その後すぐに、タクミは警察に捕まった。
「なぜ現場から逃げた」
「私じゃないです。これは自動運転で、AIが運転してるんです」
 ユウジに口止めされていたが、知ったことではない。

「AI? 何も反応がないぞ」
「おい、何とかいえよ。おい!」
 タクミが声を荒げたが、車は無反応だった。

「ひどい目にあったぞ」
 後日タクミが、ユウジに怒ってきいた。
「なんであの車勝手に逃げたんだ? しかもうんともすんともいわなかったぞ」

「おまえがあの時選んだモードのせいだ」
「モード? オレ、なんのモードにしてたんだ?」

「卑怯者モードだ」


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浜口倫太郎 作家
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