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『推しエコノミー』は必読の一冊!

今日はおすすめの一冊を紹介させてもらいます。

『推しエコノミー』 中山淳雄著

中山さんはエンタメ社会学者の方です。前著の『オタク経済圏創世記』が本当によかったんで、こちらも読ませてもらったんですが、この本も素晴らしかったですね。エンタメに関わる人間すべての必読本となっております。

まず序文として、コロナ禍で五年タイムスリップした世界に我々は今生きていると中山さんはおっしゃられています。

今のエンタメの状況はいずれこうなると考えられていたものです。音楽ライブ市場はいつかデジタル配信されてユーザーが同時視聴するようになるし、マンガはいずれ電子マンガの市場にとってかわられるだろうと業界の人間は薄々わかっていました。

でもそれはいつかであって今すぐではない。まあでもデジタル対応はやらないとねえ。

そう誰もが本腰を入れてはいなかったのに、コロナという巨人が襲いかかり、一気にデジタルへとシフトしたのです。

まずオンライン会議がこれだけ急速に普及するなんて誰も思わなかったじゃないですか。

会議っていうのは実際に顔を見合わせてやらないとだめなんだよ、きみぃ、と言っていたおじさんたちが、慌ててzoomを使い出すなんて考えられなかったですよ。

あれだけ顔を合わせての会議が大好きなテレビ業界人も、オンライン会議に切り替えてましたからね。テレビの世界までオンライン会議になったのかと驚きました。

ただzoomを使えないベテラン放送作家がいて、わざわざADがその作家の家に赴いて教えないとダメなので、その作家が必要かどうかという話にまでなったという悲劇も生まれてしまったそうですが……。

まあそれは置いておいて、いざやってみるとオンライン会議で十分成立した。というかオンラインならば通勤時間もいらないし、家で快適にできる。となると仕事場の近くに住まなくていいじゃんとなったり、オフィスっているのという議論が生まれたり、オフィスを東京から地方に移転する話もではじめました。

コロナがなかったらここまで一気にデジタルにいかなかったですよね。五年ほどの変化が一年に短縮された感じです。だから中山はさんは我々は五年後に生きているとおっしゃられているわけです。

その変化の時代のエンタメの世界で、キャラクターやタレントを『推す』というファンの行動変容が、大ヒットを産み出していると中山さんは書かれています。

『シンエヴァ』を例に出されていますが、「シンエヴァを100億円に持って行かなければ」と焦燥感にあおられたファンが何度も映画館に足を運ぶ現象がおきましたよね。僕も記憶にあります。

そういえば『鬼滅の刃』のときも「煉獄さんを100億の男にしなければ」という言葉もよく耳にしました。名探偵コナンは「安室を100億男にする」でしたよね。

十年前にそんな言葉を聞いたことがないです。まだアイドルはあったかもしれませんが、作品のキャラにここまで熱を入れて応援するという現象は以前にはなかったものです。

「ドラえもんを100億の猫型ロボットにしなければ」なんて誰も言ってなかったですよ。推すという行為が大ヒットの要素になってきてるんですよね。

その他にも昨今のエンタメに関する興味深い内容が盛りだくさんです。なるほどとうならされる内容ばかりでした。

この本の冒頭に、1820年頃のイギリスを中心とする先進国の話が書かれています。

馬車の移動から鉄道の移動になり、化学薬品が生まれ、電気が発明され、技術的進歩が爆発した時代です。

歴史学者のウィリアム・バーンスタインも「1950年に先進国に暮らしていた人間であれば、2000年のテクノロジーを理解するのにさしたる苦労はないだろう。ところが1800年から50年後の世界にタイムスリップした人間は、間違いなく大混乱に陥る」と述べるほど、19世紀前半は人類史の中で特別な変化を起こした時代です。

まさに今が19世紀前半のように、特別な変化が生じている時代だとこの本を読めばわかります。エンタメに限らず、これからの未来がわかる一冊ですね。


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浜口倫太郎 作家
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