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ラブレター−たった1分で読める1分小説−

 トモキが靴箱を開けると、ドサドサと何かが落ちた。
「またかよ、うぜえな」
 それはラブレターの山だった。

「いつもすごいね」
 その様子を見ていたヨウジが、うらやましそうにいった。

 トモキは外見もよくてスポーツ万能なので、女性からモテてしかたがなかった。毎日山のようにラブレターが届けられる。

「ほんと迷惑だ」
「このラブレター、処分しといてあげようか」
「……おまえ、家に持ち帰ってこっそり保存とかすんなよ」
「そんなことしないよ」
 ヨウジが笑い、トモキはヨウジにまかせた。

 しばらしくて、トモキはヨウジの家にまねかれた。
「おまえの家って酪農やってんのか」
 モーモーと牛が鳴いている。

「そうなんだ。よかったらこれ飲んでよ」
 ヨウジが牛乳をさし出し、トモキがグィッと飲んだ。
「うまい!」
 コクがあるのに飲みやすい。
「最高の牛乳だな」

「牛乳じゃないよ。これ、ヤギのミルクなんだ」
「ヤギのミルクって始めて飲んだけど、こんなにうまいんだな」
「ゴートミルクっていって、牛乳よりも栄養素が含まれてるんだ。美肌にもいいんだよ」

「なんでヤギのミルクはそうなるんだ?」
「牛は牧草しか食べないけど、ヤギは樹皮や木の葉も食べる。だから栄養素が豊富なんだ」

「なるほど」
「それに加えて最高のエサを与えてるんだ。愛情がたっぷり含まれた上質なエサをね」
「どんなエサだ?」
 ヨウジがにこりと答えた。

「君へのラブレターだよ」


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浜口倫太郎 作家
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