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放火−1分で読める1分小説−

 夜にゴードンが歩いていると、シェルフを見つけた。
 シェルフは自分の家を見上げると、ハァとため息をつき、突然火をつけようとした。

 ゴードンがあわてて止める。
「おい、何をやっている」
「止めるな。俺は家に火をつけないとダメなんだ」
「なぜだ。理由をいえ」
「ロバート様の命令なのだ!」

 ロバートとはこの街の領主で、独裁者のような存在だ。
「どういうことだ?」
「今日はジェシカ様の誕生日だ」
「それがなんだ」
 ジェシカはロバートの愛娘で、ロバートが溺愛している。

「ジェシカ様の八歳の誕生日を盛大に祝いたい。そこで村人の家八軒に火をつけて、それをヘリコプターから見ようとロバート様がおっしゃられたのだ」
「……街を誕生日ケーキに見立てるということか」

 ロバートの横暴ぶりは目に余るものがあったが、これは度を超えている。
「オレに考えがある」
 ゴードンの目は怒りに燃えていた。

「どうだ。ジェシカ、ヘリコプターから見る景色は凄いだろ」
 ロバートが上機嫌でいった。
「パパ、火がすっごい綺麗だね」
「そうだろ」
「でも私、八歳だけど火が一つしかないよ」
「何?」

 窓を見るとそのとおりだった。
「あいつら、しくじりおったな。あとで折檻してやる!」
 ロバートが舌打ちすると、執事がそろそろといった。

「……ロバート様」 
「わしは今機嫌が悪い。話しかけるな」
「ですが……」
「なんだ!」
「あの一つだけ燃えている家は、

 ロバート様のお屋敷です」


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浜口倫太郎 作家
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