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プロに聞いた相手の本音を引き出すインタビュー術

こんにちは。WHITEのサービスデザイナーの酒井です。
サービスデザインの初期プロセスにおいて、ほぼ必ずやるといっていいものとして“定性調査”があります。主に新サービスのユーザーになりそうな人に対して行うインタビューのことを指しますが、限られた対話の中でいかに相手の本音を引き出すか、が勝負になっていきます。

今回は著名人から一般人まで、年間何十本もインタビューをこなすプロのライターの方にそのコツを伺いました。

五十嵐 大
83年製のフリー編集者兼ライター。マンガ好き。ダ・ヴィンチ/東京Walker/anan/DRESS/LINEムック/ライブドアニュース/soarなど、紙web問わず書いています。

五十嵐さんの #今年手がけた記名記事 はこちらhttps://note.mu/igaigada/n/n2cf76337bf79

主観を排除して、言葉を引き出す

ーー普段書かれている記事にとって、インタビューってどういう立ち位置なんでしょうか?

五十嵐:ライターの仕事ってインタビューをして材料を集めて、それを記事にするのが基本だと思うんですね。取材なしで書く本のレビューとか、コラムとかもありますけど、取材をすることの方が多いんです。そこで大事なのはインタビューイーからいかに言葉を引き出せるか。原稿を書く上で、材料は多ければ多い方が良いと思うんです。

ーーどんな準備をされるんでしょうか?

五十嵐:著名人の場合、著書は絶対読む、ブログ、ツイッター、直近のインタビューに目を通すなどは全部します。事前にインプットしておくことで相手の受け取り方、聞き方も変わるので。「この本にも書いてありましたけど、改めて説明していただけますか?」という質問もできますし、そもそもしっかりと準備して臨むのが礼儀でもありますよね。忙しいなかお時間を作ってくださるわけなので。

ーー質問も事前に用意しますか?

五十嵐:昔は質問項目を作って、上から訊いていくという感じだったんですよね。でもノンフィクションの本を出した先輩ライターさんをインタビューした時、「そのインタビューのやり方、よくないよ」って言われて。機械的に質問をするのではなく、会話することを心がけた方が良いよ、とアドバイスされたんです。なので、今は質問項目はもちろん考えて頭に入れるんですけど、あくまでも話をすることを意識しています。

無駄話が関係値を築く

ーー自由演技というか、勝手にしゃべってもらうんでしょうか?

五十嵐:想定していた質問はするんですけど、話の流れで想定していなかったことが気になったりもするんです。なので、相手の返答に対して「なんでですか」「どうしてそう思ったんですか」ってどんどん突っ込んでいくようにしています。

ーー話を膨らませていくんですね。脱線していっても問題はない?

五十嵐:インタビューって一期一会じゃないですか。必要な情報だけを引き出すだけではなく、無駄話をいっぱいして関係値を築くことが結構大事だと思うんです。例えば1時間だったら最初の20分はドラフトで関係値を築いて、残りの40分でいっぱい喋ってもらうほうが良かったりもするので。

ーーなかなか核心に至らない時やりがちなんですけど「それってこういうことですか」っていう質問って誘導になってしまいますよね。

五十嵐:期待している答えに誘導してしまうことはやりがちなんですけど、あくまでも相手の考えでなければ意味がないですよね。誘導するような訊き方はせずに、「今の話を聞いて、僕はこういうことだと思ったんですけど、どうなんですか」と判断を委ねてみると良いかもしれません。僕は個人的にこう思ったんですけど、実際どうですか、と。本の著者へのインタビューなんかでも、「深読みだとは思うんですけど、この一文ってこういうことを暗示していますか?」って聞くと「いや、そうなんですよ」ってなったりとか、「いや、さすがにそれは深読みです」とか。

サービスデザインで使えるインタビュー技術

ーーサービスデザインのインタビューでスポットコンサルなどを利用することがあります。相談料も高額、時間が限られているなのでなるべく効率的にやりたいんですが・・

五十嵐:報酬があるから相手も答える気満々、という前提であれば最初からガッツリやっていいと思います。1時間の取材時間が用意されている内、45分くらいでわりと聞けたなってなったら、残りの15分くらいでフリートークをして、想定していないような答えを引き出したりとか。取材時間が限られているのであれば、マストの質問を前半にしておいて、残った時間でどんどん話を広げていく方が安心かもしれないですね。

ーー一般の方にインタビューする時のコツってありますか?

五十嵐:当たり前かもしれないですけど、一般の人って、取材慣れしていない人が多いんです。まずは緊張しているのでほぐすために全然関係ない話をしますね。あとは自分の考えを上手く言語化できない方も多いので、回答に詰まってしまったりもします。そもそも全く準備しないで一般の人がスラスラ答えるというのは結構難しいから、質問項目は事前に見せてあげた方が親切かも。それと、端的にしか答えない人もいます。「そうです」とか一言で終わっちゃうケースですね。実はそれってインタビュアーの人の時間を無駄にしちゃいけないって構えているのが原因だったりします。あとは不用意なことを言って記事になったら困ると考える方もいるので、そういう人には「原稿は事前チェックしてもらうので安心してくださいね」って伝えます。そうするだけで、安心してもらえると思うんです。

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普段インタビューする側で、されることはあまりないという五十嵐さん。今回記事に載せきれない部分でもたくさんの示唆をいただきました。

メディアの取材とサービスデザインのためのインタビュー。目的は違えども相手の本音を引き出すことに違いはなく、今後のサービスデザインに活かしていければと思います。

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