D&Iはなぜ必要?理由やDE&I・DEI&Bとの違いをわかりやすく解説
目次
弊社の顧問であるi-PRO株式会社のDirectorであり、HRBPの山下茂樹さんに勉強会を開いていただきました。そこでは、D&I、DE&I、DEI&Bの違いや、なぜ3つも異なる言い方があるのかなどについて、以下の参考文献と山下さんの実体験をもとに語っていただきましたので、その内容をまとめます。
参考文献:「DEI経営の実践」ダイヤモンドHBR24年4月号 著者:EY Japan CEO 貴田守亮氏
D&Iが必要な理由
D&Iが必要な理由は大きく以下の3つです。
理由1.多様化する社会に対応するため
近年、社会は急速に変化しており、人々のニーズも多様化しています。そのため、企業もそれらに対応すべく、多様な人材を受け入れ、活躍できる環境を整えることが求められています。
具体的には、以下の点が挙げられます。
顧客ニーズへの対応:顧客層が多様化する中、多様な視点を持つ人材が揃うことで、より幅広いニーズを的確に把握し、商品やサービスを開発できます。
グローバル化への対応:海外進出やグローバル展開を目指す企業にとって、異なる文化や価値観を持つ人材を理解し、協働できることは不可欠です。
理由2.優秀な人材を獲得・定着させるため
優秀な人材は、どこでも働きたい場所を選ぶことができます。そのため、企業は魅力的な職場環境を作り、多様な人材が活躍できる場を提供することが重要です。D&Iは、優秀な人材を獲得し、定着させるための有効な手段の一つです。
具体的には、以下の点が挙げられます。
公平な評価制度:性別、年齢、国籍などに関係なく、能力や成果に基づいて評価される制度が必要です。
働きやすい環境:ライフスタイルに合わせた働き方ができる制度や、ハラスメントのない職場環境が必要です。
多様性を尊重する文化:異なる意見や価値観を尊重し、互いに学び合えるような文化が必要です。
理由3.イノベーションを生み出すため
イノベーションは、画期的なアイデアや新しい視点によってもたらされます。その実現には、多様な人材が集まり、自由に意見交換できる環境が欠かせません。D&Iは、イノベーションを生み出すための環境づくりに寄与します。
具体的には、以下の点が挙げられます。
多様な視点:異なるバックグラウンドを持つ人々が集まることで、様々な視点から問題を考えることができ、新たなアイデアが生まれやすくなります。
心理的安全性の高い環境: 失敗を恐れずにチャレンジできる心理的安全性の高い環境が整います。
D&I、DE&I、DEI&Bの違いと定義
近年、多様性を表すダイバーシティ(Diversity)を中心に、D&I、DE&I、DEI&Bといった様々な概念が登場しており、それぞれの違いに迷う方も多いのではないでしょうか。
そこで以下では、各用語の違いを示すために構成要素であるDiversity、Inclusion、Equity、Belongingの定義を紹介します。
D&I(Diversity & Inclusion)
ダイバーシティ(Diversity):多様性。性別、年齢、人種、宗教、性的指向、障害の有無など、様々な属性における多様性を指します。
インクルージョン(Inclusion):包摂性。多様な人材が組織の中で受け入れられ、尊重され、活躍できる環境であることを指します。
DE&I(Diversity, Equity & Inclusion)
エクイティ(Equity):公平性。すべての人が機会や資源に対して同様にアクセスでき、公平に扱われることを指します。
DEI&B(Diversity, Equity, Inclusion & Belonging)
ビロンギング(Belonging):属する感覚、帰属感。組織の一員として認められ、受け入れられていると感じられることを指します。
D&IからDEI&Bへとなぜ移行したのか?順番が大切!
近年、単に多様性を尊重するだけでなく、すべての人が平等に扱われ、組織に属していると感じられることが重要であるという認識が広まっています。その結果、DE&IやDEI&Bといった概念が注目されています。
D&IからDEI&Bへと移行した理由
実は、この移行は実践を通して得られた気づきに基づいています。多くの企業がD&Iの推進に取り組む中で、Equity(公平)やBelonging(帰属意識)の重要性を改めて認識し、DEI&Bという概念が生まれました。
Diversityに直面するからInclusionを考える必要性ができて、Inclusionに取り組んだからこそ、Equityの必要性に気付いたということです。
DiversityとInclusionに直面していないのに、Equityを考えようとしても、上滑り、きれいごとで終わってしまう可能性が高いため、然るべきステップを踏みながら、施策を考えることが重要です。
D&IからDEI&Bへ移行した流れ
D&IからDE&I、そしてDEI&Bへ移行した流れは、以下の通りです。どのような背景と経緯によってDEI&Bへと行き着いたかにご注目ください。
1.多様性の重要性(D&I)
Diversityを促進すると市場シェアが改善される可能性が高いことが証明され、D&Iに取り組む企業が増えてきました。しかし、Diversityを目指す過程で以下の様な問題が生じ始めます。
方向感がバラバラになり意思決定が遅くなる、または成果につながりにくくなる
多様な人が入社してこない、または定着しない
そこでInclusionという概念に注目する必要性が生じてきたのです。
Inclusionを行うために、ソフト面(経営理念:mission、vision、value、purpose)と、ハード面(評価、女性管理職比率、フレックス制度など働き方)の見直しを行う企業が増えました。
2.平等な機会の重要性(DE&I)
Inclusionを推進すると、また次の問題に直面する企業が増えてきました。それは、Inclusionが行き過ぎて、不公平を感じる人が増えてきたということです。
そこで、Equity(公平)が注目されるようになりました。Equityの概念を理解するために、Equality(平等)と比較します。
以下はEquality(平等)とEquity(公平)をわかりやすく表したイラストです。
このイラストから、平等と公平の違いは以下のように整理できます。
左側:Equality(平等)とは、誰もが同じだと画一的にとらえ、平均的な人物像を描き、等しく扱うこと。
右側:Equity(公平)とは、人によって「差」があることを認め、その上で判断、対応すること。
例えば、男性と女性の違いを考えた場合、女性に対して男性と同じ仕事内容や待遇を提供することが平等です。一方で、女性が妊娠・出産をする場合は、妊婦健診や出産休暇を設けることが公平です。 すべての人に平等な待遇を提供するだけでは、個々の事情に対応できないことがあらわになり、Equity(公平)が注目されるようになりました。
3.帰属意識の重要性(DEI&B)
DE&Iが促進されてもなお、企業内の人絡みの問題はなくなりませんでした。それが、近年、米国を中心に話題となった大量退職(The Great Resignation)という社会問題です。企業側からの解雇ではなく、自主的に退職する人が爆発的に増えているのです。
これは、従業員が組織に「帰属意識」を感じられていないことが原因の一つと考えられています。こうした背景から「Belonging」という概念が注目されるようになり、DEI&Bへと行き着いたのです。
最後に
D&I(ダイバーシティ&インクルージョン)に、公平性を表すEquity(エクイティ)が加わってDE&Iとなり、さらに今は帰属意識を表すBelonging(ビロンギング)が合わさったDEI&Bの段階に至っています。
ただ、はじめからDEI&Bを掲げるのは、ハードルが高いといえます。自社の現状に応じて、「まずはD&Iの確立から目指す」といった段階的な取り組みを意識することが大切です。
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