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エンゲージメント向上は本当に業績に直結するのか?

「エンゲージメントを高めれば業績が上がる」という話を聞いたことがあるでしょう。では、それは事実でしょうか?エンゲージメントが高まれば業績が向上するというデータは確かに存在しますが、ここで気をつけなければならないのは、相関関係と因果関係の違いです。どちらも関連しているように見えるかもしれませんが、実は根本的に異なります。この違いを理解することで、エンゲージメント向上がどれだけ重要な施策なのか、深く考えることができるでしょう。


相関関係と因果関係:エンゲージメントが業績を「引き起こす」とは限らない

まず、エンゲージメントと業績には相関関係があると言われています。つまり、エンゲージメントの高い社員が多い会社では、一般的に業績も良い傾向にあるということです。しかし、ここで注意したいのは、相関関係は因果関係ではないという点です。相関関係とは、二つの要素が一緒に動いていることを意味しますが、必ずしも一方が他方を引き起こしているわけではありません。

たとえば、夏にアイスクリームの売上と水難事故が同時に増えることがありますが、それは高温が共通の要因であって、アイスクリームが事故を引き起こしているわけではありません。

この例と同じように、エンゲージメントが高い会社で業績が良いという事実があったとしても、それがエンゲージメント自体の影響によるものなのか、それとも他の要因が関係しているのかを慎重に見極める必要があります。エンゲージメント向上が直接業績に寄与していると判断するには、他の変数や条件を考慮する必要があるのです。


GRPIモデルで考えるエンゲージメントの役割

ここで、チームや組織のパフォーマンスを理解するためのフレームワークとしてよく使われる「GRPIモデル」に目を向けましょう。このモデルは、組織やチームが効果的に機能するための4つの要素を示しています。これらは以下の通りです。

  1. Goal(目標):チームや組織が達成すべき明確な目標を持っているか。

  2. Roles(役割):各メンバーが自分の役割と責任を明確に理解しているか。

  3. Processes(プロセス):どのようにして仕事が進められるか、意思決定がどのように行われるか。

  4. Interpersonal Relationships(人間関係):チーム内で信頼関係が築かれているか、協力体制が取れているか。

エンゲージメント向上は、このモデルにおける「Interpersonal Relationships(人間関係)」に該当します。確かに、社員同士の信頼関係がしっかりしていれば、業績にも良い影響を与えるでしょう。

しかし、これだけで業績が劇的に向上するわけではありません。目標の明確化役割の理解、そしてプロセスの整備があってこそ、エンゲージメントが本当に効果を発揮するのです。


伊藤レポートとエンゲージメント向上:戦略との結びつきが鍵

ここで、伊藤レポートが提唱する「経営戦略と人事戦略の連動」について考えてみましょう。エンゲージメント向上が人事戦略の一環として重要であることは間違いありませんが、それだけでは業績向上に直結するとは言えません。重要なのは、エンゲージメント向上が経営戦略とどのように結びついているかです。

たとえば、目標が曖昧だったり、役割が不明確な組織では、エンゲージメントが高くても社員がどこに向かって努力すれば良いのか分からず、結果としてパフォーマンスが発揮されないことがあります。また、プロセスが効果的に整備されていなければ、いくら信頼関係が強くても仕事がスムーズに進まないこともあります。

このように、エンゲージメントを高めるだけではなく、経営戦略と人事戦略をしっかりと連携させ、目標、役割、プロセスといった上位の要素に対しても人事部門としての知見を活かすことが、組織全体の業績向上につながる鍵となります。

具体例で考える:戦略とエンゲージメントのバランス

例えば、ある企業では、組織全体の目標を明確にし、それを全社員に共有しました。その結果、各社員が自分の役割をしっかりと認識し、効率的なプロセスで業務を遂行できるようになりました。

ここで重要なのは、まず目標や役割、プロセスを整えることです。その上で、エンゲージメント向上に向けた施策を導入することで、社員は自分が組織の一部として重要な役割を果たしていると感じ、より積極的に貢献しようとするのです。エンゲージメント向上は業績向上の「原因」の一部であるということが分かります。

まとめ:エンゲージメントだけでは業績向上には不十分

エンゲージメント向上が業績に寄与するというのは一部正しいかもしれませんが、それが全てではありません。

組織の目標設定、役割分担、プロセスの整備がなければ、エンゲージメント向上だけでは限界があります。GRPIモデルを参考にし、経営戦略と人事戦略を連動させた包括的なアプローチが、持続的な業績向上につながるでしょう。

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