職場の「ユーモア」について。そしてリモートワーク時代にそれをどうするべきか。
こんにちは、株式会社HQ(エイチキュー)でソフトウェアエンジニアをしている増田です。HQは「テクノロジーの力で、自分らしい生き方を支える社会インフラをつくる」をミッションに掲げるスタートアップ企業です。初期プロダクトとして社員の個別最適なリモートワーク環境の構築を支援する「リモートHQ」を開発、運用しています。
前回の投稿ではHQに入社して1か月経過したタイミングでキャッチアップについて心掛けていることを振り返ってみました。
私は(多くの人もそうだと思いますが)考えて整理した内容を文章にするというよりは、書くことがむしろ思考のプロセスの一環というタイプです。この投稿でも心掛けてきたことをまとめたつもりが、これから心掛けていくべきことを考えるよいきっかけになりました。
さて、年明けに素晴らしい書籍に出会いました。以下がその書籍、「ユーモアは最強の武器である(原題: Humor, Seriously)」です。原題に既にユーモアがあっていいですね。「ユーモアだよ。真面目な話」という感じでしょうか。
今回はその書籍から得られた事柄について更に思考する為に書きたいと思います。そしてリモートワーク時代に職場のユーモアや雰囲気に対してどのようにアプローチしていけば良いのかについても考えてみたいと思います。
職場における「ユーモア」とは何なのか?
「ユーモア」が一体何を意味するのか、どれにどのような印象を抱くのか、それと仕事や職場との関係についてどう考えるのか、実に人それぞれだと思います。日本ではいわゆる「お笑い」が市民権を得ている為、それとの関係でこの言葉を捉える方も多いかもしれません。
本書では職場におけるユーモアで達成するべき目標を次のように描写しています。この描写が個人的にはとてもしっくりきて、これだけでもこの書籍を読んだ価値があったと思ったくらいです。
また身体的な動作との対比を用い、以下のようにも説明しています。これも素晴らしい対比で、私もこれから積極的に使っていこうと思います。
最後の一文にあるように、陽気さというのは体を動かすことと同じく我々が生まれながらに持っている基本的な能力に対する話題であるのに対し、ユーモアというのは特定の目的の為に陽気さを意図的に用いることだと説明しています。ちなみにコメディーはスポーツと対比されています。
そして当然ながら職場のユーモアにも目的があり、大雑把に言ってしまえばビジネスを成功させる為にユーモアが必要だというのが本書の主張です。そしてこの書籍で説明されるところの「ユーモア」とは、日本語では「お笑い」や「ギャグ」ではなく、例えば「機転」や「気遣い」か「親しみ」などと表現される方が適切かもしれません。
例えば本書ではユーモアと心理的安全性の関係について言及しています。心理的安全性を感じることによって、従業員が失敗を恐れなくなり、大胆で大きなリスクをとる勇気が湧いてきます。そういったチームを作り上げる為の手段のひとつとして「ユーモア」が機能するというのが本書の主張です。
他にもダイレクトメールの追伸(P.S.)で「ユーモア」を効かせる例や(ちなみに約90%の人は本文よりも P.S. 部から第一印象を感じるそうです)、短くする事が鉄則の広告コピーで敢えて長文を用いた例などが、「ユーモア」が仕事に効果的だという例で紹介されていました「ユーモア」というより最早クリエイティビティという感じですが、私がこれらの例を読んで思い出したのは以下の広告でした。とても「ユーモア」がありますよね(ちなみにこの広告が本当に存在したのかは知りません。)
このように本書が定義する「ユーモア」の様々な効用が解説されていて、とても刺激を受ける読書になりました。そして以下のセクションに続く話ですが、私がここ数年抱えていた「リモートワークと職場のユーモアの関係」について示唆を与えてくれる内容でもありました。
リモートワーク時代の職場の「ユーモア」はどのように発揮していくべきなのか
さて、「ユーモア」と呼ぶにせよ「クリエイティビティ」と呼ぶにせよ、もっと単純に社内の「雰囲気」とか「社風」とか呼ぶにせよ、職場においてこういう要素が大切であることにはあまり異論はないでしょう。心理的安全性、創造性、そういったことももちろん重要で、「ユーモア」がそれらに良い効果をもたらすというのも、感覚的にはほとんどの人が同意するのではないかと思います。ですが、このリモートワークの時代にその「ユーモア」をどのように発揮していけばいいのでしょうか?
前職のマイクロソフト時代から4年以上リモートワークで働いてきて、個人的に一番悩んだことのひとつが、実はこの雰囲気づくりでした。上で「お笑い」ではないとは書きましたが、それでもたまには会議の中にほんのひとつまみでもクスリとできる瞬間があるべきだと個人的には思っています。ところがこれがリモートワークになった瞬間に、とても難しくなってしまったのです。
リモートワークでは相手がカメラをオンにしているとも限りませんし、マイクもミュートになっているかもしれません。そんなとき、気の利いたセリフを瞬発力よくマイクの音声信号として投げ込んでみても、自分の「ユーモア」が相手にどのように受け止められたのか、判断のしようもなかったりします。繰り返しますが笑いを取ることが「ユーモア」の目的ではありませんが、「皆がつながる瞬間」に貢献できているのかどうか、それを確認するのがなかなか難しいのです。
オンラインのコミュニケーションツール、例えばSlackやTeamsでの「ユーモア」にも独特のチャレンジがあります。よく言われるように文字情報では感情が伝わらないことと、どうしてもローコンテキストを前提としたコミュニケーションになるため、誤解のない、かつテンポのよい「ユーモア」をそこに混ぜ込ませるのがなかなか困難なのです。社内の不特定多数の人が目にするかもしれないという状況も難しさに輪をかけます。
このようにリモートワーク時代には「ユーモア」を発揮するのも今まで通りにはいきません。もっと大きく捉えれば社内の雰囲気づくりとか、文化の形成とか、従業員通しの人間関係の構築ですとか、そういったこと全般に今までとは違うアプローチが必要になってきています。既に信頼関係のある従業員同士がリモートワークになった場合でももちろんチャレンジはありますが、新入社員がこれまでのコンテキストを持たずそこに加わった場合、更に難しくなることは想像に難くありません。
私はもちろんこの問題に対する答えは持っていないのですが、ひとつ心掛けていることがあるとすれば、それはリモートワーク環境で「ユーモア」を発揮しようとリスクテイクしている人は高く評価するということです。上述のように方法論も確立しておらず非常に難しい取り組みなので、このリスクを取ってくれる人を高く評価する、というと言い過ぎかもしれませんが、そのリスクテイクには感謝するべきだろうと考えています。そこにできうる限りの反応はしたいですし、自分も見習ってそのリスクを取りにいきたいです。
まとめ
素晴らしい書籍に出会ったのをきっかけに、リモートワーク時代の職場の「ユーモア」について考えてみました。ちなみにユーモアに「」を付け続けているのは、あくまでこの書籍の定義に則って議論しているつもりだからです。上述のように日本は「お笑い」がとても市民権を得ているため、どうしても職場の雰囲気を作るための「ユーモア」というと宴会芸とかが連想されてしまうことも多いかもしれませんが、ここではもう少し広義の意味で使っていました。
あ、そういえば上述のようにダイレクトメールの第一印象は追伸が決めるとのことでしたので、案外noteの投稿もこういったまとめが第一印象に一番の影響を与えているのかもしれませんね!
最後に
株式会社HQでは「テクノロジーの力で、自分らしい生き方を支える社会インフラをつくる」というミッションに共に挑む仲間を募集中です。フルリモートワークでも楽しくやっていますし、週に一度だけ四谷に借りているオフィスに出社してもいい日があるのですが、結構ワイワイやってる職場です。上述の雰囲気作りも含めて、この職場に少しでも興味がありましたら是非採用ページを覗いてみてください。
追記
偶然なのですが、Business Insider Japan さんで似たようなテーマの記事が公開されていました。非常に興味深く読ませて頂くことが出来ました。
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