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藤井聡太さんとAdoさんの共通点。ソフトウェアによる人間や組織の能力の拡張。

こんにちは、株式会社HQ(エイチキュー)でソフトウェアエンジニアをしている増田です。HQは「テクノロジーの力で、自分らしい生き方を支える社会インフラをつくる」をミッションに掲げるスタートアップ企業です。初期プロダクトとして社員の個別最適なリモートワーク環境の構築を支援する「リモートHQ」を開発、運用しています。

前回はリモートワーク時代における職場のユーモアの在り方について考えてみました。偶然なのですが、公開後に似たような内容の記事が Business Insider さんでも公開され、非常に興味深かったです。

さて、今回はまた少し毛色の違う話です。昨年末に恒例の紅白歌合戦を観ていたのですが、出場されていたAdoさんのパフォーマンスに受けた刺激からこの記事を書いてみたいと思いました。

この記事のテーマは「テクノロジー(主にソフトウェア)による人間の能力の拡張」です。今後はどの分野でもソフトウェアテクノロジーをフルに活かして能力を拡張したトッププレーヤーが出てくると思いますし、個人だけでなく企業等の組織でも競争に勝つ上でそれが大きなテーマになると思います。


AIで棋力を磨く藤井聡太

Adoさんの話に入る前に、言わずと知れた時代を象徴する棋士である藤井聡太さんについて書きたいと思います。ちなみに私は将棋を打つ訳でもなく(ルールは理解しています)、観戦者としても将棋に興味はありません。

こちらは年始に観たPivotさんのYouTube動画ですが、落合陽一さんがチラッと藤井聡太さんに触れられています。2016年にAlpha Goがイ・セドル氏に勝利した流れからの話だったのですが、「将棋の専門家かつコンピューターと対話するのが好きな人だからめちゃくちゃ強い」という発言をされています。

藤井聡太さんがAIを用いて棋力を磨いているというのは将棋に全く興味のない私でも知っている有名な話です。この記事を書く前に以下のクローズアップ現代の取材を読ませて頂いたのですが、藤井さんが打った一手がニューラルネットワークを使っていないと出てこない一手だという一幕はとても面白かったです。

藤井さんは5年前、AIを使った研究を始めました。当初のソフトは、人間が情報を与えることで候補となる手を導きだすものでした。ところが、去年の秋ごろから、藤井さんは棋士の中でいち早く従来のソフトとは異なる“ディープラーニング系将棋AI”を研究に導入したと明かしています。

山口さんが、藤井さんにディープラーニング系AI将棋ソフトの影響を強く感じた一手がありました。豊島さんと対局した「叡王戦」第1局、序盤19手目で指した「2四歩」です。従来のAIソフトが示す最善手とは異なる手でした。しかし、形勢評価のグラフはこの手を境に、徐々に藤井さん有利へと傾き始めたのです。

棋士たちはAIとさらなる高みへ 藤井聡太は「人間とは違うレベルに到達しつつある」 - クローズアップ現代 - NHK

AlphaGoがセドル氏に勝利したときに世界はある種の悲観に包まれたように私は感じたのですが(ちなみにこのAlphaGoとセドル氏の対局を扱ったドキュメンタリーは最高に面白いのでお勧めです)、今度はそのAIを使って誰も手に入れられなかったような棋力を手にした棋士が現れるというのは凄まじい話です。

そしてこの藤井さんの話は今後の世界を占う上で非常に示唆的です。これからの時代は、このようにソフトウェアを使って人間や組織の能力を拡張することがテーマになっていくからです。

ボカロで歌唱力を磨くAdo

ようやくAdoさんの話です。そして最初に断っておくと藤井聡太さんの将棋以上に私はAdoさんのことは知りません。前提知識がほとんどない中で書いているので、ファンの方からしたらあまり面白くないことも書いてしまうかもしれません。

前述のAdoさんの紅白での「唱」のパフォーマンス、純粋に感銘を受けたのですが、それよりも「これはボカロの歌い方のようだ」という点が一番の印象でした。私の子供がボカロ曲が好きでよく聴いているので馴染みがあったのですが、到底人間には歌唱不可能だろうと思っていたボカロ並みの歌い方をしており、大変驚きました。

気になってAdoさんについて少し調べたのですが、もともとボカロネイティブ世代の方でボカロ曲には嗜んでいるどころか、今でも自分はボカロコミュニティの一環であるという姿勢で活動を続けているとのことで、それを知って個人的には膝を打ちました。

低く落ち着いた声で怒涛の一年を振り返りながらも、自らはあくまでも「ボーカロイド・シーンの一員」という姿勢を崩さない。「私がシーンの代表というつもりはなくて、ボーカロイド、歌い手の文化を広められたきっかけの一つであったらいいと思っています。『うっせぇわ』からこの文化を知ったという声が多いのは、一人のボカロを愛している者としてうれしいですね」

小学生のとき動画投稿サイトでボカロを知り、14歳で自ら「歌ってみた」動画を初投稿したネットネイティブ世代。「そもそも人前で歌うという選択が頭になかった。でも、顔も本名もわからないままネットに歌を投稿するなら自分でもできるかもしれない。そして私の歌をいろいろな人に聴いてもらい、好きと言ってもらえたら、もっと自分を好きになれるかもしれない。それがこの道に入ったきっかけです。初投稿のときは緊張したけれど『歌い手の一歩を踏み出した!』とワクワクしましたね。自分のいる場所は変わらないけれど、世界がどんどん広がりました」

Ado──「ボーカロイド、歌い手の文化を広められたきっかけの一つであったら」【THE ONES TO WATCH vol.11】 | Vogue Japan

上述のようにボカロ曲には到底人間では歌いこなせそうな速いテンポ、音程の乱高下、急激な転調などがある曲も少なくないですが、そういう曲が当たり前のネイティブ世代であり、そういう曲を歌唱することを訓練する世代であれば、今までの歌手では辿り着けなかった、というか辿り着くことがそもそも想定されてなかった場所に辿り着くことが可能になったのかもしれません。そういう新しい時代の到来を感じさせる素晴らしいパフォーマンスでした。

ボカロも言わば歌手の(賛否両論あるかとは思いますが)代替として生まれた存在とも言える訳ですが、そのボカロによって歌唱力を拡張する人類が現れる。

今後は各分野で藤井聡太やAdoが登場する

これからトップノッチの超一流の世界では、藤井聡太さんやAdoさんのようにソフトウェアによって拡張された能力を持つ人間が次々に登場し、各分野を席巻していくのではないでしょうか。分かり易い分野ではスポーツや学問でそういう選手や学者さんが現れるのではないかと思います。いや、私が知らないだけでもう現れていると思います。

例えば野球の例で言いますと(再びですが、私は野球についてはあまり詳しくはありません)、2020年のサイ・ヤング賞受賞投手であるトレバー・バウアー選手が良い例のひとつではないかと思います。以下の記事で、バウアー氏のアプローチがこのように語られています。

さまざまなデータを収集・分析してプレー改善に役立てるピッチデザインのようなアプローチは、野球のみならずサッカーでもほぼ全てのスポーツで適用できるとバウアー氏。「何を達成したいのか、自分はどんなタイプでどんな球を投げたいのかを理解すること」と述べる。地図で目的地と現在地を把握して、そこに行くまでのルートを考えるという行動に例え、「目標がわかれば、何が必要かがわかりもっとシンプルになる」という。なお、その過程で成果がでているのかを常に確認することも大切だとする。

 なお、野球界で導入が進み始めたHawk-Eye Innovations(ホークアイにも大きな期待をしているようだ。ホークアイでもっともほしい情報としてバウアー氏が挙げたのが「縫い目の方向」だ。「縫い目の方向がはっきり分かれば、そこに回転軸、球速、スピン方向のデータを加え、計算式の精度がもっと改善する。どのように空気力学が作用しているのか、縫い目から判断できる」とバウアー氏。

ASCII.jp:ピッチデザインで野球界にデータを取り入れた サイ・ヤング賞投手

スポーツで言えばソフトウェアはもちろんのこと、将来はロボティクスの分野から学び自分の能力を拡張する選手が出てくることも予想されます。冗談みたい話ですが、トヨタが開発した「CUE」というAIバスケロボットがいるのですが、将来このロボットの開発から得た知見を活かして、NBA史上最高シューターの呼び声も高いステファン・カリーを超えるシューターが出てきてもまったく不思議ではないと思います。

まとめ

テクノロジー(主にソフトウェア)によって人間の能力が拡張されていく、というテーマについての記事でした。今までのソフトウェアの役割は人間のやってきたことの代替であったり、高速化であったり、自動化が主でした。しかしそれが新しいフェーズに入り、今後はそれを使ってどう人間の能力を拡張するのかが問われそうです。そして、これは個人だけではなく組織にとっても同様です。組織としての能力を如何にソフトウェアで拡張するのか、それが今後は問われるのではないでしょうか。

最後に

株式会社HQでは「テクノロジーの力で、自分らしい生き方を支える社会インフラをつくる」というミッションに共に挑む仲間を募集中です。テクノロジーの力で是非、人々が自分らしく、そして能力を最大限に活かせるような、そんな世界を作っていきたいと思っています。興味がありましたら、是非下記採用ページを覗いてみてください。

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