「東大卒」の社会調査からメリトクラシーとジェンダーギャップについて考える~『世界』2023年7月号~

「東大卒」を調査する理由(本文①より)

「東京大学を卒業する人」は、政府や行政、企業において権限や責任を持つ立場に就く確率が高く、法律・制度・運用などの形で社会の骨格を定めていく存在だから

入学前・在学中の状況(本文②より)

女性→男性に比べて出身階層(親の学歴等)や文化資本(保護者の教育に懸ける熱意)が高い
男性→高校までの学業成績という資源にのみ依拠して東大に進学している数が多い。

女性は多様な資源や背景要因を必要とするため、逆説的に言えばそのような条件を欠いた女性にとって東大への進学は心理的・社会的なハードルが高い?

在学中:教員の性別の偏りや、ハラスメント・差別を感知している割合が女性の方が多い

卒業後(本文③④より)

家族・仕事:男性→少なくとも半数は家事育児を配偶者に任せて仕事に専念
      女性→仕事を持ちながらも家庭役割も担い続けている。           そのため収入や役職率の男性との差が大きくなっている

社会観(本文⑤より)

男性→競争や努力を肯定したり、男性は働き女性は家事という考えを支持す る割合が多い(年配男性が多く、若者はそこまで多くない)
女性→ジェンダーギャップへの認識が強い

いわゆる「成功者」と称してもいい東大卒年配男性で上記のような傾向があるということは、メリトクラシー(能力主義)やジェンダー役割の固定化についての問い直しを阻害しているのかも。

所感

記事のなかで以下のような指摘がある。

日本の根深いジェンダーギャップが彼女たち(東大卒女性)のキャリアには反映 ~中略~ そうした葛藤からか、競争や努力を無反省に称揚する彼女たちの意識は、東大卒男性ほどは強くない。

本田由紀(2023),「東大卒」を解剖する 世界 2023年7月号,p52-62

東大卒の男性は上記引用とは真反対の傾向がある。東京大学卒業生(男性)ですら、いわゆる通俗道徳にどっぷり浸かっているとは、思わずゲンナリしてしまう。
ただ逆説的に言えば、社会で活躍する女性の割合を増やすことによって、自己責任論や古いジェンダー感を取っ払うことができるのかも。という浅はかな期待をしてしまった。

参考文献

本田由紀(2023),「東大卒」を解剖する 世界 2023年7月号,p52-62


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