コーラと和風チキンカツバーガー

僕はそんなにコーラが好きじゃない。歯に砂糖のザラザラした感覚が残るのが不快で小さい頃から好きになれない。

じいちゃんはコーラが好きだ。
近くにあるケンタッキーによく二人で行き、
じいちゃんはいつもコーラと和風チキンカツバーガーを頼んでいた。
僕が小学校高学年になったあたりからは、
「じいちゃんはいつものやつで良かけんね」と、常連さながらのオーダーをお願いしてくるようになった。

当時は特に何も思っていなかったけれど、今考えると当時80くらいのじいちゃんがコーラとハンバーガーを頬張っていたのは本当にすごいと思う。
大したものだ。

そんなじいちゃんが死んでもう10年近く経つ。
体調を崩し、結構すぐ死んでしまったじいちゃんに、
母や叔父叔母は
「もう少し世話を焼かせてくれても良かったのに。
でもそれがお父さんらしいね」
と話していた。

じいちゃんはすごくマメだった。
ティッシュの箱や色んな箱のゴミが出た時は、ハサミで小さく切り刻んだり毎日同じ時間に血圧を必ず測ったり、少しでも体に異常を感じるとすぐ病院に行ったり、コツコツ庭の草むしりをしたり。。。

じいちゃんはすごく優しかった。
一緒にお風呂に入ってくれたり、散歩に連れて行ってくれたり、将棋を指したりしてくれた。じいちゃんが好きな暴れん坊将軍と水戸黄門もよく一緒に見た。あまり口数は多くなかったけれど、たまに面白いことを言った。

じいちゃんは昔はすごく怖かったらしい。
母がよく「少しでも時間に遅れるとすごく怒って、1週間くらい機嫌が悪かった」と教えてくれた。でも雨の日に仕事場まで傘を持って迎えに来てくれた娘にこっそりお菓子を買ってくれたらしい。

じいちゃんは歌うのが好きだったらしい。
運動会で酔っぱらって、十八番の千昌夫「星影のワルツ」をよく歌っていたそうだ。母は普段は口下手だが酔うと陽気に歌うじいちゃんに、「もうやめて」と思っていたらしい。じいちゃんの葬式ではこの歌が流れていた。



今僕は故郷を離れて一人で暮らしている。街中に家族の面影を感じる場所はない。

それでもケンタッキーを見つけるとじいちゃんのことを思い出すことができる。

まだ社会人になって浅く、対してお金も持っていないからそんなに外食はできない。

でも、たまにご褒美としてケンタッキーに入る。
「和風チキンカツバーガーのセットで飲み物はコーラで」

あまり好きじゃないコーラのせいで歯がザラザラしながら
じいちゃんのことを今日も思い出す。


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