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いつでも人をぶん殴れる用意

大学生の頃、付き合っていた人が、私の男友達のカノジョと浮気した。
しかもその上、その子と付き合いたいから、別れてくれと言ってきた。

「どうか気が済むまで俺のことを殴ってくれ」

人生で、こんなこと言われることってある?
殴っていいと言われたのだから、殴ってみない手はない。

子供の頃の姉妹喧嘩から、人を殴ったことなどないが、とりあえずやってみよう(←よくわかんないポジティブ)。

漫画の「軍鶏」を読んで、正拳突きを毎晩やっていた経験を活かし、しっかりとわきをしめる。
「ホーリーランド」を読んでいた知識で、しっかりと拳を固め、骨折を予防(←漫画ばかり読んでいる)。

相手の頬を、力任せに拳で思い切り殴る。

あたりはしたが、なんだかイマイチ、うまくいった気がしない。
相手が吹っ飛ぶくらいすごいパンチを打ちたいのに、痛そうに頬を押さえているだけだ。

「今のは、友達の分だ!」

そう言い訳して、今度は二発目。

バキッ!

だけどやっぱり、拳がめり込むような、ばっちり殴れている感じがしない。
納得いかない出来栄えだ。

「これは、私の分だ!」

しかし、三発目の言い訳がない。

「ええと、最後に、私たちみんなの友情をぶち壊したぶんだ!」

なんかこじつけだけど、全部で三発、とりあえず殴ってみた。

だけどなんだか、上手く殴れている気がしない。
それで仕方なく帰ったけど、人を殴るのは難しいと思った。

突然、「さぁ、殴ってください」と言われても、なかなかうまく人を殴ることはできないものだ。
人を殴るにも、訓練が必要だと思った。

例えばこれからも、殴らないといけないことはあるかもしれない。
通り魔にあったり、チカンにあったり、カラスやクマに襲われたり、キャットファイトを申し込まれたり、浮気した彼氏に「殴ってください」と頼まれたり。

もしかしたら今後も、殴らないといけない事態は起こるかもしれない。
しかしそんないざという時、殴れなかったら、話にならない。

そこで私はキックボクシング教室に通い、キックもパンチも精度を上げた。
キックボクシング5級にも受かった。
これで、パンチだけでなくキックもできるようになった。

今なら、もし「殴ってください」と言われたら、ワンツーのパンチを打ってからのアッパーで、3連続コンボができる。

もしその浮気がひどいものなら、ワンツー、アッパー、右フックに膝蹴り、右キック、スイッチしてからの左キックフィニッシュだ。
完璧すぎる。

しかし、今のところ、それを披露する場面はない。
(そりゃそうだ)

まぁそんなもの、披露せずに天寿をまっとうできれば、それにこしたことはない。
人生が平和で良かった、とは思う。

だけど「私はいつでも人をぶん殴ることができる」と用意しておくだけで、なんだか心強い。

いざというとき、私はいつでも戦闘可能だと思っておくことは、とても必要なことだと思うのだ。
(←おまえは花山薫か)

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noidol
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