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梅干し牛乳
私の祖父は大正元年生まれ。
朝、ご飯を食べ終えると、そのお茶碗に牛乳を入れて、梅干しをいれて、潰して飲んでた。
私はおじいちゃんの真似をして、梅干し牛乳を飲むようになった。
私の場合は、コップに牛乳を入れて、梅干しを入れて、つぶして飲む。
朝ごはんの後じゃなくて、これは、おやつ的なもの。
ある日、それを友達に話したら、ひかれた。
「なにそれ!気持ち悪っ」
え!?梅干し牛乳って、気持ち悪いの!?
あまりに小さい頃からおじいちゃんのやることを見てたもんだから、普通のデザート的な物だと思ってたー!
そういえば、よく考えてみたら、私とおじいちゃん以外に、やってる人、見たことない。
私の姉も「本当においしいの?」って疑って、一度もやってくれたことはない。
おじいちゃんの一人娘の母もやってないし、妻であるおばあちゃんもやってない。
酸っぱい梅干しが、牛乳でマイルドになって、甘酸っぱい感じでおいしいのに‥。
おじいちゃんの家にいったら、私とおじいちゃんはふたりでニコニコしながら、朝ごはんの後に一緒にそれをのんでいた。
あるとき飲み屋でその話をして、「嘘だと思うなら、やってみて!」とすすめてみた。
その場でやった友人は、「嘘だった!」と言って、梅干しを捨てていた。
美味しいと思うのは、特別な訓練を受けた人に限るんだな‥。
そしてそのおじいちゃんは、私が高校生の頃に亡くなった。
亡くなったおじいちゃんを見た時、私は‥。
おじいちゃん、ハゲた頭にブラシを叩きつけて、毛を生やそうとしていたのに、結局、毛が生えなかったんだな。
‥と思ったことを覚えている。
悲しいと言うより、さみしい。
私はおじいちゃんと仲が良くて、おじいちゃんのやることをいつも真似してた。
おじいちゃんといるのは楽しかった。
そして今や、梅干し牛乳をやる人は私だけになった。
この間、久しぶりに梅干し牛乳を飲んでいたら、息子が「なにそれ」と興味津々だった。
オススメしたけど、飲んでくれなかったが。
私の代で、この「梅干し牛乳」の文化は無くなってしまうのか‥。
まぁ、それはそれで、悲しくはない。
それはただ、楽しいことがひとつ減ってしまうだけの、ことなんだ。
それは、悲しいというより、さみしいだけだ。
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