映画「ナポレオン」感想・レビュー
どうも。島崎です。
今月から公開されているリドリー・スコット監督最新作
「ナポレオン」鑑賞。
公開日に観てから興奮冷めやらぬ!
至高品を堪能した気分…色々と書かせてください。
作品詳細・あらすじ
”フランスの英雄”と称されたナポレオンの生涯を大スケールで描いた伝記映画。数々の戦いに勝利し、フランス皇帝にまで上り詰めた軍人の姿と、妻・ジョゼフィーヌへ愛を捧げた一人の男としての姿をドラマティックかつリアルに捉える。
「ブレードランナー」「エイリアン」等、数多くのヒット作を手掛ける巨匠リドリー・スコットと
「ジョーカー」でアカデミー・主演俳優賞を受賞したカメレオン俳優ホアキン・フェニックスの豪華タッグです。
彼らは「グラディエーター」依頼の再タッグ。
若きホアキンは意地悪な皇帝役を演じて、その演技力が大きく評価されました。
ホアキン自身も願ったり叶ったりのリドリー・スコットとの再タッグで、かなりの熱量を持ち、作品に挑んだそうです。
今回のナポレオン、大きな見どころは
没入感満載!大迫力の戦闘シーン
迫力のある戦闘シーンはリドリー・スコットお得意の映像。
今回も常連のプロフェッショナルなスタッフたちが軒を連ね、大迫力のシーンをこれでもか!というぐらい魅せてくれました。
その戦闘シーンは「グラディエーター」同様、
まるで観客の私たちも戦闘の中に巻き込まれているような、リアルに特化した没入感が最大のポイント。
思わず目を背けたくなる残虐なシーンも多くありますが、「これがこの時代の戦い方だ」と歴史を目の当たりにしているような感覚と、美しささえ感じてしまう戦闘の混乱を映したシーンたちは圧巻です。
また、ナポレオンが指揮を取った戦いは数多く、最初に名を挙げた「トゥーロン攻囲戦」から、イギリス軍に敗北するナポレオン最後の戦い「ワーテルローの戦い」まで歴史上に残った戦闘シーンを迫力はそのまま、余すことなく劇中に盛り込まれています。
特に、ナポレオンの戦略的な指揮により大勝利を収めた「アウステルリッツの戦い」では、敵軍を凍った湖の上におびき寄せ、そこに大砲を放ち湖へ沈めた戦法を再現。
ロケ地の大野原を堀り、そこへ実際に氷を張って当時の環境を極限までリアルに近づけ、特殊効果等と融合させながらダイナミックかつ臨場感溢れるシーンに作り上げられています。
ナポレオンが関わった歴史的な戦闘を観ていると、
持ち前の頭脳と軍事的才能で軍を率いる姿に恍惚とする。
しかし、勝利に固執し、民間人や軍を大量に犠牲にして手段を選ばない”悪魔”のような人格に身震いもするのです。
この「ナポレオン」では、”フランスの英雄”と称えられてきた彼の姿を淡々と映し、
「今一度、彼が英雄と呼ばれる存在にふさわしいかどうかご確認ください」
と、私たち観客に問いかけてくる作品。
新しい視点の描き方。というか、とても今っぽいですよね。
これってなんとなくの雰囲気で罷り通ってきたけど、やっぱおかしくない!?みたいな風潮。
曖昧だったことが正義によって裁かれている時代にぴったりの、現代を象徴するような問いかけ型の作品。
軍人・ナポレオンの姿は、勝利とフランス、また出世の為には血も涙も捨てる冷酷な人物として描かれていましたが、私はなんだか嫌いになれませんでした。
犠牲者も多く出し、人生最後の「ワーテルローの戦い」では惨敗、2度も島流しになったちょいダサな姿を観てもなお、嫌いになれない。
その一つの理由には、妻・ジョゼフィーヌとの愛憎関係に溺れた彼の姿を知ってしまったのが大きく関係しています。
この作品、軍人・ナポレオンとともに、生涯を通じて愛に生きた一人の男・ナポレオンの姿も描かれています。
トゥーロン攻囲戦で功績を上げたナポレオンは、ある時、ジョゼフィーヌという女性と運命的な出会いを果たし、結婚します。
ナポレオンとジョゼフィーヌの関係は、
言わば”共依存”。
常に互いを求め、戦いで遠征中のナポレオンは戦闘開始直前でも頭の中はジョゼフィーヌのことばかり。
ジョゼフィーヌは、家を空けがちなナポレオンがいない寂しさから浮気に走り、その浮気情報をナポレオンの部下が仕入れてナポレオンの耳に入り、遠征中にも関わらず帰国してジョゼフィーヌへ会いに行く…少し不健康な関係ですね。
とにかくナポレオンはジョゼフィーヌにぞっこん。
独占欲が強く、少々理不尽な理由でジョゼフィーヌを束縛しています。
ただ、ジョゼフィーヌも強い女性で、ナポレオンへ「私がいなければあなたはただの男」と軍人として出世したナポレオンのプライドをへし折る発言をかましています。(最高)
互いに遠慮をせず、2人は2人なりの愛し方で関係を築いていました。
しかし、残念ながら2人の間には子供が出来ず、後継者を作らねばならないナポレオンはジョゼフィーヌと離婚し、年下女性と再婚。
その後、ジョゼフィーヌは病に倒れこの世を去り、ナポレオンは皇帝からどんどんと成り下がってしまいます。
劇中で垣間見えるナポレオンの自信がない姿。
作品序盤の「トゥーロン攻囲戦」では、出陣前に小声でボソボソと言葉を発し、自身を落ち着かせる素振りを見せたり、妻・ジョゼフィーヌの前では感情を爆発させて自分を認めるよう声を荒げたり。
自分に自信がなく、常に不安で心配性だったナポレオンだからこそ、ジョゼフィーヌへ狂気的な愛情を求め、愛を通じて安心を得たかったのだと思います。
ジョゼフィーヌと別れてから戦いにも身が入らず、皇帝の座もはく奪され、分かりやすく弱っていくナポレオン。
序盤から終盤まで終始不安定なナポレオンの様子を、ホアキンは見事に演じ切っています。
「ジョーカー」しかり、ホアキンに情緒不安定な役を任せれば右に出る者はいないと思っています。
ツン、と指で押したら崩れ落ちてしまう脆さを表現できる人。観客を裏切らない、確かな演技力を今回も魅せてくれました。
また、ジョゼフィーヌ役を演じた
ヴァネッサ・カービー。
近年の「ミッション・イン・ポッシブル」ではポイントとなる役どころで注目を浴びていますね。
妖艶で堂々とした立ち振る舞いでナポレオンを支えるジョゼフィーヌの人物像を物にしていました。
激動の時代に揉まれ、常に妻としての存在意義に葛藤する姿を繊細に演じていました。
野心に燃え、フランスを愛した”ナポレオン・ボナパルト”という一人の男の生き様を肯定も否定もせずに描くこの作品。
私たち観客を歴史の目撃者として巻き込み、彼の評価について問いかける。
勿論、見る人によって彼の印象は異なるだろうし、
彼は善人ではないかもしれない。
後半、彼が度々口にしていた「フランスの為に」という言葉は、自身を守る為の言葉だったのではないかと思えるほど。
しかし、彼の戦略によってフランス軍が歴史的勝利を収めた事実や、
生涯を通じて愛に生きた姿には、胸を打たれました。
鑑賞後、タイムスリップを経験できたような余韻がずっと抜けません。
映画館のスクリーンで、是非あの没入感を体験して欲しいと思います。
以上、「ナポレオン」感想・レビューでした。