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いつもの廊下 第8話 最終話

最後の話。


その時の僕は、親から貰ったものと


あたかも、自分で手に入れたように感じていたものと


偶然をよそおった必然と・・


一緒に暮らしていた。


幸せで、楽しくて、


それでいて


順風満帆のようにも思えたし



それだけで良かった。





☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆





僕は、神様。



こどもの頃、ハムスターを二匹飼っていた。


ネズミ算式に増えなかったので、

オス同士かメス同士だったのだろう。



家と言うか・・


かごの中に、まず寝床のワラを敷いてやる。


そして


砂を入れたトイレ、


それからクルクル回るやつ。


水のゲージに、立派な家(寝床)まで・・


今時のハムスターは、恵まれているなぁ。


そんな風に感じながら・・


冬は、ヒーターも2個付くし、エサは食べきれないくらい買ってある。


2匹は、とても仲が良くて・・


いつも、おがくずと綿で自分たちの世界を自分たちの好きに創り上げていく・・


僕が与えた、ものをつかって色んなことをするんだ。


わくわくする。見ていて楽しかった。


エサをワラの中に埋めて隠す・・


その様子は、あたかも、へそくりか預金のようだ。


野生の本能か・・

エサが無くならないことに、少しも気がついていない。


僕が、補充するんだからね。



まあ、わからないのも仕方がない。

それは、無理もない。




それでも、2匹は幸せに暮らしていたと思う。

少なくとも、僕からは、そう見えていた。



ある日、何かのきっかけでハムスターのかごを全面リニューアルしようと思った僕は、新しいアイテムやエサ箱などを買ってきて、それに挑んだ!



嫌がってビービー威嚇してくるハムスターを外に出す。


何度も、本気で手を嚙まれた。何度


流血。


少しイラっとするけど、仕方が無い。


こいつらは、僕が神様なのを知らないのだから・・


しっかりとコミュニケーションがとれていなかったのが原因だ。


日頃から、神様としっかりコミュニケーションしておく事を強くおすすめる。


新品の状態まで掃除して・・


新しい家や、ゲージを付けてやる。


さあ、楽しそうな新世界の出来上がりだ。



ハムスターを入れよう!


と思ったら。

一匹が動かなくなっていた。


多分、かごから出されたショックで死んでしまったんだ。


僕は、後悔した。



そのあと、すぐ・・

残されたハムスターも、この新世界を楽しむことなく死んでしまった。


寂しかったのかな。



僕は、また後悔した。



妻が亡くなって

一人ぼっちなってからの僕は、何度も、この光景を思い出した。


あの時の生き残ったハムスターは、僕だったんだ。



こりゃ、僕も、もうすぐ死ぬな・・



そんな風に思っていた。





☆☆☆☆☆☆





告白



この春、上の息子は、高校生になる。


彼は、まだ自分の生みの母が、病死した事を知らない。


当り前だが、いまのママを生みの母だと思っている。


さあ、真実を伝える日の朝が来た。


大丈夫、彼なら十分理解できる。



全てを、彼に伝えた。


生きていて良かった。


逃げなくて良かった。


あの時、現実を改変させなくて本当に良かった。


関わってくれた全ての存在に感謝する。


ただ一つ改変された現実がある。


医者から障碍が残るだろうと言われていた息子に障碍のかけらも見当たらない。


「この子は、大丈夫やで」


死にゆく妻が、最後に言った言葉は、本当になった。


「ありがとう」


「良い家族つくったよ!」


天国まで届くかな。


おわり


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