私と音楽
小さく折り畳んだハンカチを手の中でもてあそびながら、
散りゆく桜を見ていた。
欄干に肘をつけ桜吹雪を見つめる。
あまりに美しい景色に、私はとても小さくなっていく。
矮小化され折り畳まれた私は
誰かのポケットに
入れられて、連れ去られたっていい。
パーカーのフードで頭を隠して、
黒いサングラスで視線を隠して、
季節外れのマフラーで首を隠して。
幸せそうな人たちを見ている。
私だけが一人みたいで、孤独。
孤独を愛せるのは、私だけの権利なんだよと、
肥大化した自尊心が戦場へ行こうとする。
ノイズキャンセリングヘッドフォンをフードの上からつけて、
音楽をかける。
そこはもう私と音楽だけだ。
私は音楽とふたりで桜を見ながら歩いてく。
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