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エッセイ「徒然なる日々の瞬き」4.猫
ひとつ前のアパートに住んでいたころの話。そこにはアパート専用の小さな駐車場があった。ペーパードライバーのわたしは、特に利用することなく引っ越す日を迎えるのだろうと漠然と思っていたのだけれど。とうとうそんなわたしにも、駐車場に立ち寄る理由ができてしまった。猫である。
ある日、ひょっこり現れたその猫は、わたしが見つけたその日から、アパートを離れるその日まで、ずっと駐車場にいた。わたしはその猫のことを勝手に“クルコちゃん”と呼ぶことにした。駐車場へやって“来る”から“クルコ”。おおよその猫がそうであるように、この猫も変わらず、車の下が大好きなよう。出かけるときも、帰宅のときも、いつも車の下がクルコの定位置だった。
それから数年を経て、わたしは県をまたいで新しいアパートへ引っ越した。まったく知らない土地である。ふたつ目のアパートでの生活が幕を開ける。道を歩き、スーパーへ行き、帰宅する。また道を歩き、仕事を済ませ、帰宅する。もちろんここにクルコはいない。ふらっと道を歩く野良猫はいるけれど、彼らは本当に自由で気づけばどこかへ消えてしまう。この生活に不自由はないけれど、少しばかり猫が欠けている。
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