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エッセイ「感覚」9.流し込む

 デザートを召し上がりましょう、カフェ巡りなんていかがかしら。アフタヌーンティーなんかも良いわね……。
 残念ながら私はこんな会話には苦笑いを返すことができない。実際にこんな話し方をするかどうかはさておき、内容が気に入らないとか、虫唾が走るとか、そういうことではない。私は甘味が苦手なのだ。哀しいことに、そのほとんどは食べられない。

 これまで、それなりに満足のいく学生時代を過ごしてきた。ありがたいことに私は学校が好きだったし、新しいことを覚えることも楽しいと思える環境にいた。身体を動かすことは得意ではないけれども、それで哀しい目にあったことは、ほとんどない。
 けれどこれが甘味の話題となれば、まったく話は違う。どうしても女子会をしましょうとなればカフェか喫茶店が多いし、そういう場所へ行けば必然的にパフェかパンケーキか、はたまたあんみつか。少なくともここでスパゲッティを選択するのは、少し間違っているような雰囲気になってしまう。

 もともと食の話をするのがあまり得意でない私からすると、甘い物は苦手なのよね、なんてそう簡単に言えたものではない。けれど言わない選択をしたのであれば、目の前に甘味が出されることも飲み込まなければならないだろう。
 そういうわけで私は、流し込むという技を覚えてしまった。なんとなく美味しく味わっている風を装いながら、小さな一口をそのまま流し込む。

 これまでいろんなお店に連れて行ってくれた友人たちよ、隠していて申し訳ない。だけれど、あなたたちとの時間は、どんな甘味よりももっと濃厚で、とても素晴らしいものだと思っています。
(ちなみにチーズケーキだけは、どういうわけか大好きです)


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