短篇小説「分かれ道」
それはそれは長い道でありました。明るい道もあれば暗い道もありました。優しい道もあれば険しい道もありました。この道をゆく旅人たちは、各々好きな道を選ぶよう促されます。
一人目の旅人はこうでした。それほどでもない中くらいの荷物に、踵の擦れた靴、そして雨を凌ぐ傘を持っていました。旅人が分かれ道にやって来ました。行き先が決まっていたのでしょうか、旅人は迷うことなく一つの道を選びました。目的地にたどり着いた時、旅人はこう言いました。優しい道であったよ、と。
二人目の旅人はこうでした。とても一人では運べないだろうというほどの大荷物を台車に乗せ、ただ布を当てただけのような古びた衣装に、たくさんの豆ができた足で歩いていました。旅人が分かれ道にやって来ました。そこで足を止めた旅人は、大荷物の中から斜に無に取り出した水筒を開け、最後の一滴を飲み干しました。そして大きなため息をつき、一つの道をゆきました。目的地にたどり着いた時、旅人はこう言いました。暗い暗い道であったよ、と。
三人目の旅人は、これまでの二人とは違いました。煌びやかな衣装を纏い、綺麗に結われた長い髪をなびかせ、これまた美しい白い毛を持つ馬に乗って現れました。旅人の前後を囲うように同じく艶やかな白い毛を持つ馬に乗った従者たちがおりました。旅人が分かれ道にやって来ました。旅人は迷いなく目の前の一本道へと進もうとしました。それを従者が止めます。すべての道の安全を確認しましょう、と。けれど旅人は耳を貸しません。そして一人、髪をなびかせながら颯爽とその道を駆けて行きました。
目的地にたどり着いた時、旅人はこう言ったのです。そもそも道は一本しかなかった、と。
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