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エッセイ「感覚」1.触れる

 字を書くときのペン先がノートに触れる、あの感覚。サッサッという音と同時に、ジワッと腕にまで伝わるノートとの触れ合い。これが何とも言えない幸福感を与えてくれる。

 実際、今この原稿を書いているのはスマホのメモ帳アプリであって、ノートではないのだが、本当であれば何でもかんでもノートに書きたい。兎にも角にも「ペンで字を書く」ということに勝るものはないのだ。でもここで一つ困ったことが起きる。私は新品が大好きだ。どんな場合においても、新品のペンで新品のノートに書きたいのだ。そうするとどうなるか。それはもうお察しの通り、どんどんどんどん、ペンとノートが増える。そしてそれらは最後まで使い切ることなく、本棚へと戻される。もちろん、それをすべて置いておけるだけのスペースもない。だからいま私は、致しかたなくこうしてスマホのメモ帳アプリを使っているというわけだ。

 それにしても「字を書く」という行為は本当に面白い。鉛筆、シャープペンシル、ボールペン、どれを使ってもその書き味が違う。同じ会社のものであっても、同じ色であっても、みんなそれぞれ違うのだ。濃いも薄いも、太いも細いも、その特徴は千差万別。人間も同じ。みんな違って、みんないい。そうだ、そういうことだ。

 なんて色々書いているとやっぱり直筆がいいなあ、なんて思って作文用紙でも買おうか、という気分になっている。作文用紙であれば1枚ずつで使いきれるし、何より作家さんみたいじゃないか。なんだか格好いい。うん、そうしよう。



『エッセイ「感覚」2.食べる』はこちらから読めます🌷

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