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92.夢でのずうずうしいお願い

ずうずうしい茂庭綱元のお話しです。
私の前世の茂庭綱元の持ち曲が見つかりませんでした。そのため、好みの曲を決めて自分の曲にしていました。

おっと、初めてこのノートをご覧になる方には、何のことやらわからないと思います。前回の91回をお読み下さればわかりますので、先にそちらをご覧ください。

さて、ずうずうしいお話しとは、前回お話ししましたように、家元が作曲した曲を私が勝手に前世の人達の曲と決めていました。当然家元は微塵もそのようなことを意識して作曲などしていませんでした。
ところがある日のこと、家元の夢に戦国武将らしき人物が現れて、「わしの曲も所望する」と言ってきたと言うのです。誰なのかと思ったら、「おににわつなもと」と名乗ったというのです。

私の前世が、茂庭綱元と言いましたが、実は以前は、「鬼庭綱元」と名乗っていたのです。がしかし、以前の読み方ですが、歴史の本には「おにわつなもと」とフリガナがふってあったため、「おにわ」が「もにわ」になったのだと思い込んでいました。

この名前の変更のことは史料に詳しく載っています。
綱元が豊臣秀吉に呼ばれて話しをしているとき、「その怖い鬼の名前は何で付けたのじゃ」そう秀吉に訊かれたとき、「先祖が茂庭村にたどり着いた時、村人が大蛇に困っておりました」と身振り手振りよろしく綱元は説明を始めました。「そこで先祖が大蛇退治をしましたところ、鬼にも勝ると褒められ、それ以降、鬼庭を名乗るようになりました」そのように応えたところ、「それなら、もともと茂庭村に住んでいるのだから、茂庭に変えよ」という秀吉の命令で変えたと記録にあります。

フリガナがなかったため、てっきり他の資料に書かれていた「おにわ」と思い込んでいました。
家元の夢に現れた時に、よくよく考えてみると、秀吉が怖いその名ということは、「おにわ」では怖いと感じたりしない訳ですから、「おににわ」と名乗っていたと気付きました。
何と自分の前世の名前を間違って呼んでいたとは情けない話しです。

ですから、私の前世の鬼庭綱元は、家元の夢の中に直談判して、自分の曲を頼んだのです。

まあ、話しだけならそれで終わるのですが、家元は実際に作曲して下さいました。それもとんでもない立派な曲で、三部構成となっていて、篠笛:能管:篠笛と三本の笛を使い分けて吹く曲なのです。

その曲が完成した後のことなのですが、また夢に鬼庭綱元が現れたというのです。今度はじーっと黙っていて、消えたといいます。家元は、「きっと気に入らないところがあるんだ」と思ったので、出だしの部分を直したところ、夢に出なくなったので、納得したのだと思ったと言いました。
何とずうずうしい前世の私です。今世の私にはとても「所望する」などとは言えません。

曲名は、「焰(ほむら)」です。

今回も読んで下さりありがとうございました。感謝いたします。

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