小説の、視点について
小説を書くとき、何人称何視点で書くか、という問題がありますよね。みなさん、自分の書きやすい視点があると思います。
私は一人称視点で書いています。書きやすい、というのもありますが、残念ながら三人称視点が苦手、というのもあります。
今回の記事は「私が視点についてわかりやすく説明する記事」ではなく、私が「わからないことをつらつらと書くだけ」です。みなさまのお役には立ちませんが、私の悩み……と思っていただければ幸いです。
どうして今さら視点の話をしているのかと言いますと……
デビュー作を書いているときに、今までも考えていたはずの視点について、どうも理解しきれていなかったとわかったからです。あらためてじっくり向き合いました。
地の文がどうにも説明くさい。どうしてだろう? と考えたときに、しっかり主人公の視点で書いていなかったんです。主人公の視点で書けば、説明ではなく、五感で感じている描写で書けるはずなんです。でも、それが難しかった。そして、今もとても難しい。
例えばですが、「朝、目を覚まし、いつものトーストを食べた」とか、書いちゃうんです。これでも間違いではないのですが「遮光カーテンの隙間から朝日が差し込み、埃がちらついている」と書くほうが、主人公が目覚めたときに見えているものなんですね。そういう視点の話です。
いまさらそんなこと知っているわい! という方ばかりでしょうが、自分の整理のためなので、すいません。
小説の視点は主に下記の四つだと思います。
・一人称視点
・三人称視点(神の視点)
・三人称一元視点
・三人称多元視点
一人称視点はわかりやすいです。拙著『ナースの卯月に視えるもの』は一人称視点です。すべて「私は」で書かれていて、主人公である卯月の視点です。卯月に見えたもの、聞こえたもの、感じたものしか書けない、という視点です。だからこそ、「思い残し」のような、卯月にしか視えないものの描写も書けます。ほかの人にはどう見えているのか、どう見えないのか、は書けません。
次に、神の視点と言われる三人称視点です。これは、小説を書くうえではあまり良くない、と言われている視点なので、私は使いません。映画のように、俯瞰ですべてが見えている状態の視点ですね。主人公や登場人物に見えていないものも書けますし、誰が何を思っても全部書けてしまう視点です。小説にはあまり向かないと言われているので、私は使いません。
問題は、次です。
三人称一元視点。つまり、三人称だけれど視点が固定されている書き方です。これは、拙著であれば「私は」のところを「卯月は」に変えれば成り立つのではないか? と思っていました。でも、よく考えだすと、頭がこんがらがるのです。
主人公がビールを飲んでいる場面とします。
「私は、ビールジョッキをかたむけた」
「卯月は、ビールジョッキをかたむけた」
一人称視点なら、主人公が自分でビールを飲んでいることを知っているし、見えているし、行動しているので、そのまま書けますよね。
じゃ、「卯月はビールジョッキをかたむけた」。
これって、誰が見ているんですか?
卯月が? 自分で見えていることを、卯月が、って書くってことであっていますか? 私が「秋谷はキーボードを打ち、noteを更新している」って書くってことですか?
「卯月は赤面した」
これは、一人称じゃ書けません。自分で自分の顔が赤くなっていることは見えないからです。でも、三人称視点なら書けますよね?
じゃあ、この赤面を見ているのは、誰視点ですか?
卯月視点じゃないですよね? だって、卯月からは見えないから。
「卯月は顔が熱くなるのを感じた」
これならわかります。卯月視点でも書けるから。
この、三人称一元視点って、結局誰がどこから見ているの???? という疑問が、私のなかでどんどん大きくなって、頭がこんがらがっているのです。主人公のハンディカメラみたいなイメージですか? 三人称一元視点だから、主人公から見えないものは書けませんよね。でも、主人公のことは見えている。本人から本人は見えないのに、視点はどこにあるの????
商業デビューしておいていまさら、って思いますよね。ええ、私も思います。でも、知ったかぶりはできません。
なら、ずっと一人称視点で書けばいいじゃない、ってそう言われればそうですけど「書かない」と「書けない」は違うじゃないですか? だから、考えているのですけど、考えれば考えるほど、頭がごちゃごちゃしてきます。
最後の、三人称多元視点は、もっとごちゃごちゃします。章ごとなどに視点が入れ替わる分にはいいと思いますが、ひとつの章の同じ文章のなかで視点が入り混じるってことですよね。残念なことに、私は三人称一元視点で書こうとしていても、いつの間にかこの多元視点になってしまいます。だから、三人称が苦手なんですけど(苦手というか、書けない)。
ここでごちゃごちゃ書いていても仕方ないので、今度編集者さんとお話するとき、聞いてみようと思います。いつか私がすごく上手に三人称視点を使いこなしていたら、あいつやっと理解したのか、と笑ってやってくださいw
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