これからクリエイターに求められる『想像力と創造力』を考える
これからの時代、年齢や学歴など関係なく、誰もがクリエイターになれる時代です。
私自身、しがない高卒の22歳ですが、フリーとして40歳50歳のディレクター、カメラマン達と仕事をしています。
さて、一昔前までは「クリエイター」や「ディレクター」を名乗る人などごく少数のテレビマンくらいで、敷居の高い職業であると思われてきましたが、今はどうでしょうか……?
この10年程の間に出現した、ゲーム実況者、Youtuber、ボカロP。センスと努力があれば、コンテンツを作ることなど簡単であると若者にバレてしまいましたね。
実際、創ろうとする意思と向上心さえあれば誰もがクリエイターになれるのが現代ですし、これはいい傾向だと思います。
とはいえ、それは「クリエイター」が特別視されなくなることも意味します。
「作れる」で満足し、「少しでも良いものを作る」という姿勢が薄れていく事もあり得ます。
これからの時代、クリエイターが生き残るために必要なのは『想像力と創造力』だと感じています。
想像力とは、「イメージする力」
創造力とは、「イメージを形にする力」です。
ここではCMやMVの撮影を例にとりますが、音楽制作でも同様の事が言えると思います。
想像力は、作品を想像する力、目的を考える力
薄っすらだったり強固だったりと違いはあれど、クリエイターがものづくりを考えるところには「目的地」や「完成形」のイメージがあるものです。
CMであれば「新商品の特徴」や「差別化を図った点」「効能」など。
それを受け手に伝えるために、どんなコピーを使うかを想像する。どんなロケーションで撮ればそれが表現でき、それが伝わるか想像する。どんな音楽に乗せるか想像する。
これは要するにセンスであり、何を見て育ったか、何を考えて育ったか、どんな事を望むか……という思考の傾向によって大きく変わりますし、仕事とする場合はクライアントの意向にも依ります。
とはいえ、どのような出来上がりの作品を提案できるか、想像できるかという点で、向上の余地があるのではないかと思います。
創造力は、物事を実現させる力であり、想像したものを具現化させる力。
想像したロケーションを現実に用意できる人脈、シネマ用レンズを用意する資金力、優秀な技師との繋がり、3DCGを創り出す技術、想像したLookを的確にオーダーできる語彙力と引き出しの量……それらでもって、想像した作品を創造する。
これは新生クリエイター達が『今のところはまだ』苦手とする分野であり、ここには食い込む余地があるのではないかと感じます。
とはいえ、この差が埋められるのもそう遠くないはずです。限られたスタジオや監督作品だけが秘蔵していたテクニックや、機材などもかつてよりは容易にアクセスできます。
今後は、若いクリエイター達が力を増していくはずです。しかも、もともとネットに馴染みがあることも手伝い、若いクリエイター達は今後も若い世代に支持され続けていくでしょう。
その上、受け手との間に「自分達の見たいものを見せてくれる、やってくれる」という信頼が生まれており、SNSやコメント機能等も手伝ってその距離は近く、繋がりは強固です。
マーケットとしての需要がそちらの方に偏向していきますから、旧来のクリエイターが入り込む余地はそこに無く、新生クリエイター達と同じように「受け手の見たいものを見せる、やる」か、「新生クリエイターの想像を創造する」事になるでしょう。
テレビの存在意義であり、残された最後の砦である報道ですら、オンライン化に頼る時代。
「クリエイター」という言葉の意味自体が変わってきているわけで、それに対応できなければ……あと10年、20年後には存在意義を失うでしょう。
技術や機材を持っているところは安泰、とも言い切れません。
民生向けの機器も進化していますし、ハイエンド機器の良さが必ずしも理解されているわけでもありません。
クリエイターになる為の敷居が低くなる分、各々に拘りレベルの差異ができるとも考えられます。
アナログレコードやフィルムカメラ(はまだ微妙ですが)の様に、これが「オールド/ハイエンド機器は凄い!」という風潮に繋がり、落ち目だったものが息を吹き返す例も無くはないですが、「作れる」で満足し、「少しでも良いものを作る」という姿勢が薄れていく事もあり得ます。
音楽制作に例をとれば、部屋鳴りやテープ、コンソールの歪といった拘りよりも、リコール性を重視してDAW内だけで完結させても勿論「クリエイター」といえますから。
まあ要するに、未来の事は想像するしかないのですが、一億総趣味人時代というか、時代がそういった方向を志向している事は意識しておくべきだと思います。