見出し画像

勝手に広告を作った「お節介話」

フォトグラファーの高木隼人と一緒に「#勝手に広告」という企画をやっていました。彼の物撮りのトレーニングと、僕のグラフィック制作のトレーニングを兼ねて、企業やサービスの体験から勝手に広告を作っちゃおうという、なんともお節介な企画です。

これまでも何度か作ってみたのですが、今回紹介する「富士山食パン」については、結構真剣に色々と考えて作ったので、備忘録的に制作過程を書こうと思います。

今回は広告として目的を持って出稿しているわけでもなく「勝手に」作っている訳ですから、定量的な評価はできそうにありません。
一方で、定性的な評価は可能だと思います。企業様に依頼されるわけでもなく商品の広告を「勝手に」作っている訳ですから、まず「その企業様に気に入ってもらう」という軸で評価が可能です。というか正直、気に入ってもらえたらいいなぁという思いで作っていました。

FUJISAN SHOKUPANとは?

今回勝手に広告を作らせていただいたのは、山梨県の富士河口湖町にある食パン専門店FUJISAN SHOKUPAN様です。静岡県周辺の気になる企業様を探していたときにInstagram上で出会い、ネーミングいいな!と思い感動したのを覚えています。

FUJISAN SHOKUPANとは、山梨県の富士河口湖町にある食パン専門店です。山梨県産小麦・巨峰ジュースを使用した2色の富士山型食パンを筆頭に、富士の天然水、ふじがね牛乳、山梨県産小麦かいほのかなど地元素材にこだわった素敵なパンを提供してくれています。

店名にもなっている主力商品のFUJISAN SHOKUPANは、一斤が台形の形をしたパンなのですが、これを切ると、断面に富士山が!現れます!

僕自身は札幌生まれ札幌育ちで、富士山を近くで見たことはないのですが、やっぱり日本人にとっては特別なんですかね、富士山をモチーフにした食パンって、言語化できない魅力があるなぁと思いました。語彙力がないだけだと思いますが。

webサイトから購入可能で、実際に購入させていただいたのですが、食パン自体はもちろんのこと、webサイトやパッケージ、ロゴなど至る所にまでこだわり抜いたブランドを感じました。威厳が有りながら接しやすくふわっと優しい、「富士山が食パンになったらこんな感じかなぁ」をあらゆるアウトプットで表現した素晴らしいブランドだと思います。

コンセプトの骨子

この魅力をうまく表現するために、広告のコンセプトを考えます。
コンセプトを考える上で、商品の強み(差別化の要因)と、ターゲットについて考えなければなりません。

商品の強みは、ターゲットにとってその商品を選ぶ理由。つまり競合商品に対しての優位性を持つポイントということになります。
FUJISAN SHOKUPANは、その名の通り食パンです。しかし、ただの食パンではなく、水・牛乳・小麦などの材料を地元産にこだわり、地元に愛のある食パンです。

このように整理すると、差別化要因は「地元の材料を使った食パン」であり、競合商品は「他の全てのパン」となります。

もうひとつの切り口として、誰もが知っている「富士山」というモチーフと、「食パン」との掛け合わせという斬新な切り口が、この商品の魅力であると考えることもできます。大量に流通してるわけではなく、ここでしか買えない食パンであることに意味がある。

この場合、競合商品は「他の全てのお土産」となります。

例えばターゲットを観光客とした場合、富士山・河口湖周辺に訪れた観光客がお土産を選ぶときを想定するので、富士山キーホルダー、富士山せんべい、富士山まんじゅう、富士山カレーなど「富士山」のお土産は全て競合になります。

上記2つの切り口で、FUJISAN SHOKUPANがより強く差別化できるのはどちらか。
今回は、ターゲットを「河口湖、富士山周辺の観光客」に設定し、全てのお土産を競合に取ることで、「食パンであること」に優位性を持たせることができると考えました。

キャッチコピー

ターゲットを観光客としたことで、食パンであることに優位性を持たせることができるため、訴求するべきポイントはこのお土産が「食パンであること」です。

「食パンであること」で、作り手・消費者はどう思うのか?を考えます。

作り手の想い

これに関してはwebサイトやinstagramなどの発信から読み取れる主観でしかないのですが、富士山の麓で富士山の形をした食パンを売ることに意味があって、知っている人にはもう一度買って欲しいし、まだ食べたことない人には一度手にとって、食べて、見て、楽しんでほしいという作り手側の思いがあるのかな、と考えました。
また、路線としてはキャッチーな商品なので、各種メディアでの拡散も視野に入れてるはずだと思いました。

消費者の思い

実際に購入した人々はどういう印象を抱いているのか、instagramを使って調査して見ました。

結果としては、「富士山の形をした食パンを食べている"自分"」に価値を感じていると思いました。こんな面白い食パンがあるよ!という投稿や、富士山に見立てた食卓のレイアウトなどといったUGCが作られていました。

FUJISAN SHOKUPANは、食パンという一見平凡なコンテンツに「富士山」を掛け合わせることで、消費者の生活に自然と馴染みつつ、ならではの異彩を放つような存在であると思いました。

USP

仮に競合の商品を「他のすべてのパン」とした場合は、素材を強調して「富士山の天然水使用」とか、立地を強調して「富士山の麓、河口湖の近くで買える」ことを主張することになると思います。

一方で、作り手や消費者の想いを踏まえると、やはり競合は富士山グッズで、「パンであること」それ自体が強みだと考えました。

コンセプトとキャッチコピー

FUJISAN SHOKUPANそれ自体の特徴的なビジュアルを見せながら、生活に馴染む食パンであることを訴求することが必要と考え、写真では「富士山らしさ」をこの食パンで再現し、キャッチコピーで食パンであることを伝えると、収まりがいいように思いました。

富士山らしさの表現は、「逆さ富士」を採用しました。これは水に恵まれた土地で作られた食パンであることや、地元素材を使って丁寧に作られたことを意図したほか、FUJISAN SHOKUPANのロゴが逆さ富士に見えたためでもあります。

富士山を象る食パンの顔となるロゴが逆さ富士を採用しているなら、広告でもその思想で展開すべきだと考え、食パンを水面に反射させた「逆さ富士山食パン」を写真で表現することに決めました。

キャッチコピーでは、ビジュアルを補完する形で「食パンであること」と、ターゲットとして設定した観光客の方々への訴求として「お土産であること」を含めようと考えました。

ここで思ったのは、「そもそも食パンをお土産にすること自体が特徴的」ということでした。お土産というと日持ちするお菓子や、形に残るキーホルダーなどが王道だと思うのですが、FUJISAN SHOKUPANはこのどちらでもない。繊細が故に数日しか日持ちせず、食べてしまえば形にも残らない。

でも、それがFUJISAN SHOKUPANのいいところであるとも思いました。お土産として一見適さないようで、それを超越するお土産としてのインパクトがあると思い、ダイレクトに「お土産にどうぞ」と勧めたいと考えました。

ただの食パンではない、作り手の愛情と地元のシンボルが掛け合わさった、ここにしかない食パン。それがFUJISAN SHOKUPANです。

上記を踏まえて、キャッチコピーは
メインのコピーは「パンはパンでも、FUJISAN SHOKUPAN」
サブで「お土産に食パンをどうぞ」で決定しました。

撮影

フォトグラファーの高木が、実際にFUJISAN SHOKUPANを購入して、上記のコンセプト以外にも公園や森で撮影してくれました。絶対変な人に見られたと思いますが、お構いなしにやってくれて、情熱を持っているなと感じました。

画像制作

撮影してくれた写真から、コンセプトにあった表現ができそうなものを1枚採用して、キャッチコピーを打ち込んでいきました。

日の丸構図で撮影された写真で、主役のFUJISAN SHOKUPANを邪魔しない程度に主張しながらも、そっと日常に馴染むようなイメージでキャッチコピーを添えたいと考え、視線の流れに沿って「Z」の線状に配置することで違和感なく自然に主張を伝えることができると考えました。

後日談

「勝手に広告」は、作った画像をinstagramで投稿する際に、関係ありそうな公開アカウントの方々を勝手にタグ付けするというお節介企画なのですが、FUJISAN SHOKUPANの投稿後、公式アカウントからメッセージをいただき、なんと公式の方でも投稿していただくことになりました。

みんなでとても喜びました。肯定された気がして、幸せです。
FUJISAN SHOKUPANさま、ありがとうございました。

※この制作は、デザイナー(僕)とフォトグラファー(高木)が組んで身近な商品を勝手に広告にしてしまおうという企画「勝手に広告」で制作した広告画像です。実際に広告費用をかけて制作したものではありません。

※フォトグラファー 高木隼人のアカウントはこちら

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?